Global CSR Topics

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戦術から戦略へ —オーストラリア企業は、いかにサステナビリティから価値を創出するか

金利にしろ、住宅価格にしろ、1年の初めにはある程度の「未来予知」がつきまとう。メガトレンド(大潮流)といったより大きな規模の予測は国境や年度を超える。メガトレンドとメガフォース(強大な影響力)は世界規模で継続するマクロ経済の発展力として企業、経済、社会、文化、個人の生活に影響するため、未来の世界と変化の速度を決めることになる。メガフォースは産業、企業、個人によって異なる意味とインパクトをもつ。メガフォースとその意味するところの分析は、未来志向の企業の未来戦略、発展と先進のプロセスの重要な一部になりつつあり、それが製品や技術計画にも影響を与えている。

ではメガフォースにはどんなものがあるのだろう?KPMGの報告書、「予期しないことを予期する:変化する世界における事業価値の構築」では国際機関が発表した22の出版物を検討し、今後20年にわたり世界規模で全企業に影響しそうな世界のメガフォースを特定している。その10大メガフォースは人口増加、気候変動、エネルギーと燃料、富、水不足、都市化、原材料となる資源不足、生態系の減少、森林伐採と食料安全保障だ。 CSRアジアが実施した今後10年のアジアのサステナビリティ課題に関する調査「CSR in 10」と類似した結果であることは驚きに値しない。

しかし、世界のメガフォースに対して、企業はどう理解し、対応しているのだろうか。企業や投資家はこうしたメガトレンドが企業の存続にも影響しかねないことを真剣に受けとめているのか?だとすれば、自社のサステナビリティ戦略で明確に打ち出しているのだろうか?CPAオーストラリア、KPMGオーストラリアとグローバル・レポーティング・フォーカル・ポイント・オーストラリア(GRI)が昨年12月に発表した報告書では、ASX50上場企業が、どのように自社の事業におけるサステナビリティ課題を特定し、またそれを理解し、それがどう事業価値を創出しているのかについて、検証し次の主要3項目を取り上げている。

  • オーストラリア企業は世界のメガフォースへの理解や対応をどの程度示しているか?
  • 対応している企業は世界のメガフォースに対応することで、どう価値を創出しているか?
  • 世界のメガフォースへの対応で企業が継続的に価値を創出するための要素は?

こうした問いに答えるために、ASX50上場企業の2013年度の年次報告書やレビュー、また統合報告書、サステナビリティ・レポートの分析が行われた。各セクターにとって何がマテリアルなのかを考慮し、こうしたメガフォースを考慮することにより企業がどう価値を引き出しているかと、それがどの程度企業戦略と一致しているかを理解することを目的とした。ASX50上場企業の開示情報をもとに6つの価値の原動力となるもの—生産性(と人的資本)、操業のためのライセンス、顧客引きつけ、リスク・プロフィール、投資の確保、ブランド価値と評判の観点から分析したのだ。こうした原動力はサステナビリティ課題に対する取組みを事業価値の創造につなげることに役立つ。自社の成長戦略の一部として企業がサステナビリティを求める場合には、投資家は、なぜリソースがサステナビリティにあてられ、それがどう短期、中期、長期的に事業価値を創出するのかを知りたがるからだ。企業がサステナビリティ実現のためにリソースを活用すべき理由を明確にすれば、事業環境が大きく変わったとしても、サステナビリティは組織にとっての重要性を維持できる。

図1—ASX50上場企業のメガフォース特定と各メガフォースに充てる価値の原動力
出所:CPAオーストラリア、KPMGオーストラリアとGRIフォーカル・ポイント・オーストラリア(2014):
戦術から戦略へ—オーストラリア企業は、いかにサステナビリティ・レポートから価値を創出するか

このリサーチ結果によれば、ASX50上場企業はメガフォースを広義では特定しているが、多くの企業はあまり理解していない。多くの企業にとって、メガフォースに対する行動は戦術的で、効率性と法の遵守が中心で、戦略的ではない。特にメガフォースがどのように企業に影響を与えるかをよく理解している企業は少ない。今後20年間にASX50上場企業が直面する社会、環境問題の複雑さ、またそれが企業の戦略と関連しどう価値を創出できるかは、明確にはなっていないようだ。

このリサーチの他の主な結果は下記の通り:

ASX50の情報開示では、平均で10のうち8つのメガフォースが特定されており、企業は広域なサステナビリティ課題を認識していることを示している。

50社中8社は公式に10のメガフォースをすべて特定しているが、3つのメガフォースしか特定していない企業も1社あった。

多くの企業がメガフォースの複雑さや関連性への理解は示しておらず、すべてのASX50上場企業が特定できたのは、気候変動、エネルギーと燃料と人口増加という3つのメガフォースだけだった。

図2—ASX50上場企業のメガフォースの特定と各メガフォースに充てる価値の原動力
出所:CPAオーストラリア、KPMGオーストラリアとGRIフォーカル・ポイント・オーストラリア(2014):
戦術から戦略へ—オーストラリア企業は、いかにサステナビリティ・レポートから価値を創出するか

企業はサステナビリティと価値創造を関連づけることができずにいることも指摘された。(上記の図2参照)—企業の意思決定にサステナビリティを真に統合させるための重要な要素だ。企業の8割は各メガフォースを特定しているが、関連するメガフォースごとに単一の価値原動力を関連づけられた企業は4割弱だった。たとえば、ASX50上場の全企業が気候変動を特定したが、そのうち17社は価値原動力と関連づけていない。

産業別にみると、林業・製紙産業は10のメガフォースをすべて特定している。鉱業・金属、医療・製薬、テレコミュニケーション、原材料産業は9つのメガフォースを特定している。メディア産業にとっては5つのメガフォースがマテリアルであるにもかかわらず、同産業は平均すると3つしか特定できていない。

同リサーチでは企業にとって、事業に関連するサステナビリティ課題をよりよく管理でき、なぜその分野に投資しなければならないかを投資家やその他のステークホルダーに正当化しやすくさせる共通の要素(組織上のプロセス)も分析している。そうした企業で顕著なのは、ガバナンスの構造にサステナビリティが取り込まれている(サステナビリティ課題を取締役会の責任であるとしている企業、役員報酬がサステナビリティに関連づけられているなど)、活発なステークホルダーとのエンゲージメント・プロセス(ステークホルダーとのエンゲージメントは、複雑な課題であっても、それをはっきりとイメージできるようになる競争上の利点とみている)、そして、重要で複雑なサステナビリティ課題を含む長期的な企業のビジョンと戦略を有していることだ。

同レポートでは、企業はサステナビリティとメガトレンドの課題が複雑で不確定要素が多いからという理由で行動をやめるべきではない、と指摘している。企業がサステナビリティについて理解しようするとき、こうした課題の複雑さと影響力の大きさ、ステークホルダーの懸念を考慮し、サステナビリティに対して行動しようとする取締役会は支持されるべきだ。本稿のインタビューに答えた、オーストラリア・グローバル・レポーティング・イニシアティブの責任者のビクトリア・ホワイテーカーは「多くのASX50上場企業がこうしたメガフォースを視野に入れていることには期待が持てるが、先はまだ長い。概してASX50上場企業の殆どはサステナビリティ課題やステークホルダーの懸念をコア・ビジネスと結びつけていない。オーストラリア企業は法の遵守や短期的な影響削減、効率性向上から戦略的リスクとして課題を理解するよう、焦点をシフトしていかなければならない。そしてサステナビリティがしっかり事業の中心になるよう価値創造のチャンスを明確化していく必要がある」と述べた。

オーストラリアでは法的枠組みも導入されたことから(オーストラリア証券投資委員会の規制ガイド247 — 操業と財務レビューとオーストラリア証券取引所コーポレート・ガバナンスと情報開示2013-2014)、今後数年でオーストラリアの企業はサステナビリティ課題と事業価値をよく理解し、明確化できるようになるかもしれない。



by Mabel Wong
CSRアジア週刊ニュース日本語翻訳版

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