Global CSR Topics

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移住労働者の権利保護はCSRの新境地か?

アジア太平洋地域の経済は世界の中で最も活力に満ちている。受け入れ国から出身国への送金、さらに最終的に帰国する際に持ち帰るスキルと知識を通して、3,000万人以上の移住労働者が同地域の経済に貢献している。受け入れ国側の労働市場で希望者がいない、もしくは労働力が不足しているために生じる隙間を多くの移住労働者が埋めている。しかしながら労働者の採用と労働条件に関するさまざまな研究は、特に未熟練労働者の搾取にかかわる権利侵害を明らかにしている。

労働力の自由な流れにより世界経済への完全な統合をめざす新たなASEAN経済共同体を受け、10か国で構成される東南アジア諸国連合(ASEAN)全域で移住労働が加速している。

ASEANはすでに移住労働者の一大中心地となっている。1,400万の労働者が世界各国に出向き、ASEAN域外からの950万人が域内で就業、うち48%は女性である。労働力不足を補うため、マレーシアでは100万人以上のインドネシア人が、シンガポールでは40万人近いマレーシア人が働いている。タイは250万~300万人の移住労働者を受け入れ、大多数が隣接するミャンマーとカンボジアからである。

企業が移住労働者の抱えるリスクに対する理解と解決策を探る際、「尊厳ある移民のためのダッカ原則(Dhaka Principles for Migration with Dignity」)が重要なガイドとなる。これは人権ビジネス研究所主導のもと、マルチステークホルダーが参加する協議を2年以上重ね、2012年12月に発足した。企業や政府、NGO、政府間組織が移住労働者に対する責任を検討する際、ダッカ原則は国際的な基準となりつつある。

国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」および国際労働機関(ILO)のコア・スタンダードに基づくダッカ原則は、移住労働者の採用から就業、再雇用および母国への安全な帰還までを通し、人権尊重を強化することを目指している。同原則は移住労働に関与するあらゆる国と全産業部門に有用であり、労働者が採用と就業時に雇用主より公正かつ責任ある扱いを受けることを求めている。

ダッカ原則は2つのコア原則と10の細則で構成される。

コア原則A:すべての労働者は平等な扱いを受け、いかなる差別も受けないこと。

コア原則B:すべての労働者は雇用法からの保護を受けること。

  • 細則1:移住労働者には費用が発生しないこと。採用と斡旋にかかわる費用は雇用主が全額負担する。
  • 細則2:すべての移住労働者の契約は明確かつ透明であること。各労働者が理解できる言語で雇用条件を明記した契約書を提供し、労働者は強制されることなく同意する必要がある。
  • 細則3:包括的な政策とプロセスであること。雇用主と労働者採用に関する政策綱領や運用政策・プロセスに移住労働者の権利を明記すべきである。
  • 細則4:移住労働者はパスポートもしくは身分証明書を没収されないこと。移住労働者は自分のパスパートや身分証明書、居住証明書へ自由かつ完全にアクセスすることができ、移動の自由が確保される。
  • 細則5:賃金は定期的、直接かつ滞りなく支払われること。移住労働者の賃金は定期的に支払日に直接支払われる。
  • 細則6:労働組合への権利を尊重すること。出稼ぎ労働者は他の労働者と同様に、労働組合への参加および団結権、さらに団体交渉権を持つ。
  • 細則7:安全かつ適正な労働環境であること。移住労働者はハラスメント・脅迫・非人道的扱いを受けない安全かつ適正な労働環境が確保される。それぞれの言語で健康・安全に関する条項の説明とトレーニングを受ける。
  • 細則8:安全かつ適正な生活環境であること。移住労働者は安全かつ衛生的な生活環境および職場と居住地間の交通の安全が確保されるべきである。移動の自由が制限されることや居住地に監禁されることはない。
  • 細則9:改善策へのアクセスがあること。移住労働者は、反対告訴もしくは解雇の恐れなく、司法救済および信頼しうる苦情処理メカニズムへのアクセスが確保される。
  • 細則10:転職の自由が尊重され安全かつタイムリーな帰国が保障されること。移住労働者は契約完了時および例外的事態に際しての帰国を保障される。最初の契約が完了した場合、もしくは就業期間が2年を過ぎた場合には受け入れ国での求職もしくは転職を制限されてはならない。

企業が移住労働者の抱える課題に対処するのは容易でない。自社およびサプライヤーがどの程度まで移住労働者を雇用しているのか特定する必要があるが、多くの場合、職業斡旋業者を含む第三者が重要な役割を担っている。例えば採用が実際の職場から遠く離れた所で行われた場合、労働者がもともと、どのような労働条件で採用されたかを把握することは困難である。移住労働者のリスク軽減に努めている企業は同時に、自社の取り組みと、その成果の情報を開示するよう迫られている。

国連グローバル・コンパクトとべリスク・メープルクロフト後援のオンライン・プラットフォーム「人権とビジネスのジレンマ・フォーラム(Human Rights and Business Dilemmas Forum)」は、移住労働者によるジレンマに企業が取り組む際のグッドプラクティスをケーススタディ(case studies)としてまとめている。アジアの事例としては、出稼ぎで取り残された子どもたちへの支援(ユニリーバ・中国)、労働者へのライフ・スキル・トレーニング(ティンバーランド・中国)、農村部から都市部への人口移動を抑えるため農村部での工場設置(バタ・タイ)、サプライチェーンにおいて酷使される労働者を直接救済する(ナイキ・マレーシア)が含まれる。

この重要課題について、今年のCSRアジア・サミット2015のセッションで個別に取り上げ、移住労働者の権利保護における障害と画期的取り組みについて詳しく検討する予定です。CSRアジア・サミットは10月7-8日にクアラルンプールで開催いたします。

画像クレジット Robert Scoble
https://www.flickr.com/photos/scobleizer/3010360760/
https://creativecommons.org/licenses

by Mark Leighton
CSRアジア週刊ニュース日本語翻訳版

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