戦略的CSRは企業価値を11%押し上げる
「効率的で連携のとれた戦略的CSRの取り組みは、企業にとり大きな価値を生み出すことができる」ベライゾンとキャンベル・スープ・カンパニーが委託し、IOサステナビリティ社とボブソン大学が研究調査を行った新たな報告書が述べている。優れたCSRプログラムは売上増加、株主価値の向上、さらに社員の生産性向上をもたらすとしている。
本報告書は、CSR活動やサステナビリティの取り組みが企業の競争力を高め、長期的収益を向上させ、結果的に企業への付加価値を生み出すとする多くの研究を裏づけている。企業の社会的責任に関する事例は証明されてきているが、この新たな研究は何がその付加価値を生み出しているか、さらに価値創造の根源について有用な洞察を併せて示している。本研究では綿密に査読された300以上のリサーチの評価を行った。研究結果を分析し、CSRがもたらしうる経済的およびビジネス上の価値を特定した
プロジェクトROIは、CSR方針や活動プロセス、プログラムが事業に与えるさまざまな影響について世界規模の評価を行っている。その結果、有効なCSRプログラムは売上、マーケティング、顧客の参画に対して大きなプラスの影響を与えるとした。CSRプログラムは売上および価格プレミアムを最大20%増加させ、顧客のコミットメントも60%まで高めるとしている。マトリックスと投資利益率に着目し、広範囲のデータに基づく調査結果である。
プロジェクトROI はリサーチとデータを分析し、社会および企業の最終損益に対する価値もしくは企業責任を評価している。さらにCSR活動の効果や信頼性を高めたい企業に対し、ベストプラクティスに関するロードマップを明記している。とりわけCSRが社員の満足度、生産性および定着率向上に有用である点を示している。投資家やその他のステークホルダーに対し、責任ある企業が投資先あるいは取引先として価値があることを証明している。
本プロジェクトの調査結果の概要は下記の通りである:
- 企業の総価値のうち、CSRはブランド力や評判を育み、守り、最大11%まで高めることができる。
- 過去15年間で、優れたCSRプログラムを展開した企業は、平均して株主価値を12億8000万ドルまで増加させている。
- ステークホルダーと強固なつながりを持つ企業は、価値評価を40~80%増加させる可能性がある。
- 企業責任は社員に対して多大なプラス影響を与える。CSRに強くコミットしている企業は、社員の生産性を13%まで高めるほか、離職率を最大50%低下させることができる。責任ある企業で働くために社員は5%の減俸を厭わないとしている。
一方で、本調査は、企業が単にCSRプログラムを実施するだけでは不十分であり、優れた形でプログラムを展開する必要があると指摘している。よく設計され連携の取れたCSRでなければ大きな成果にはつながらない。効果的なCSRプログラムの実施に尽力している企業は顧客や投資家から支持されるが、不誠実な取り組みだとみなされた企業はかえって市場シェアや顧客のロイヤルティ(忠誠心)を失うことになる。教訓はいたってシンプルである。ステークホルダーの期待を勘案した上で、戦略的かつ優れたCSRプログラムを設計することだ。通常業務への追加ではなく、企業の資産や専門性と関連づける必要がある。
本報告書では、企業のステークホルダーがますます知見と意識を高め、つながりを強化している点を強調している。さらに企業がどの程度誠実かつ確実にCSRにコミットしているかを完全に理解している。戦略的CSRの重要性を認識しない企業は、みすみすビジネスチャンスを逃している。本報告書は、CSRが信頼やロイヤルティを大きく左右する点を明示している。企業はCSRプログラムに確実かつ透明性を保ちつつ取り組まない限り、かえって有害となる危険性があるのだ。
本報告書の中では顧客の要求や期待との結びつきも考慮されている。プロジェクトROIの調査結果はCSRが顧客の参画およびロイヤルティに及ぼす影響を定量化しているので、企業は起業家精神のアプローチでCSRを展開し、イノベーションや競争上の優位性を図ることも可能である。
本プロジェクトは、企業がCSRを戦略的計画に組み込み、経済的価値への機動力となることを認識する必要があるとしている。長期的な競争力と収益性は、社会・環境・ガバナンスの問題を包括的に対処する戦略的アプローチにも左右されるのである。
10月7-8日にクアラルンプールで開催されるCSRアジアサミットでは、戦略的価値の創造が主要テーマである。効果的なCSR戦略がいかにして企業、引いては社会全体に付加価値を生み出すかに焦点を当て、セッションやワークショップの中で討議する予定である。さらに効果的なCSRの取り組みが、いかにリスク管理とビジネスチャンスの創出につながるかについても協議する。連携の取れたパートナーシップがいかに共通価値を創造するかについて、企業やNGOからの専門家が発表する予定である。
執筆:リチャード・ウェルフォード
CSRアジア週刊ニュース日本語翻訳版
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