Global CSR Topics

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21世紀の投資テーマとなる水問題

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世界経済フォーラムが発行するグローバルリスク報告書は、2012年以来、世界経済が直面する危機のトップ3に「水の危機(*1) 」を挙げている。CDPが手掛ける「ウォーター質問書」への回答者の三分の二が、水不足はビジネスに大きなリスクとなり、その経済的影響が2015年に25億米ドルを超えたと報じた。ESG調査・格付け大手のサステナリティクス社は、2016年4月に発行した報告書「水不足により投資家は見放されるか(Water scarcity: Will investors be left high and dry?)」の中で、気候変動により水不足は悪化し、「企業にとり水問題はより深刻で予測不可能となるだろう」としている。

特にアジアは差し迫った事態に見舞われている。さまざまな調査によると中国の長江と黄河流域、さらにインドのカーヴェリ・デルタ流域がすでに物理的かつ経済的な水不足を経験している(*2) 。2015年に中国の環境省が行った調査では、同国の地下水の三分の二、さらに地表水の三分の一の水質に問題があるとした(*3) 。水の供給が減少しているにもかかわらず、需要は今後15年間アジアで急増すると予測されている。結果的にインドの農業や中国の工業など、主要セクターの操業が妨げられる可能性が高い。実際に公益事業部門では稼働停止が定期的に起きている。2016年3月には、インドの最大手電力会社NTPCが、水不足により1,600MWのファラッカ火力発電所の稼働停止に追い込まれ、インド電力取引所での電力価格上昇を招いた(*4) 。サステナリティクス社による報告書は、中国・インド・韓国を含むアジアの多くの国々が、水の需要を満たすため再生不可能な帯水層を枯渇させ、アジア地域でより深刻な水不足を招く可能性がある点も指摘している。

水不足が企業にもたらす打撃はより大きくなると広く裏付けられているが、水集約型産業のうち、水管理プログラムを整備している企業は国際的に見ても稀有な存在であるとサステナリティクス社の調査は示している。特にアジアでは、サステナリティクス社の調査対象となったアジア企業のうち、水管理プログラムを確立している企業は10%にも満たず、半数近くについては水利用を管理・削減するプログラムが皆無であった。これまで多くのアジア企業は、操業によって排出される温室効果ガス(GHG)やその他の環境インパクトへの対策を図ってきた。しかし節水や水管理、採水への対策は取られていない場合が多い。2015年のチャンネル・ニュース・アジア・サステナビリティ・ランキング(2015Channel NewsAsia Sustainability Ranking)の結果も、コーポレート・サステナビリティで先を行くアジア企業のうち、水管理プログラムを確立していたのはわずか28%に留まった実態を示している。

水問題は今世紀最も重要なESGと公共政策課題、さらに投資テーマになると予測されている。このため、現在あるいは将来的に水ストレスに晒される国で事業展開しているアジア企業、さらに農業関連産業や食品業、電気・ガス・水道事業、自動車産業、貴金属業、石油・ガス産業、林業、半導体業、繊維業などの水集約型産業に従事するアジア企業は、精巧な水管理戦略の策定が必要不可欠である。この中には水利用の方針、削減・効率化プログラム、さらに取締役会レベルによる監督体制を盛り込むべきである。行き届いた管理体制の不備により、水の質や量が不十分となった場合、企業はコスト増と操業停止に晒される危険性がある。

チャンネル・ニュース・アジアの2016年版ランキングは9月28日に香港で開催されるCSRアジアサミットCSR Asia Summit の場で発表される。サースト社Thirst創設者・CEOのミナ・グリ氏が水危機の緊急性について基調講演を行い、水不足の解決に向けて企業および政府が果たすべき役割を提言する。さらに水がいかに気候変動・食料安全保障・コミュニティ生計・人口動態・移住を含む他の持続可能な開発課題と相互に関連しているかについて討議を行う。水不足について多方面に訴える活動を展開しているグリ氏が、7週間のうちに7大陸の7砂漠で40回のマラソンを走破するという世界初挑戦を先日成功させた経験を披露する。

チャンネル・ニュース・アジア・サステナビリティ・ランキングについて:
Channel NewsAsiaCSR AsiaSustainalyticsは協働し、今年で3年目となる同ランキングを発表し、コーポレート・サステナビリティ分野におけるアジアでの先進企業を特定してその功績を称える。アジアにおけるサステナビリティ企業トップ100社、その中でトップ20社をクローズアップし、さらに各国のトップ3社を挙げる。2016年のランキングは中国、香港、インド、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、シンガポール、韓国、台湾とタイを網羅する。香港のカオルーン・シャングリ・ラ・ホテルで開催されるCSRアジアの年次サミットにおいて9月28日に発表される予定である。サミットCSR Asia Summit のお問合せはこちらsummit@csr-asia.comまで。

サステナリティクス社について:
ESGおよびコーポレート・ガバナンスについて格付け・分析を行う独立系調査会社であり、責任ある投資戦略の策定および実践を通し、世界各国の投資家を支援している。世界に14のオフィスを構え、環境・社会・ガバナンスに関する情報・評価を投資に組み込んでいる機関投資家と提携している。現在、40以上にわたるセクターをカバーする170名の専門アナリストを含む250名を超えるスタッフを擁する。「責任ある投資分野の独立系調査会社」に関する調査(IRRI Survey)で、2012年~2014年に3年連続で、さらに2015年に1位に選ばれている。同社はESGおよびコーポレート・ガバナンスにおいて、トップ3企業に名を連ねている。詳細についてはここにアクセス www.sustainalytics.com


*1.定義:利用可能な淡水の水量・水質が著しく低下することで、人間の健康や経済活動に悪影響を及ぼす事態に陥る。

*2.物理的な水不足とは、再生可能な水資源の75%以上を取水している状態であると定義づけられる。経済的な水不足とは水資源が豊富であるにもかかわらず、インフラの未整備により地元の企業・世帯・農家の水アクセスが限られている状態であると定義づけられる。

*3.ロイター通信社、(2016年7月26日にアクセス): http://www.reuters.com/article/china-environment-water-idUSL3N0YQ3CV20150604

*4. インド紙エコノミック・タイムズ、(2016年7月26日にアクセス): http://articles.economictimes.indiatimes.com/2016-03-16/news/71573572_1_water-shortage-power-prices-water-supply

執筆:サステナリティクス社・リサーチプロダクツ・セクションマネジャー
ハーディック・サンジェイ・シャー

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