EUで急速に進むクリーン・モビリティへの動き
欧州連合(EU)はパリ協定の発効後2017年から、自動車の脱炭素化に向けて3つの改革的なモビリティパッケージ Europe on the Move を段階的に発表してきました。
また、2017年11月には、2030年までの段階的な厳しい自動車排ガス規制案が発表され注目されています。
これらの達成には、電気自動車(EV)などの低排出車へのシフトが求められます。
しかし、EVの普及が進めば、社会全体の電力需要も当然増加し、充電時間帯ピーク時の深刻な電力不足が懸念されます。エネルギーの脱炭素化を進めると同時に、電力不足による停電を防ぐことは、EUの急務になっています。
2018年4月ベルリン市で、「第9回日独エネルギー・環境フォーラム」が開催されました。日本のNEDO、ドイツ政府のエネルギー当局によるこの国際フォーラム、テーマは「運輸部門の低炭素化」。その質疑応答のなかで、独シンクタンクAgora Verkehrswende(アゴラ交通シフト)がこの点について見解を述べました。再生可能エネルギーを利用した近未来のクリーン・モビリティ社会を示唆する非常に興味深い内容でしたので、ご紹介します。
・EV充電によるピークロード対策
住居、オフィス、ショッピングモールなど、短時間の駐車中にEVを充電できるようなインフラを構築し、夕方にピークとならないよう充電時間帯を分散させることが重要。
・国全体の電力消費量の低減
自動車だけでなくすべての電気製品の使用電力を減らすことや省エネサービスの普及拡大が必須。
・高性能な充電・蓄電インフラの開発
充電・蓄電システムがなければEVは普及しない。躍進的なEV普及は、蓄電池の性能の向上にかかっている。自動車用蓄電池の需要は急速に拡大しており、無害化・リサイクルの方法も開発が必要。
・代替クリーンエネルギーの必要性
発電量にバラつきのある再生可能エネルギーをカバーする代替クリーンエネルギーが必要。
発表では代替エネルギーの一例として水素が取り上げられていました。水素のような合成燃料は、再エネと比較にならないほど生産・輸送・技術コストが莫大なため、ドイツではまず乗用車用エネルギーの主流にはなりえないとする一方、船舶、飛行機など運行中に燃料を補充できない輸送や、工場の補助燃料として期待できることが挙げられました。
自動車でも輸送トラックにはハイブリッド、水素ミックスが期待できるが、水素製造のために火力発電を使っていては排出削減にならないため、風力の余剰電力を使うことが前提、という点も興味深く聞きました。日本で進む水素エネルギー技術の活躍も期待できそうです。
EUのモビリティ政策のスピード感は、10年以内の実現への本気度を伺わせます。クリーン・モビリティはもう、未来の話ではなくなっているのです。
※Europe on the Moveとは:2017年5月、11月、2018年5月と3段階に発表されたモビリティパッケージ。2025年までに、「安全でクリーン、コネクテッドなモビリティ」を目指す。
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