ビジネスと子どもの人権? 世界大手700社の取組状況から見えてきたこと
以前、子どもをターゲットにした広告やマーケティングについてご紹介しましたが、そうした子どもの人権とビジネスに関して、世界の企業の取り組み状況を調査し、とりまとめた報告書”The State of Children’s Rights and Business2019”が公開されました。

このベンチマーク調査は、子どもの人権尊重の目的からスウェーデン王室により設立されたGlobal Child Forumが、国連「子どもの権利に関する条約(Convention on the Rights of the Child)」採択30周年に合わせ実施したもので、Boston Consulting Groupとの協働で行われました。今回の調査は、2014年の調査に引き続き、二回目の調査となります。
調査の対象は、世界の大手企業のうち、9つの業種の約700社であり、その中には日本の企業も含まれています。調査対象の企業は、職場、市場、コミュニティと環境の3つの領域において、20の指標をもとにパフォーマンスが評価され、総合的なスコアが算出されます。
- 職場:自社のビジネスやサプライチェーンにおける、児童労働に関する取り組み。
- 若い労働者、子どもをもつ労働者などへの対応
- 市場:子どもを対象としたマーケティングや製品、サービスについて
- コミュニティと環境:事業活動による、コミュニティや環境へのインパクト
特徴的なのは、事業が直接的に子どもに及ぼすインパクトだけでなく、子どもを持つ従業員への対応や(職場)や、事業目的で土地を購入した際の周囲コミュニティへの影響(結果として近所の子どもの遊び場所が減ってしまった)など、間接的なインパクトについても評価できるよう指標が設定されていることです。
さらに、それぞれの領域について、取締役会による責任、マテリアリティとして特定されているか、他の組織と連携しているか、企業独自のプログラムを実施しているかが問われており、企業による取り組みへの本気度を伺い知ることができます。
この調査から見えてきたこととして、以下のような点が挙げられます。
- 前回の調査に比べ、全体的なスコアは改善している
- 世界の6つの地域のうち、企業の平均スコアが最も高かったのは欧州で、中南米地域、 北米と続く。北米は取締役の責任、マテリアリティ・アセスメント、サプライヤー・ アセスメント、児童労働に関するリスクの開示などの点において全体的に遅れを取って いるものの、Apple、AT&T、Coca-Cola、Intel、Kimbery-Clark、Nikeなどの企業は 高スコアを獲得している
- 子どもの権利に関する何らかの方針やコミットメントを掲げている企業のうち、実際の 取り組みに反映できている企業はそれほど多くない(児童労働についての方針を掲げて いる企業が67%であったのに対し、アセスメントの結果を開示している企業は43%)
- 多くの企業において、子どもを他の消費者グループとは区別して注意を払うべき消費者 であると捉えることができておらず、子どもの権利は短期的な目標、あるいは他の戦略の一部として扱われるなど、事業戦略の主要な項目として特定されていない
報告書では、子どもの権利についての取り組みは全体的に向上している一方で、多くの企業が子どもの権利を人権の一部としか捉えられていないことが、重要な項目の見落としや、全体的な取り組みの遅れにつながってしまっている、と警笛を鳴らしています。
子どもは大人よりも脆弱で、子ども特有の権利(遊ぶ権利や学ぶ権利など)を必要とします。 こうした特有の権利をもつステークホルダーに向き合うのは一見少し面倒なようにも思え、つい後回しにしてしまいたくなるかもしれません。
それでも、子どもを二次的なステークホルダーとして捉えるのではなく、主要なステークホルダーの一つとして認識することで、人権だけでなく、製品の安全性やマーケティング、コミュニティとの関わりなど、さまざまな社会課題をより包括的に解決する道筋を見出すことができるかもしれません。報告書では、こうした子どもの人権を”リスク”としてだけでなく、”機会“として捉えることができる可能性を示唆しています。
(岡山奈央/プロジェクトマネジャー・リサーチャー)
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Sustainability Frontline [原文はこちら]
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