Global CSR Topics

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「顔の見えるバッテリー」で、児童労働撤廃に向け 大きな一歩

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コロナ禍においても、先進国ではリモートワークやオンラインでの消費活動など、さらなるデジタル化による新たな生活スタイルが定着しつつあります。

そうした先進国の便利な生活を支えるスマートフォン、パソコンなどの電子機器や、環境にやさしいとされる電気自動車に欠かせないのがリチウムイオン電池。その原料となるコバルトは、その60%以上が世界で最も貧しく、政情の不安定な国、コンゴ民主共和国で採掘されており、その労働者の中には3万5000人ほどの子どもが含まれていることが知られています。

複雑なサプライチェーンに埋もれ、実態の把握や解決が困難であるとされてきたコバルト採掘における児童労働撲滅に向け、日本の電力会社と児童労働撲滅に取り組むNPO団体が、ブロックチェーンの技術により「顔の見えるバッテリー」の普及を目指すプロジェクトを開始しました。

同プロジェクトでは、コバルト採掘現場の調査、サプライチェーンの実態調査に加え、ブロックチェーン技術を活用した希少金属のトレーサビリティプラットフォームの構築により、児童労働に関与しないエシカルなバッテリーの開発および普及を目指すとのことです。

この取り組みの背景には、リチウムイオン電池のサプライチェーンにおける、安価な児童労働への依存構造があります。

2019年12月、Apple、Google、Dell、Microsoft、Teslaの5社が違法な児童労働に関与していたとして、米国の人権保護団体に提訴されました。訴状によると、採掘現場は危険であり、有害物質に直接触れることがあるにも関わらず、子どもたちは適切な安全措置が取られることなく、1日2ドル程度の賃金で長時間働かされていた、とのことです。

これらの企業はいずれも、強制労働、児童労働撤廃をコミットし、取り組みを進めていた企業ばかりです。それでも複雑なサプライチェーン上で起きている児童労働への関与を把握できていませんでした。

コバルトの採掘現場における労働は呼吸器疾患、皮膚病、さらに生まれてくる子どもの先天性異常などを引き起こす可能性があり、ILOの条約が定める「最悪の形態の児童労働」※に該当するとされています。

先日、児童労働反対世界デー(6月12日)に合わせてILOと国連児童基金(UNICEF)が発行した、報告書によると、”家計の収入が10%減少すると、子どもの就学率が3%減少し、家計を支えるために児童労働が5%以上増加する”との調査結果が報告されています。 同報告書では、この20年で児童労働者数は大幅に減少していたものの(2017年時点の世界の児童労働者数は2000年と比較して9,400万人減少)、新型コロナウイルスの影響により、数百万人の子どもたちが児童労働に晒される可能性があり、児童労働者数は20年ぶりに増加する見通しとのことです。

前述のとおりコンゴ民主共和国は政情が不安定であることから、こうした感染症や国内の経済、社会的な影響を受けやすく、なかでも脆弱な子どもたちがその影響を受けやすい、といった社会構造があります。そうした現地の事情も加わり、リチウムイオン電池のグローバルサプライチェーンに潜み続けてきた児童労働ですが、今回のプロジェクトにより、日本を含む世界の消費者が、自分の電子機器や電気自動車のリチウムイオン電池に児童労働関与のリスクが含まれていないか、知ることができるようになる。それはとても大きな前進だと思います。

先進各国の産業における児童労働、強制労働への関与を示す指標、「Global Slavery Index 2018」はG20諸国の現代奴隷関与の規模を公表しており、日本はワースト2位と報告されていることから、日本企業も関与している可能性が大きいといえるでしょう。

コバルトフリー電池の開発も進んできてはいるものの、実用化や普及までには時間が必要であり、その間も日々、過酷な環境での児童労働に間接的にでも関与している可能性があることを、まずは企業も消費者も重く受け止める必要があります。その上で、国内の企業には、こうしたプロジェクトとの連携などにより、児童労働撲滅に向けた取り組みを加速化させるとともに、サプライチェーンについて透明性のある情報を開示することで、消費者の意識啓発にも取り組んでいただくことを期待しています。

※SDGs8.7 では、18歳未満の児童による最悪の形態の児童労働を2025年までに撲滅することをめざしています。

(岡山奈央/調査分析プロジェクトマネジャー)

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Sustainability Frontline [原文はこちら]


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