Global CSR Topics

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英エレン・マッカーサー財団調査結果:サーキュラーエコノミー分野の金融セクターが急成長、世界経済変革を牽引

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イギリスを拠点にサーキュラーエコノミーへの移行を推進するエレン・マッカーサー財団はこのほど、民間セクターの金融について、サーキュラーエコノミーがどのように投資家・銀行・その他の金融サービスの価値創造に寄与するかをまとめたレポート「Financing the Circular Economy」を発表した。

この調査結果は、サーキュラーエコノミーの急激な拡大を後押しすることで、その機会を最大化するために金融セクターが向かうべき方向性を示すものである。金融機関はサーキュラーエコノミーの拡大を促すことで、どのように新しくより良い成長を生み出し、分散した・多様性に富みインクルーシブ・リジェネラティブな設計の経済に移行していけるかといった対話を生み出すことを目的に発表された。

気候変動リスク・資源枯渇問題への解決策、経済復興のエンジンとしてのサーキュラーエコノミー

レポートによると、サーキュラーエコノミーへの移行は気候変動やその他ESGの目標達成を牽引するものであり、より良い経済成長へと導く。近年、ESG投資の高リターン率が顕著になり、金融セクターにおいて大きく注目を集めている。

世界じゅうのエネルギーをエネルギー効率の追求とすべて再生可能エネルギーに移行することができても、世界の温室効果ガス排出の55%にしかアプローチできない。一方、製品や食料の製造にサーキュラーエコノミーの手法を用いることで、残りの45%に取り組むことが可能になる。もしも鉄鋼・アルミニウム・セメント・プラスチック・食の5つのセクターでサーキュラーエコノミーの手法が用いられれば、2050年の温室効果ガスの排出は93億トン抑えられ、これは全世界の交通網をストップしたものと同じだけの効果をもたらすことになる。つまり、サーキュラーエコノミーは気候変動に関連するリスクを管理する上で非常に重要な役割を担う。



出典:”Financing the circular economy”(エレン・マッカーサー財団 2020)P12より

サーキュラーエコノミーへと移行することで、気候変動リスクへの対処やESG投資のメリットを享受できるだけでなく、ESGのその他の課題解決に寄与することも期待される。生物多様性を守り、新たな資源採掘の必要性を減らし、2030年までにイギリス国内だけでも、再販売・再製造・リサイクルの分野で50万人分もの雇用を生み出すと推測される。

実際にサーキュラーエコノミーに移行できれば、ヨーロッパ圏内だけでも2030年までにモビリティ・建築環境・食分野で1.8兆ユーロ(日本円約224兆円)を生み出すとされる。

人口動態の変動・デジタル化・資源枯渇のメガトレンドは、サーキュラーエコノミー移行への大きな追い風となっている。

新型コロナウイルスのパンデミックは、リニアエコノミーからくる数々のリスクを露呈することとなった。2020年6月、50社以上のCEO・グローバルリーダーたちがこのパンデミックから「より良い復興」を成し遂げるためにサーキュラーエコノミーを推し進める声明を発表している。

金融セクターにおけるサーキュラーエコノミービジネスの取扱額・サービスが急増

様々なセクターやレイヤーの資産運用において機会を最大化するため、投資家・銀行・保険会社らはすでにサーキュラーエコノミーを取り入れている。

過去18ヵ月の間に、サーキュラーエコノミーに関連する債券・持分金融商品は急増している。2020年中頃までには、ブラックロック、クレディ・スイス、ゴールドマン・サックスなどの融資機関の提供する10ものサーキュラーエコノミー特化型、もしくは部分的に取り扱うパブリック・エクイティ・ファンドが現れた。これは、2017年には1件もなかったものだ。

サーキュラーエコノミーに関する活動に融資するために、バークレイズ・BNPパリバ・HSBC・ING・モルガン・スタンレーなどに援助される形で少なくとも10銘柄が社債を発行している。2016年から2020年中頃までの間に、サーキュラーエコノミーに投資するベンチャーキャピタル、プライベート・エクイティ、プライベートデットを含むプライベートマーケットファンドは10倍に増加した。銀行ローン・プロジェクトファイナンス・保険においても同様のトレンドが見られる。Intesa Sanpaoloは50億ユーロのクレジットファシリティを発足。モルガン・スタンレーはPlastic Waste Resolutionを立ち上げ、ヨーロッパの5大銀行・金融機関と提携する欧州投資銀行は100億ユーロのサーキュラーエコノミーの特化した融資・投資イニシアティブを創設した。

アクサなどの保険会社らは、個人間で製品などをシェアする「シェアリングエコノミー型」などのサーキュラービジネスモデルに対応する新たな保険商品の開発を進める。

これら金融機関の動きは、サーキュラーエコノミーがアセットマネージャー・銀行・その他の金融商品取扱い企業にとって価値を生み出すものであることを意味すると同時に、資金流入を惹きつけられるという大きな可能性を示唆するものである。

2020年の頭より、パブリック・エクイティ・ファンドで運用される資産合計額は2020年頭から現在までの期間に6倍となり、実に3億ドル(約310億円)から20億ドル(約2100億円)まで増加している。

2020年上半期、これらのファンドはモーニングスターカテゴリーのファンドのベンチマークと比べ平均5.0%ポイント上回り、サーキュラーエコノミーが超過リターンをもたらすことを示すこととなった。アウトパフォーマンスが長期間継続するかどうかについては今後の調査が必要となる。

サーキュラーエコノミーは、政策立案やその他のステークホルダーが目指す目標達成に大きく貢献すると考えられる。例えば、2020年7月にはイングランド銀行のサム・ウッズ副総裁が金融機関のCEOらに向け、気候変動に関する要請書を発表するなどしている。

金融機関にとっても、サーキュラーエコノミーの知見を集積することで、顧客企業の役員会議でも提供できる情報や価値が向上することを意味する。


出典:Financing the circular economy (エレン・マッカーサー財団 2020)P13より


出典:Financing the circular economy

サーキュラーエコノミーへの移行には金融セクターのさらなる後押しが不可欠

近年のサーキュラーエコノミーに関わる金融セクターの急成長を継続的なものとし、サーキュラーエコノミーを拡大するためには、サーキュラービジネスを金融セクター全体で後押ししていかなければならない。すでに完璧なサーキュラーエコノミービジネスに投資するだけでなく、すべての分野の企業がサーキュラーエコノミーに移行していけるよう、奨励・サポートしていく必要がある。政府や中央銀行、金融法案策定者は民間企業がサーキュラーエコノミーにシフトできる環境を整え、政府は直接的にサーキュラーエコノミーの活動とイノベーションに投資し、外部不経済の内部化などに関わる方針を示す役割を担う。さらに、EUタクソノミーを例に、サーキュラーエコノミーの定義やメトリクスを統一し、情報開示を義務化することで透明性を担保することが可能になる。

中央銀行や金融規制当局は、リスク評価やモデリングにサーキュラーエコノミーの概念を統合することができ、グリーン量的緩和のような従来とは異なる手法との一体化を模索することができる。公的・民間・NPOの資本を組み合わせたブレンドファイナンスは、資金調達が困難なサーキュラーエコノミーのインフラや長期的なイノベーションに資金を提供することができるのだ。経済を根本からサーキュラーエコノミーへと転換するには、サーキュラリティのパフォーマンスに関するより透明性の高い一貫したデータ(過去の実績と将来の予測の両方)が不可欠である。

最後に、会計ルールに本来の原価計算を反映させることで、経済における循環型ビジネスモデルとリニアリスクを鑑みた実際の価値を導き出すことができるはずだ。

日本は金融においてもサーキュラー化が急務

この1〜2年という短い期間に、上記のように、実際に金融機関が積極的にサーキュラーエコノミービジネスに投資し、サポートするようになった。これは今後、社会経済のサーキュラー化が急速に進むことを意味する。しかし、この動きを牽引し、パイオニアとして道筋をつくるのは北アメリカ・ヨーロッパが中心だ。国際競争力を発揮し、サーキュラーエコノミーにおいて存在感を示していくためにも、日本の金融セクターのサーキュラー化は急務と言える。日本の各プレイヤーたちの動きをしっかりとウォッチしていきたい。

【レポート】 Financing the circular economy

2020/10/9
Circular Economy Hub
[原文はこちら]

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