Global CSR Topics

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【世界循環経済フォーラムレポート#1】世界各国の企業トップから学ぶ、コロナ禍における新しいビジネスの形

新型コロナウイルスの流行によって、衛生確保を目的とするプラスチックの使い捨てが深刻な問題の一つとして世界中で議論されている。日本国内でも、レジ袋有料化をはじめとする様々なプラスチック対策を進めてきたにもかかわらず、コロナ禍で衛生面が優先される場面が増えている。

そんななか、コロナ禍以前からサステナビリティに取り組んできた世界の企業のトップたちはどのようにしてこの緊急事態に対処しているのだろうか。

本記事では、フィンランド、ヘルシンキにて開催されたウェブフォーラム「WCEFOnline(World Circular Economy Forum Online)」(世界循環経済フォーラムオンライン)のプログラムの一つ「COVID-19’s consequences on corporate circularity」(コロナ禍における企業の循環型事業への影響)のレポートを通して、ウィズコロナ時代に求められる企業の姿を探る。

<イベントモデレーター>

Veera Heinonen氏(フィンランド・Sitra)
Tim Forslund氏(フィンランド・Sitra)


パネルディスカッション

イベントは世界4カ国から集まった企業のトップたちのパネルディスカッションから始まった。

<ディスカッションモデレーター>

Peter Bakker氏(スイス・持続可能な開発のための世界経済人会議、WBCSD (the World Business Council for Sustainable Development) CEO)

<登壇者>

Roongrote Rangsiyopash氏(タイ・SCG (Siam Cement Group) CEO)
Gayle Schueller氏(アメリカ・3M サステナビリティ最高責任者)
David Ekberg氏(フィンランド・Stora Enso 副社長)

世界の誰もが同じ課題に向き合う時間

Roongrote氏がCEOを務めるタイのSCGでは、100年も前から経営にサステナビリティの視点を取り入れ、化学や容器包装の分野で事業を展開してきた。昨今のコロナ禍においては、これまでのサステナビリティに関わる事業の実績を活かし、新型コロナウイルスへの対応とビジネスのサーキュラー化を両立させる多くの施策をいち早く打ち出した。例えば、化学事業ではケミカル・メカニカルのリサイクルシステム導入、パッケージ事業ではプラスチックではなく紙製の食品容器の開発などだ。

Roongrote氏は、新型コロナウイルスの影響は協働のチャンスになりうると述べた。

Roongrote氏「タイは、世界で最も早く新型コロナウイルスの感染者が確認された国の一つでした。その時、私たちが最も初めに取り掛かったことは従業員の安全の確保です。そして次のステップは、サステナビリティの観点からいかにしてこれまで私たちが取り組んできたことを取り戻し、そして継続していくかということです。新型コロナウイルスの影響で、今誰もが同じ課題に直面し、同じ方向を向いてその解決に取り組んでいます。これをチャンスと捉え、全く新しい視点から皆で一丸となってこの危機を乗り越えていかなくてはなりません。」

必要なモノを、必要な時に、必要な場所へ

アメリカに本社を置く3Mは、Post-It®︎やScotch™といったブランドの運営で有名だ。社内のサステナビリティ最高責任者を務めるGayle氏によると、3M社内でサーキュラーエコノミーの概念について科学者たちが議論し始めたのはおよそ2年前のことだという。その当時はサーキュラーエコノミーという言葉がまだ社会に浸透しておらず、科学者たちの話を聞いた役職者たちはその概念と重要性に深い疑問を抱いていたそうだ。その後時代の流れを受けた結果、現在では役職者も含めた社内全体で、3Mの事業へどのようにサーキュラーエコノミーの仕組みを取り入れることができるかを議論しているという。

Gayle氏は新型コロナウイルスに対する3M社内の反応についてこう振り返った。

Gayle氏「流行が始まった当初は、いかにして従業員を守るかということが優先されていましたが、その後は新型コロナウイルスと付き合いながら技術を発展させていくことや、消費者のもとに安全に製品を届けることについて多く議論されるようになりました。このような苦しい状況の中でも、私たちの生活を支えるインフラとして最前線で働いてくださる方々がいます。3Mは製品製造に携わる企業として、そしてサーキュラーエコノミーを推進する立場として、必要なモノが必要な時に、必要な場所で利用できるような環境と技術の提供に努めていきたいと考えています。」

議論を通して導き出す「ネクスト・ステップ」

フィンランドで生物多様性や人権の問題にアプローチするリサイクル製紙会社Stora Ensoの副社長を務めるDavid氏は、コロナ禍がビジネスに与えた影響を水面の様子に喩えた。新型コロナウイルスによって、多くの企業が事業に打撃を受けマイナス成長となった一方、例えばスーパーマーケットのような小売店や一部の医療分野では大きく売り上げを伸ばしている。世界のあちこちで様々な影響がありながらも回り続ける社会は、一見波の立たない穏やかな水面のようだが、ひとたび水中を覗いてみると、激しく上下を繰り返しかき回される様子が見てとれるのだ。

David氏も、このコロナ禍はビジネスチャンスになりうることを示唆した。

David氏「これまでは、社員や取引先、顧客など、それぞれが都合を合わせて一つの課題に向き合う時間を設けることに難しさがありました。しかし、コロナ禍によって私たちは移動に時間を割く必要がなくなり、立場に関わらず自由に使うことができる時間が増えました。この絶好の機会を活かして、異なる視点から我々の事業に関わる人々と、Stora Ensoのビジネスをよりよくするために、サーキュラーエコノミーをより加速させるために、私たちは次に何ができるのかを丁寧に議論しています。」

アイデアを共有し、協働の仕組みを作る

ディスカッションの後半には、ウィズコロナの社会におけるサーキュラーエコノミーの推進に向けて、新たな政策として企業は何を打ち出せば良いのか、という疑問が投げかけられた。それに対し、Roongrote氏から「アイデアシェアのためのプラットフォームの構築」という興味深い提言がなされた。

コロナ禍で、人同士の密集や対面を回避せざるを得なくなった一方、サーキュラーエコノミーが目指す社会問題の解決においては人々の協働が欠かせない。そこで、企業のポリシーメーカー(政策立案者)たちは、コロナウイルスと付き合いながらビジネスを加速させるため、より多くの視点から様々なアイデアを得られるような仕組みを築き上げることが求められるという。

Roongrote氏「複雑な仕組みでなくても構わないと思うのです。これからは、より多くの人々が関わって、意見することができる、そのためのプラットフォームが必要です。それは、ビジネスは一つの企業だけで行うのではなく、それぞれの企業が連携して行うことで社会にとって良い影響を与えることができるからです。」

これに対しGayle氏やDavid氏も、「企業のみならず政府やNGO団体など異なる立場の人々の協働が必要だ」、「今こそ一歩踏み出して、大胆な政策や方針を打ち出す貴重な機会だ」などアイデアの共有を実現する仕組みの構築に前向きな声を寄せた。

また、Peter氏からの「企業としてサステナビリティやサーキュラーエコノミーへ取り組むために、何から始めれば良いのか」という問いに対して、参加者たちはそれぞれの視点から以下のように述べた。

Roongrote氏「最もシンプルなことは、まず事業によって発生する廃棄物量を計測し、その量を減らしていくことではないでしょうか。サステナビリティに関して計画を立てることは難しいことではありません。従来の経営戦略と同じような視点で考え、実行していけば良いのです。」

David氏「企業としてサステナビリティに取り組むことは、これからの時代決して特別なことではありません。サステナビリティへの貢献が通常業務の一環として『当たり前』になるような環境づくりが求められています。」

Gayle氏「サーキュラーエコノミーへの取り組みは、もはや企業の経営戦略の一部です。『自社のサービスを通して顧客が環境貢献できるようにするためには何が必要とされているのか』と、ユーザー目線に立って企業としてできることを考えてみてはどうでしょうか。するとその方法の中に、製品の修理サービスや機能のアップグレードといったサーキュラーエコノミーの型に合致した新しい事業が眠っているかもしれません。」

コロナ禍という新しい社会の姿に対し素早い適応が求められている一方、よりサステナビリティに配慮した循環型社会の構築においては、長期的な視点で物事を捉える必要がある。「サーキュラーエコノミーという社会の大きな循環の中に、自分はどのような形で関わることができるだろうか」という問いを持ち続けること、テクノロジーやイノベーションを積極的に取り入れながら、自身の意見をより広く共有していくこと、がコロナ禍を生きる我々に求められているのではないだろうか。このコメントとともにディスカッションは幕を閉じた。

ゲストスピーチ

<スピーカー>
Marleena Ahonen(フィンランド・Sitra カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー専門家)

イベントの後半は、Sitraのカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー専門家によるスピーチだ。

Marleena氏は、サーキュラーエコノミーはこれまでの社会とは全く異なる、新しい概念であることが理解される必要があると述べた。それは、サーキュラーエコノミーとは何なのか、その意味を企業として今一度定義し直すということだ。その上で、サーキュラーエコノミーを成功に導く方法は一つではないことにも言及した。

Marleena氏「どんな方法でサーキュラーエコノミーを成功させるかは、国や地域、立場によって異なるでしょう。ですから、『我々の企業ではこのやり方がよかった』とか『他にもこんな方法があるのではないか』とか、世界のあちこちから様々な意見が共有され、様々な場所でそのアイデアが実践されることが理想です。」

またMarleena氏は、いかにしてモノの循環を閉じた輪にするかがサーキュラーエコノミー実現の鍵を握ることを示した。サステナビリティやSDGsといった概念が普及するにつれてモノづくりの形は少しずつ変化し、より環境や人、動物に配慮した製品作りが日々加速している。その一方、私たちが考慮しなくてはならないもう一つの課題は、すでに生み出された製品をいかに効率的に利用していくかという点だ。

Marleena氏はスピーチの最後に、今あるモノを循環させるループを強化するために、モノの所有権を再検討しなくてはならないと述べた。サーキュラーエコノミーの普及に伴い、製品は所有するものではなく、使うもの、借りるもの、共有するものとして、その概念を作り替えていく必要がある。これからの企業に求められているのは、製品に対する人々の概念に変化を与える、その影響力なのではないだろうか。

編集後記

パネルディスカッションからゲストスピーチまで、イベント全体を通して一貫して発信されたメッセージの一つが「情報の共有」だ。コロナ禍によって人の移動に制限がかかり、離れた場所からコミュニケーションをとることへのハードルは下がった。しかし、未曾有の状況が長引く中で、どのようにしてこの危機を乗り越えるのか、いまだに手探りの日々が続いている。

当たり前のように思われるかもしれない「情報の共有」だが、全世界が同じ課題を抱え、全員が同じ課題に向き合う時間は、決して当たり前に訪れるものではない。このまたとない機会を一つのきっかけに、会社の中や地域の中に留まらず世界全体と共に、企業のあり方やサーキュラーエコノミーのあり方について議論できる環境とリソースの確保に努めたい。

【参照サイト】

2020/10/14
Circular Economy Hub
[原文はこちら]

    Circular Economy Hub

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