Global CSR Topics

Global CSR Topics

バックナンバー一覧

【建設編】新型コロナウイルス禍からの回復に向けた重点投資ポイント−建物のリノベーション促進、建築資材のリサイクル基盤整備を−

新型コロナウイルスの流行によって100カ国以上でロックダウンが行われたのに伴い、建築原材料のサプライチェーンが寸断。多くの現場が閉鎖され、建設業界のキャッシュフローに深刻な打撃を及ぼした。

また、高所得国においても狭く、融通の利かない、エネルギー効率の悪い低品質の家屋が多い一方で、低所得国では衛生的な設備へのアクセスが不十分なことでウイルスの拡散を防ぎきれず、以前から指摘されていた業界の課題が浮き彫りになった形だ。

こうした中、新型コロナの影響で新たに浮上したニーズに対応するために、サーキュラーなデザイン戦略、とりわけモジュラー化を進める動きが見られ、新型コロナの流行に伴って必要な基幹施設の早急な立ち上げにつなげることができている。例えば、新型コロナが最初に流行した中国・武漢では、ベッド1000床と30の集中治療室を備えた病院をわずか10日間で立ち上げられた。他にも、新型コロナの流行で新たな業態や形式への適応が求められた学校やオフィス、娯楽施設、公共施設における間取り変更などのニーズは増える一方である。

このため、サーキュラーエコノミー原則に沿った建物のリノベーションとアップグレードは、快適かつ実践可能な低炭素化につながるポジティブなインパクトをもたらせる。加えて、建築資材の再利用、リサイクルインフラの整備は、業界による天然資源の使用に伴う環境負荷を低減させることができる。

こうしたテーマへの投資を通じて、安全、快適でコスト効率性が高く、かつ環境に対する目標にも沿う、建設業界にとってよりレジリエントな未来を切り開くことができる。また、新型コロナの流行で浮上した新たな課題に対応できるとともに、経済成長やSDGsへの貢献といった社会の要請にも応えられる。さらには、気候変動や生物多様性の消失など将来予想されるリスクを軽減させることもできる。

1. 建物のリノベーションとアップグレード

リノベーションの必要性は、とりわけ欧州当局では長年にわたって指摘されてきたが、その欧州にあっても具体的なリノベーション戦略を持っているのは半分以下の国々にすぎない。新型コロナの流行で業界におけるさまざまな資材不足が浮き彫りになった今、レジリエントかつ低炭素な経済回復を達成するためには、リノベーション戦略の策定をもはや遅らせてはならない。


リノベーションは、迅速な景気刺激策であるとともに、気候変動対策にもつながる強固なツールである。

欧州グリーンディールで発表されたリノベーション促進のアクションプランは、気候中立と経済再生につながるツールとして評価を受けた。リノベーションは解体して新たに建設にするのに比べて、コスト効率が良く、資源集約度を低減させ、温室効果ガスの削減につなげることができる。とりわけ、2060年までに65%の建造物が改修を必要とし、50〜70%のエネルギー効率の改善が必要とされるOECD各国にとっては興味深いだろう。

しかしながら、リノベーション計画が経済・環境面で期待されるすべての望ましい利益を享受するためには、サーキュラーデザイン原則に沿った建物のリノベーションに対して適切な投資が行われなければならない。サーキュラー志向のリノベーションは、建物の耐久性やエネルギー効率性の向上を、環境負荷の少ない再利用、またはリサイクルされた建材を使うことで行える。このため、サーキュラー志向のリノベーションは、建物を長寿命化、低公害化するとともに、ニーズに合わせて空間を変えやすくなる。


リノベーションは、地域での雇用を促進する魅力的な機会となる。

サーキュラーエコノミーの原則に沿ったリノベーションは、その性質上非常に地域分散型かつ労働集約的である。加えて、他産業からの雇用も吸収しやすいため、新型コロナの影響で上昇している失業率の低下に貢献することが期待できる。マッキンゼーの調査では、欧州域内200万戸のエネルギー効率向上に投資すれば、200万人の雇用を創出できるとしている。


サーキュラー原則に沿ったリノベーションは、一連の経済価値をもたらす。

政府や地方自治体が1ユーロをエネルギー効率改善に投資することで、1年以内に最大5ユーロを回収できる計算だ。調査分析会社ドッジの2016年のレポートによると、グリーン建築は新築、リノベーションともに既存の建築よりも資産価値が7%向上している。寿命の長い建材を使用し、多目的かつ柔軟な間取りにできるように建物の耐久性を高めれば、メンテナンスに必要なコストを減らすことができる。


サーキュラー原則に沿ったリノベーションは、気候変動対策の目標達成に貢献する。

世界の温室効果ガス排出量の11%が、建設と建材の生産に由来する。解体、建設を減らしてリノベーションするだけで削減できる上に、断熱材の採用によってエネルギー効率を向上させることでも一層の排出を削減できる。欧州で2030年までに既存の建物のエネルギー使用量を40%減らすことで、住宅分野で63%、非住宅分野で73%の排出を削減できる。建物の45%が半世紀以上を経過している欧州では、気候変動対策の目標を達成するためには、現在の2倍、3倍のペースでリノベーションを進める必要がある。


さらなる環境面での利益を得るためには、デジタルイノベーションがリノベーションのプロジェクトに投資される必要がある。

IoTはじめスマートビルディングを実現する新技術によるソリューションは今後さらに提供されることが見込まれ、建設業界の環境フットプリントを低減する機会となるだろう。国際エネルギー機関(IEA)が2017年に発行したレポートによると、スマート照明や温度管理といった革新的なデジタルソリューションを導入することで、建物のエネルギー使用量を2017〜40年の間で10%削減できる。これは2015年時点のすべてのOECD非加盟国でのエネルギー使用量と同じエネルギーを削減できることに相当する。建材のデジタルパスポートのほか、正確な模型製作に活かせるレーザースキャニング、暖気や冷気の逃げ道を赤外線で感知する技術なども有効だろう。


デザインも、より柔軟性と耐久性のある建物へのビジョンの達成に向けて大切な役割を担う。

環境負荷の低い建材の使用や空間設計の柔軟性のようなデザインに関する意思決定は、リノベーションプロジェクトの利益を最大化するためにも慎重を期して行われるべきである。さらに、建築当初からサーキュラー原則に沿ってデザインすることは、とりわけしばらくは新築需要のあるアジアやアフリカのような新興経済圏では重要となる。


2. 建築資材の再利用、リサイクルインフラの整備

建築資材の再利用およびリサイクルインフラの整備は、雇用を創出しながら、より競争優位、かつコロナ禍以後のクリーンな経済回復を促すことにつながるサーキュラーエコノミーへのもう一つの魅力的な投資機会を提供する。


建築資材の再利用とリサイクルインフラの整備は、大幅なコスト削減効果がある。

建設業界は今、世界でもっとも資源を消費するとともに、大量に廃棄している業界である。

2025年までに世界の建築廃棄物は22億トン相当に達すると予想されており、インドのような国では廃棄物の3分の1が建築廃棄物で占められている状態だ。このような廃棄物が回収、再利用されれば、資源の価値が保持されるとともに、建設コストの削減につながる。建設業界の専門家集団であるアラップの調査によると、鉄鋼を再利用しやすくデザインすることで、鉄鋼の使用量を倉庫の建設では6〜27%、ビル全体で6〜10%削減できるとともに、鉄鋼1トン当たりのコストを最大25%削減できる。

建築資材の循環性を向上させることで、廃棄コストの削減につながる。さらに、建築資材の二次利用市場を育成することで新たな収入源を得ることができる。建築資材の二次利用市場の育成は、コロナ禍によるサプライチェーンの寸断で資材不足や資金不足に陥った業界にとって、低コストで迅速に資材を確保できるのは魅力的だからだ。資材の循環を増やすには、素材の価値を維持しながら解体できるといったことを可能にするデザイン設計が必須となろう。


建築資材の再利用とリサイクルインフラの整備は、業界の温室効果ガス排出を大幅に削減することに貢献する。

マテリアルエコノミクスの2018年のレポートによると、建築資材の循環を向上させることで、温室効果ガスの排出をバージン素材の使用時に比べて40%以上削減でき、温室効果ガス排出の少ないエネルギー源でリサイクルされた鉄鋼であれば90%まで削減できるとしている。建築資材のリサイクル推進によって、G7各国の温室効果ガス排出量は2050年までに14〜18%削減できると見込まれている。世界の排出量の11%を建設業界が占める現状にあって、建築資源の循環によって温室効果ガスを削減するインパクトは大きい。


循環型の建築を推進するためには、とりわけ資材の追跡と成形におけるデジタルインフラの整備が欠かせない。

資材のデジタルパスポートは、資材の価値を保持しながら最初の用途を終えて次の用途で使用する際に、再利用できる資材の特定に役立つ。建築資材の情報にアクセスしやすくなることで、施主やデザイナーは室内環境にとって無害な資材を選定しやすくなる。デジタルパスポートをめぐっては、EUの新たなサーキュラーエコノミー・アクションプランでも製品情報のデジタル化につながる可能性のある重要な要素に挙げられている。

建築の設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で情報活用を行うためのソリューションであるビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)や3次元CADの動きも目立ってきた。この2つのデジタル技術は、再利用やリサイクルの効率を高めながら維持コストの削減につなげられる。


建築資材の循環は政策によって支えられ、将来的には法整備の対象になる可能性がある。

例えば、EUのホライズン2020の支援を受けている「リジェネラティブな都市におけるサーキュラー建築(CIRCuIT)」のように、直接的な資金提供の形で支援を受けているケースも出ている。あるいは、戦略やビジョンの設定において、さらには新たな法整備という形もある。

例えば、EUの新たなサーキュラーエコノミー・アクションプランでは、気候変動へのインパクトを軽減し、資材の利用効率を高めることを目指した新たな「サステナブル建築環境戦略」の策定に言及している。この中には、特定の建築物において安全性と機能性を考慮した上でリサイクル資材の使用を義務付ける内容も含まれる可能性があるとされている。


【参照サイト】The built environment: Two key circular investment opportunities

2020/11/18Circular Economy Hub
[原文はこちら]

    Circular Economy Hub

    CEH_logo2_CMYK_200316

    Circular Economy Hub は、サーキュラーエコノミーに関するプラットフォームです。国内外のサーキュラーエコノミーに関する最新情報や事例、洞察、イベント・ワークショップ、体験プログラム、ネットワーキング、マッチングなどを通じて企業や団体、自治体の活動を支援します。

    Circular Economy Hubのホームページはこちら

このページの先頭へ