Global CSR Topics

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【EU・イギリス】欧州委と英政府が英EU貿易協力協定に署名。2021年1月1日から英国がEU完全離脱

EUのウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長と英ボリス・ジョンソン首相は12月24日、英国のEU離脱後の両者間関係を取り決めた「英EU貿易協力協定」に署名した。これにより「合意なきEU離脱」が回避された。英国の2020年は、EUの規定により、EUから離脱しつつも「移行期間」として1年間、法的にEU加盟国と同等の扱いを受けてきたが、2020年12月31日に移行期間が終わり、2021年1月1日から完全にEUから離脱した状態となった。

同条約の合意作業は、2017年3月に英国がEUに離脱を正式通告してから、同6月にスタート。その間、合意が難航し、英国ではテリーザ・メイ首相からボリス・ジョンソン首相に政権が交代するという事態にもなった。今回、3年半をかけ、ようやく協定内容で妥結した。

英EU貿易協力協定は、まだ完全に批准作業が終わっていない。英国では、国会が12月31日に同条約を批准し、批准作業が完了しているが、EUでは欧州議会での批准と、その後にEU理事会が賛同するという作業が残っている。欧州議会は2021年早々にも批准する見込み。しかし、双方は批准前から暫定的に同条約の効力発行を認め合っている。英国は、EU離脱法の中で、これまでのEU法を全て一旦は英国法として受容することを決めているため、英国が立法手続で法改正をするまでは、離脱通告前までのEU法の規定が英国でも適用されることとなる。

今回締結された英EU貿易協力協定は、通常の自由貿易協定(FTA)だけでなく、市民の安全保障上の緊密なパートナーシップ、両国のガバナンス・フレームワークを含めた3つの内容で構成されている。但し、外交や国防に関する内容は、英国が同協定に入れることを固辞したため、盛り込まれなかった。また、金融サービスの同等性、英国のデータ保護制度、英国の衛生・植物検疫制度についても同協定には盛り込まなかった。この点についてEUは、他の非加盟国と同等に扱うことが原則であり、英国を特別扱いはしないと言及している。

自由貿易協定に関しては、英国がEUを離脱してからも、関税及び数量割当等を課さずに自由貿易関係を継続することで合意した。また、気候変動、カーボンプライシング、環境保護、人権、税の透明性、補助金を含む政府支援の面で「レベル・プレイング・フィールド」を継続することでも合意した。

また、電気自動車(EV)とバッテリーに関しては、2026年末まで原産地証明の完全遵守が猶予される例外措置が設けられた。2023年末まではEVまたはバッテリーでの英国国外の外国製部品の割合が60%以下なら無関税。2026年末までは55%以下なら無関税。2027年以降は本来の規定通りの45%以下なら無関税となる。これにより、しばらくは、中国産や韓国産に依存している部品を使いながら、英国からEUに無関税で輸出できることとなった。

懸案だった漁業問題では、英国は漁業に関する規制を自主的に決める権利を確保したが、5年半は双方の漁船が双方の海域で自由に漁業できる現体制を維持することで合意。また、英国側の規制で影響を受けるEUの漁業事業者へのセーフガード措置等を設けることでも合意。さらに英国は漁業規制では水産資源量を十分考慮することも約束した。

エネルギー関連では、英国はEUから離脱することで、EU排出量取引制度(EU-ETS)を活用できなくなり、英国独自のETSに切り替わる。但し、今回の協定により、将来的に双方のETSの連関性を持たせることで合意。一方、電力の電力網の連系や安定供給は維持。北海での洋上風力発電でもこれまで通り協力関係を維持する。原子力発電では、英国が欧州原子力共同体(EURATOM)からも離脱することで、今後、原子力関連物質のEURATOM加盟国との貿易ができなくなる。

交通・輸送面では、シェンゲン協定に加盟していない英国は、これまで通り国境管理を続けつつ、EUと英国間のトラックの往来については数量制限を設けず、自由に双方の公道を走行できる。航空機では、これまで英国からのEU加盟国を経由した第三国への航路については、英国の航空会社は自由に運航できたたが、EU離脱後は禁止。但し貨物便については、EUから英国を経由して第三国に向かう航路についてはEU便は自由に運航できることとなった。

両者間の大きな隔たりとなっていた北アイルランド問題では、英EU合同委員会が12月17日に「アイルランド・北アイルランド議定書」で合意し、英国とEUは、北アイルランドを実質的に「EU圏内」としてステータスを維持することが決まった。これにより、EUと北アイルランド間の貿易関係については、英EU貿易協力協定の適用除外とし、英国と北アイルランドの間の通商関係は、EUとしては「対外貿易関係」として扱うこととなった。これにより、英国から北アイルランドに持ち込む財については、EUの規制が適用される。北アイルランドは、英国とアイルランドとの間で係争地域となり、アイルランドと北アイルランドの一体性は、北アイルランドに政治的混乱を持ち込むおそれがあり、英国側が妥協する形となった。

アイルランドに関しては、2018年11月に英国とEU双方の間で、「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国のEUおよび欧州原子力共同体からの脱退に関する合意書」を採択したが、その後にボリス・ジョンソン政権となり、北アイルランドの地位を英国が一方的に規定できるとする国内市場法を英国内で制定させ、このことがEUとの合意書違反として交渉が紛糾する事態となった。アイルランド・北アイルランド議定書を締結したことを受け、英国政府は、国内市場法の中でEUとの合意に違反する部分を削除することに合意している。アイルランド・北アイルランド議定書は2021年1月1日発効した。

他方、市民の安全保障では、EUは、英国に対し、欧州人権条約の遵守を約束させ、違反した場合には安全保障上の協力関係を再考するとした。ガバナンス・フレームワークでは、今回の協定の適切な履行を進めるため「合同パートナーシップ協議会(Joint Partnership Council)」を設け、双方の履行状況のチェック体制と係争処理メカニズムを担うこととを規定した。

【参照ページ】

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所 [原文はこちら]

2021/1/1
Sustainable Japan

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