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D&Iのその先に「ビロンギング」 世界が注目

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日本においても、多様性やダイバーシティ&インクルージョン(D&I)といった言葉が当たり前になりつつある中、2月に東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗元会長による「女性がたくさん入っている会議は、時間がかかる」という発言が、大論争を巻き起こしました。

この発言の裏にある本質的な問題は、「人をそれぞれの特性ではなく、属性で判断・評価する」という点です。例えば筆者であれば、女性、40代、日本人、アジア系、母親など様々な属性を持ち、自身にしかない特性を持っている中で、一つの属性だけで判断・評価されることは、不合理なことです。

「ビロンギング」が示す、一人ひとりが尊重され居場所があることの大切さ

社会や組織の中にダイバーシティ(多様性)が存在していているだけでなく、一人ひとりが異なる存在として、その個性や特性、能力が尊重され、受け入れられるというインクルージョン(包摂)があることが、非常に重要です。そのような環境があることで、従業員のウェルビーイングや能力向上、ひいては組織力の向上につながることから、多くの企業がD&I戦略を掲げ、取り組みを進めています。

そしてここ数年、世界の企業から注目されている新たな概念が「belonging(ビロンギング/帰属性)」です。組織に多様性があり(事実/fact)、それを受け入れる意識や仕組みがある(姿勢/behavior)、そうしたD&Iがある環境を通じて、従業員がありのまま自分を偽らずに、組織やコミュニティの一員として「居場所があると感じられる状態(結果/outcome)」を示す概念です。D&Iを推進したその先に、一人ひとりがそこで生きやすさや居場所を感じられる環境を実現することが、最終的に重要であると示しているのです。リンクト・イン傘下の従業員エンゲージメントソリューション会社GLINTの調査では、ビロンギングを感じている従業員は、感じていない従業員の6倍以上高いエンゲージメントが確認され、ビロンギングの重要性が改めて示されています。

D&I推進を通じて、何を実現したいのか? 「ビロンギング」が投げかける問い

今世界では、特に昨年米国で広まったブラック・ライヴズ・マター(Black Lives Matter / BLM)と呼ばれる差別抗議運動をきっかけに、D&Iの取り組みが加速しています。例えば、米証券取引所ナスダックは、人種的・性的マイノリティや女性の取締役登用を上場企業に義務付ける方針を発表し、ゴールドマン・サックスは新規株式公開(IPO)支援サービスにおいて、取締役会にダイバーシティをもたらす人材が一人もいない場合は、業務を引き受けないと表明しています。

しかし一方で、女性枠やマイノリティ枠など枠を設定することやそれを達成することにばかり目が向いても、最終的に一人ひとりにどんな環境を提供したいのか、どんな組織や社会を実現したいのかというビジョンやモチベーションがなければ、単なる数字合わせにしかなりません。ビロンギングという概念は、ともすると数値目標ありきになりがちなD&I推進の動きに対して、一つの本質的な問いを投げかけているように思います。

(宮原桃子/ライター)

EcoNetworks
Sustainability Frontline [原文はこちら]


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