アメリカの醸造会社がつくる「気候変動が進んだ世界のビール」
仕事終わりに、キンキンに冷えたビールを飲むのを楽しみにしているという人も多いだろう。私たちの生活に彩りを与えてきたビールだが、このまま気候変動が進めば、私たちの日常から消え去ってしまうかもしれない。
アメリカのビール会社・New Belgiumは、気候変動が私たちの生活に与える影響について消費者たちに考えてもらおうと、一風変わったビールを製作した。それが、気候変動が進んだ世界のビール「Torched Earth Ale」だ。
この「気候変動ビール」の材料に使われたのは、気候変動の影響を受けた未来でも手に入るであろう素材だ。干ばつなど気候の変化に耐えうる、そばやキビなどの穀物に、頻発する山火事の影響を想定したスモークモルト(麦芽)。デリケートで気候の変化に弱いホップは、貯蔵しているホップエキスやタンポポで代用した。さらに、精製水の代わりに汚染水を用いることで、意図的に不味いビールを作り上げた。
気候変動ビールを作成したNew Belgiumは、これまでも継続的に環境問題の啓発を行ってきた。同社は、2013年にBコーポレーション認証を取得しており、2020年には、看板商品であるFat Tireがアメリカで「初のカーボンニュートラル・ビール」として認められている。今回の気候変動ビールの売り上げは、すべて環境団体Protect Our Winters (POW) へと寄付されるとのことだ。
New Belgiumで研究開発を担当するCody Reif氏は、キャンペーン動画内で、自社のビールが持つ甘味や苦みの絶妙なバランスやホップの香りといった魅力は、素晴らしい原材料が手に入るおかげで完成する、と語る。さらに彼は、「気候変動が進んだ未来では、今使用しているような新鮮な原料が手に入らなくなり、ビールの味も変わってしまうだろう」と続けた。
気候変動が植物の生育に重大な影響を与える可能性は、古くから指摘されてきた。Natureによれば、気候変動による大麦の収穫損失は最大17%。大麦の収穫が減少することにより、ビール価格が上昇し、ビールが大衆的な酒類ではなくなってしまう可能性もあるという。
普段の生活の中では、気候変動が進んだ結果、自分たちの生活がどう変わるのかを想像する機会はそう多くない。今回の「気候変動ビール」は、このままでは私たちの望まない未来が来てしまうこと、自分たちの生活を彩るものを守るためにもアクションが必要だということを教えてくれた。この「不味いビール」が、「美味しいビール」を飲み続けられる未来を守るためのアクションのきっかけになることを願っている。
【参照サイト】 TORCHED EARTH | New Belgium
2021/6/8
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[原文はこちら]
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