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すべての公共交通機関で使える「気候変動チケット」オーストリアで始動

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2040年までに、カーボンニュートラルを達成するという目標を掲げるオーストリア。この目標達成に向けて、同国が取り組んでいることのひとつが、低炭素な交通手段への転換だ。2018年時点では、自家用車が同国の旅客移動距離の70%を占め、公共交通機関が占める割合はわずか27%だった。オーストリアは、今後も引き続き、公共交通機関への利用転換を進める必要があるとの認識を示している。(※1)

そのための取り組みとして、2021年10月に始まったのが、国内すべての公共交通機関で使える年間チケット「Klimaticket Ö(気候変動チケット)」の発売だ。鉄道はもちろんのこと、バスや路面電車でも使えるこのチケットの価格は、1,095ユーロ(約14万4千円)。1週間あたりに換算すると21ユーロ(約3千円)、1日あたりだと3ユーロ(約400円)だ。

Klimaticket Öは、その価格の安さで注目を集めている。たとえば、スイスが提供する、公共交通すべてで利用可能な年間チケット「GA Travelcard」の価格は3,860スイスフラン(約48万円)、オランダが提供する週間チケット「Holland Travel Ticket」の価格は63ユーロ(約8千円)だ。スイスやオランダの、約3分の1の価格でチケットを提供するオーストリアは、気候変動対策に焦点を当てた、野心的な挑戦に乗り出したことがうかがえる。

チケット価格が安い分、このシステムを維持するためには、多くの税金が使われることになる。CNNによると、Klimaticket Öを提供するために政府が拠出する費用は、年間約1億5000万ユーロ(約197億円)にも及ぶという。そのため、チケットを導入する前に中央政府、地方自治体、交通各社が行った交渉では、公共交通が発達していない地域からの反対の声が上がることもあったそうだ。

様々な関係者が絡むKlimaticket Öが実現するまでの道のりは平坦ではなく、交渉は2年近くかかったという。粘り強い交渉を支えたのは、カーボンニュートラルを達成するという国の長期的なビジョンだろう。同国の「モビリティマスタープラン2030」では、2040年までに、旅客移動距離に占める自家用車の割合を54%に引き下げ、公共交通機関の割合を40%に引き上げることが、目標として掲げられている。

こういった動きに対して「自動車の低炭素化も進んでいるのでは?」と疑問に思う人がいるかもしれない。しかし、オーストリア政府によると、鉄道旅客輸送における乗客1人あたりのエネルギー消費量は、電気自動車の55%で済む。そのため、公共交通機関への利用転換を優先した方が、効果が大きいという考えだ。

日本もオーストリアと同じように、地域によって公共交通の発達の具合が異なる。国土交通省によると、平日に鉄道・バスが利用される割合は、三大都市圏で約30%、地方都市圏では約7%だ。このような状況の中、どのように環境負荷の少ない交通体系を整備すればいいのか、検討が求められるだろう。(※2)

※1 Austria’s 2030 Mobility Master Plan (bmk.gv.at)
※2 高齢者の移動手段の確保に向けた最近の動きについて(国土交通省)

【参照サイト】 Startseite – Klimaticket

2021/11/12
IDEAS FOR GOOD
[原文はこちら]

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