アフリカ初、暑さを食い止める公務員「チーフ・ヒート・オフィサー」が誕生
大西洋に面し、北にギニア、南東にリベリアと国境を接するアフリカ・シエラレオネ。長年続いた内戦が終結し、復興と経済発展を目指す首都フリータウンに2021年10月、アフリカ初となる「チーフ・ヒート・オフィサー(Chief Heat Officer)」が誕生した。
チーフ・ヒート・オフィサーという言葉を初めて聞いた人も多いだろう。たとえば、最も身近なCEO(Chief Executive Officer)のように、組織内における特定の職を指す。チーフ・ヒート・オフィサーは、気候変動によって社会問題化する「暑さ」を食い止める役割を担う公務員だ。
ギリシャ・アテネ、アメリカ・マイアミに続いて、世界で3人目となるチーフ・ヒート・オフィサーに選ばれたのは、シエラレオネの首都フリータウン出身の元銀行員で、2児の母でもある34歳のEugenia Kargboさん。フリータウン市長であるYvonne Aki-Sawyerr氏によって任命された。
彼女はチーフ・ヒート・オフィサーとして、一つのシンプルかつ明確なゴールを掲げている。それは「2人の子どもたちが、自分が幼い頃のように、熱中症の心配をせずに自由に街を歩けるようにしたい」ということ。
シエラレオネでも、地球温暖化の影響が叫ばれている。11〜4月の乾季には酷暑が頻繁に発生し、日中に街中を歩くのは熱中症の危険が伴うという。ほかにも干ばつや洪水など、人々の平穏な暮らしを脅かす気象災害も後を絶たない。
さらに近年、人口増加と都市化が急速に進むとともに、森林伐採や土地の埋め立てが行われたことで土地の脆弱性が指摘されている。2017年8月に発生した大洪水では、1000人近くが命を落とし、数千人が住む家を失った。
2018年に市長に就任したYvonne Aki-Sawyerr氏は、気候変動を市が取り組むべき最も重要な課題の一つに挙げている。市政アジェンダ「#TransformFreetown」では、気候変動対策・衛生・インフラ整備・都市緑化の整備などを官民一体で進め、チーフ・ヒート・オフィサーもその一環として取り入れた。
Kargboさんは、2018年から公衆衛生や植樹などの分野で市政に携わっており、今後は気温上昇を食い止めるためのデータ収集を軸に活動を進める。さらに既存の植樹プロジェクトの拡大や、失業中の若者への雇用創出、啓蒙活動を通して、市民に気候変動を考え、行動してもらう役割も担う。
トムソン・ロイター財団の取材にKargboさんは
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「気候変動は私たちの生活のすぐそばにあり、すでに農家や食の安全、人々の健康と安全に影響を及ぼしています。遅かれ早かれ私たち全員に影響が及ぶため、早い段階で警鐘を鳴らし、一丸となって取り組む必要があります」
2021年秋にスコットランド・グラスゴーで開催されたCOP26では、「気温上昇を1.5度に抑える努力を追求する」ことを盛り込んだ合意書が採択され、世界が共通で目指す指標が改めて確認された。国が先導することはもちろんだが、市町村レベルでの活動も今後さらに重要になってくる。
今はまだ珍しいチーフ・ヒート・オフィサーが当たり前になる日は、そう遠くはないだろう。
【参照サイト】
- This African nation has named its first chief heat officer. Here’s what it means
- MAYOR OF THE MOMENT YvonneAki-Sawyerr | OECD CHAMPION MAYORS
2021/11/24
IDEAS FOR GOOD
[原文はこちら]
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