アラベスク:メタンはもういりません
※本記事は、ESG評価機関アラベスクによる寄稿を、和訳しご提供しています。
世界の指導者たちにとって英グラスゴーで国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開かれていた数週間はとても忙しい期間でした。会議が終わってみれば希望と同じくらい多くの疑問が残りましたが(言うまでもなく、200か国との合意に達することは困難です)、この英国のスコットランド西部低地で開催された議論は、とりわけ、1つの重要な結果をもたらしました。 1.5°C以上で、100か国以上が世界メタン誓約書に署名し、2030年までにメタン排出量を最大30%削減することに合意しました。誓約書は、畜産等の農業活動を通じて大量のメタンを排出しているブラジル等の国々からも支持されました。しかし、世界最大規模のメタンを排出する中国とロシアは支持していません。一方、中国は米国との共同気候宣言を発表し、「化石燃料および廃棄物分野、及び農業分野からのメタン排出量を削減する」ことに向けて協力することに合意しました。
気候変動に関して言えば、メタン排出削減に向けた取り組みは、二酸化炭素(CO2)を削減する取り組みに比べてプライオリティは低くみられていましたが、なぜメタンが今回のCOP26で中心的な課題になったのでしょうか?
背景には何があるのでしょうか?
メタンの排出は、産業革命以前から生じている地球温暖化の原因の約3分の1を占めていることがわかっただけでなく、メタンガスは、同じガスであるCO2の80倍の熱を閉じ込めるとされています。しかし、CO2と異なり、メタンは約10年という速い速度で地球を覆う大気を循環します(CO2は20〜200年間に循環します)。したがって、大気中のメタンの削減は、地球の温度と温度上昇に即座に影響を及ぼします。世界は大気中のメタンを削減している間に、CO2削減に長期的に取り組むことができます。つまり、メタン削減という短期的な成果の誓約を行うことでCO2削減に向けて私達は「時間を買う」アプローチが可能となります。どこから始めればよいのかと思うかもしれませんが、人為的なメタン排出源の上位3つを見ると、いくつかのアイデアを得ることができます。
- メタン排出量の40%は家畜から発生(メタン排出量の大部分は糞尿と腸内発酵から発生します。もちろん、牛のげっぷも問題です)
- メタン排出量の35%は石油およびガス事業の抽出、処理、流通などに起因
- メタン排出量の20%は、埋め立て地や廃水などの廃棄物に起因
このようにメタンの高排出活動は、日常的に見られる活動です。そのため、メタン排出量の削減策の選択肢は多くあり、誓約の目標を達成するための対策は実行可能です。
この合意から学ぶべきものとは
過去10年間、CO2は気候危機の主な原因として、気候危機と同義語になり、残りの温室効果ガス(メタンを含む)は脇役に追いやられていました。これは、CO2以外の温室効果ガスに含まれる各ガスの特性と地球温暖化への影響を軽んじる姿勢があったためです。地球環境が不安定な状況に直面する中で、気候変動に関する誓約、イニシアチブ、人々の生活へのアドバイスが毎日のニュースの見出しとなる中、アラベスクS-Rayでは最近の研究レポートで気候変動に関する言葉を明確に示すことが重要であると強調しています。
温室効果ガスの短期的および長期的な排出削減のためには、分かり易い対策と、国際機関や業界団体等が掲げる目標達成に対して資本市場がどのように役立つかについての説明が重要であると考えます。これらの対策や説明に誤解や抜け穴が生じないようにしなければなりません。
2021/12/6
Arabesque S-Ray
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アラベスクは2013年に創業し、資産運用事業を中核にサステナビリティ金融事業を推進してきました。2018年にESGリサーチの社内ツールであったS-Ray(R)を独立したESG評価事業としてアラベスクS-Rayをスタート。2019年には資産運用事業にAIを取り入れたAIエンジンを開発し、アラベスクAIを設立。金融、サステナビリティ、AIの融合を目指すことで、サステナブルな社会の実現に貢献していきます。
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