Global CSR Topics

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その再エネは大丈夫? バイオマス発電から考える(勉強会レポート)

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今、世界中で再生可能エネルギー(以下、再エネ)へのシフトが大きく進んでいます。しかし、良かれと思って導入した再エネが、実は環境に悪影響を及ぼしているケースも。例えば、大型の太陽光発電施設や水力発電用ダムによる生態系破壊、風力発電では野鳥が衝突死するバードストライクや景観の悪化、太陽光発電パネルの廃棄物問題など、環境を守るための再エネであっても、環境負荷がゼロということはありえません。

再エネなら何でもいいということではなく、今企業には再エネの質を見極め、選ぶことが求められているのです。

「再エネの質」をどう見極める? バイオマス発電から考える企業リスク(勉強会レポート)

エコネットワークスでは11月に、勉強会「再エネの質をどう見極める?― バイオマス発電から考える企業リスクとは ―」をオンライン開催しました。バイオマス発電は、木質バイオマス、パーム椰子殻、間伐材や建築廃材などを燃料とするもので、再エネの一つとして広がっています。しかし、特に輸入バイオマス燃料を中心に、森林伐採や生物多様性への影響などの問題が指摘されています。

勉強会では、小売電力事業者「みんな電力(株式会社UPDATER)」と国際環境NGO「FoE Japan」よりスピーカーをお招きし、講演とパネルディスカッションを行いました。

記事の目次

みんな電力・真野さんのおはなし

・・・燃料を燃やすバイオマス発電/再エネの中身をしっかりチェックしよう

FoE Japan・小松原さんのおはなし

・・・バイオマス発電における課題/バイオマス発電はカーボン・ニュートラルなのか?/抜け穴が多いFIT制度

パネルディスカッション ~再エネ調達におけるリスク、企業に求められることとは

・・・世界で高まるバイオマスへのリスク意識/再エネ調達基準を持つことが社会に与える影響力/どのような再エネを選んでいくか

最初にお話をしてくださったのは、みんな電力の事業本部副本部長の真野秀太さん。真野さんは、実は筆者の大学ゼミの先輩で、当時から一貫して環境問題に取り組んできた方です。三菱総合研究所や自然エネルギー財団を経て、SBエナジー株式会社で再エネ発電事業に関わり、みんな電力では法人の再エネ導入支援を担当されています。

燃料を燃やすバイオマス発電 CO2削減にはつながらないケースも

日本のバイオマス発電は、2015年度末の300万kWから、2020年12月には679万kWへと増加しています。国が掲げる2030年のエネルギーミックス目標では、再エネ比率は36-38%、バイオマスは全体の5%が目指されています。

バイオマス発電の燃料は、発電のために燃料を作るケース(木材など)と、廃棄されるはずのものを有効活用するケース(建築廃材など)に分かれます。

再エネの中で唯一燃料を燃やすバイオマス発電では、CO2が排出されます。それなのに、なぜCO2削減につながるのか。並行して植林を行うなど適切な森林管理をして、CO2を固定することで、長期で見るとCO2削減効果があるという考え方です。

しかし、例えば輸入の木質バイオマスなどで、熱帯雨林の開発を伴う場合は温室効果ガスの排出量が約5倍、泥炭地開発を伴う場合は約139倍になり、周辺の生物多様性にも悪影響を与えるという報告があります。使用するバイオマス燃料によっては、CO2削減につながらないこともあるわけです。

SBT(Science Based Targets)では、バイオマス燃料についてCO2削減効果を証明することが求められています。日本では、昨年ようやく再エネ固定価格買い取り制度(FIT制度)の中で、バイオマスの持続可能性について、環境・社会・労働・ガバナンスなどの観点からルールが定められたばかりです。

再エネの中身をしっかりチェックしよう 持続可能な調達方針を

バイオマス発電に見られるようなリスクを回避するためにも、企業は持続可能な再エネ調達について方針や基準を持つことが重要だと語る真野さん。

みんな電力の再エネ調達ポリシーでは、燃料はなるべく地産地消、特にバイオマス発電については国内の資源活用を基本としています。海外からの輸入燃料を利用する場合は、輸入先で森林破壊や泥炭地の開墾、人権侵害を起こしていないことを開示します。次のような基準を重視しながら、再エネを調達していくことが大切です。

2030年までに再エネ比率を50%にする目標を掲げたリコーは、独自の再エネ調達基準(再エネ電力総合評価制度)を定めています。再エネ設備の新規開発を促す「追加性」があること、環境負荷がより低いこと、地域社会が出資する発電所であること(地域貢献性)など総合的に評価して、再エネの中身を評価する先進的な取り組みです。

また、スターバックスジャパンでは、地域の環境や雇用、課題解決などを重視した調達を行っています。徳島県の未利用材を活用し、適切な森林管理を行っているバイオマス発電を利用しています。パタゴニアスノーピークなども、発電事業者と直接コミュニケーションやコラボレーションを行いながら、需要家がしっかりとバイオマス発電の中身を確認した上で調達しています。

バイオマス発電における課題、企業リスクとは

次にNGOの立場から課題を解説してくださったのが、国際環境NGO「FoE Japan」の委託研究員・小松原和恵さんです。生物多様性保全を専門とする小松原さんは、企業やシンクタンク、NGOを経て、現在はフリーランスの専門家として、FoEジャパンでバイオマス発電問題に取り組んでいます。FoE Japanでは、6月にレポート「バイオマス発電は環境にやさしいか? “カーボン・ニュートラル”のまやかし」を公表しています。

バイオマス発電で特に懸念されるのは、木質ペレットやパーム油の副産物であるパーム椰子殻(PKS)を中心とする、輸入のバイオマス燃料です。写真は、はげ山と化したカナダの森林地帯や、皆伐されたアメリカの湿地林の様子です。木質ペレットの需要が高まる中で、天然林が伐採されている現状があります。

日本の木質ペレット輸入量は、2020年12月末には200万トンを超え、2012年から約28倍に増加しています。最大の調達先はベトナムですが、今後は北米からの輸入が増える見込みです。パーム椰子殻(PKS)の輸入量も、2012年比で85倍となっています(パーム油の生産地であるマレーシアやインドネシアからの輸入が中心)。

今世界では、森林や生物多様性の保全と気候変動対策が急務となっています。こうした中で、企業が再エネ調達にあたり、バイオマス燃料生産に伴う生態系破壊や、燃料の燃焼や輸入に伴うCO2排出に加担すれば、社会的責任を問われるリスクにつながります。また、生産地の住民の人権侵害などのリスクも踏まえる必要があります。

バイオマス発電はカーボン・ニュートラルなのか?

バイオマス発電は、燃料を燃やすときにCO2を排出するものの、森林が炭素を固定することで、カーボン・ニュートラルになるとされています。しかし、伐採・加工・輸送・燃焼のさまざまな段階でCO2は発生しており、すべてを相殺できているのか疑念が残ります。IPCC2006ガイドラインや「日本国温室効果ガスインベントリ報告書2021年」によると、木材の燃焼時の炭素排出係数は、石炭よりも高いんです。

また、森林が回復したとしても、短くても数十年単位で時間がかかるため、2030年までにCO2の削減・吸収を急ぐ中、気候変動の対策としては疑問符がつきます。

IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)は、バイオマス発電をカーボン・ニュートラルとは判断していません。IPCCが国レベルで温室効果ガス排出量を算出する際は、便宜上、森林に蓄えられた炭素は伐採時に排出したとみなすため、燃焼時の排出量はゼロとすると定めています。ただし、「バイオマスが持続可能に生産されている場合であっても、自動的にカーボン・ニュートラルと判断・想定することはない」と明記としています。皆さん誤解されやすいところなので、覚えておいて頂ければと思います。(出所:IPCC FAQ Q2-10参照)

持続可能性は保たれるのか 抜け穴が多いFIT制度

日本のFIT制度では、持続可能性に関する基準に抜け穴が多く、未だ温室効果ガス排出量の評価や上限が定められていません(来年度導入予定)。輸入木質バイオマスの持続可能性は、森林認証・CoC認証制度(第三者認証)だけでなく、業界団体による認定、企業独自の取り組みによる証明が可能で、ある意味では何でもOKな状態です。また、バイオマスを混焼している石炭発電所も、FIT認定を受けている実態があります。FIT認定があったとしても、持続可能性が担保されていないケースもあるのです。

パネルディスカッション ~再エネ調達におけるリスク、企業に求められることとは

みんな電力の真野さん、FoE Japan小松原さん、エコネットワークス野澤の3名で、バイオマス発電のリスクも踏まえながら、企業の再エネ調達のあり方について議論しました。

世界で高まるバイオマスへのリスク意識 企業はどう動くべきか

真野さん: バイオマス発電は、太陽光・風力・水力に比べて安定的に再エネ電力を供給できるため、企業や電力小売事業者から重視されている電源と言えます。今後企業ニーズがもっと増え、規模の大きさが求められると、輸入バイオマス燃料への依存が高まるのではないかと思います。

小松原さん: 2030年までに脱石炭を目指しているEU19ヵ国と英国では、バイオマス燃料の利用は増えているんです。EUの再エネの6割は、木質ペレットによるバイオマス発電で賄われていて、発電だけでなく熱利用にも多く活用されています。

こうした状況を受け、現在改正中のEU再生可能エネルギー指令では、木質バイオマスを燃料にして、熱電併給ではなく発電のみを行う設備は、原則2026年末までに助成金など政策的支援の対象外になる見込みです。すでにオランダ議会は、木質バイオマス発電への新規助成を一時的に停止しています。世界は、もう「木質バイオマスはマズイぞ」という流れに変わってきてるのではないでしょうか。

日本でも資源エネルギー庁のバイオマス持続可能性ワーキンググループなどで、より厳しい基準にするための議論はされています。この動きを加速するためには、安心して調達できる再エネのみを認定する制度を作ってほしいと企業が声を上げていくことも大切です。

真野さん: これまでは、バイオマス発電の持続可能性をチェックする企業や電力小売事業者がほとんどいなかったので、FIT制度で認定されたものであれば、取り扱われてきたという実態があります。しかし、国の制度がまだ不十分な中では、需要家である企業がしっかりチェックする、目利きをする必要がありますね。

再エネ調達基準を持つことが、社会に与える影響力

野澤: 再エネの質をチェックしていくためには、企業がしっかりとした調達基準を持つ必要がありますね。例えば、リコーさんは経済・環境・社会の面から基準を定めているほか、富士通さんも再エネ調達にあたっての必須条件と推奨条件を設けています。

真野さん: しっかりとした調達基準を持っている企業は、まだまだ少ないと思います。大きな要因としては、まずは課題やリスクが知られていないということがあります。最近では、大型太陽光発電設備の開発による環境破壊などが報道でも取り上げられ、認知されつつありますが、バイオマスの問題はまだあまり知られていません。

ただ、グローバル企業や外資系企業はリスク意識が高く、バイオマスを外す、泥炭地の開墾や人権侵害の問題が指摘されるパーム油に関わる燃料はNGなどのリクエストを頂くことはあります。需要家が厳しい基準を持つことで、電力事業者もそのリスクを考慮するようになるという点で、変化につながっていくと思います。

野澤: バイオマス以外でも、企業からNGとされる領域はありますか?

真野さん: 例えば、アップルさんは、大型水力を除外していますね。開発時の環境負荷が高いことや、日本であれば大型水力ダムは過去に開発されたものなので、再エネ設備の新設につながらない「追加性」といった観点が背景にあります。

野澤: 小松原さんはNGOの立場から見て、企業の調達基準についてどんな課題を感じていますか?

小松原さん: 木質バイオマスへの需要の高まりによって、天然林が破壊されている実態などを考えると、気候変動と生物多様性保全を両立するという視点は、とても重要になってくると思います。

野澤: 先進企業に共通する姿勢や取り組みはありますか。

真野さん: 調達方法によって生じるリスク・課題をしっかり認識した上で、調達先をしっかりチェックする、発電所とコラボするなど、一歩踏み込んだコミットメントをしています。電力会社に任せておけばいい、ということではなく、さらに一歩先を見据えている印象です。電力に限らず、あらゆる調達において、調達側が生産地の状況を理解して取り組むことが大事ですね。

野澤: 適切な調達をしていくためには、課題やリスクについてアドバイスができるような信頼できる電力会社やNGOなどとパートナーシップを組むこともカギですね。

真野さん: そうですね。特にバイオマスは、調達方法によってリスクの度合いがかなり変わりますし、例えばより早く成長する植物など新たな燃料が出てきた時に、開発時の地域への影響や、ライフサイクル全体でCO2排出削減につながるかなど、かなり専門的なチェックが重要になります。

どのような再エネを選んでいくか 電力を買う以上のコミットメントもカギ

野澤: リスクが低い再エネの選択肢は、今いろいろと出てきていますね。

真野さん: みんな電力では、耕作放棄地に設置した太陽光パネルの下で作物を栽培する「ソーラーシェアリング」に取り組んでいます。日本には、徳島県の面積に相当するくらいの耕作放棄地がある中で、エネルギーと農業の両課題に取り組むアプローチです。さまざまな社会課題を複合的な視点で捉えていくことは、今後より必要になると思います。

また、「電気の買い方」も重要です。できた再エネをただ買うというだけでなく、企業が長期的な視点でコミットすることが求められています。需要家と発電事業者が、数十年の長期契約で再エネを調達する「コーポレートPPA」という手法が広がりを見せています。弊社のソーラーシェアリングでも長期契約を結んでいるので、企業側が発電所や周辺地域により深く関わっています。

野澤: 多くの企業が再エネ100%などの目標を掲げる中で、現実問題としては、再エネの量をスピーディーに確保しつつも、より良い再エネを選んでいけるのかという両立の難しさはあるとは思いますが…

小松原さん: 短期的なビジネス視点ではなく、将来世代への影響まで含めた長期的な視点で、事業を捉えていく必要があると思いますね。

真野さん: 脱炭素への取り組みは、気候変動対策というだけでなく、企業としての姿勢をしっかり示すということでもあります。日本におけるより良い再エネの促進に貢献していくという姿勢を持つことは、企業価値にもつながることではないでしょうか。

(宮原桃子/ライター)

EcoNetworks
Sustainability Frontline [原文はこちら]


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