フランスで最も貧しい都市が、すべての幼稚園で無料の朝食を提供するワケ
フランスの首都パリから南に30キロほど進んだところにある都市、グリニー。同市はフランスで最も貧しい地域のひとつで、2020年には、人口の半分が貧困ラインを下回る生活をしていることが明らかになった。(※1)
そんな中、2012年からグリニー市長を務めるフィリップ・リオ氏は、「経済的な理由によって、子どもの良好な健康状態や学習機会が奪われることを防ぎたい」という想いから、2021年9月、市内のすべての幼稚園で無料の朝食を提供する取り組みを始めた。15園の幼稚園に通う約1,800人の子どもが、この取り組みの対象となる。
このような取り組みに踏み切ったのは、「家庭の事情により食事を十分にとれない子どもは、健やかに過ごすことができないのではないか」という懸念があったからだ。食事の時間は、食べ物の色や匂い、外観について話せる楽しい時間だ。皆が集まるあたたかい空間で、美味しい朝食を食べれば、子どもも元気になるのではないだろうか。
また、食事もままならない状態では、子どもたちが学ぶときに集中力や記憶力を十分に発揮できないかもしれない。それが、ひいては学力格差につながる可能性もある。
「幼稚園の段階でそこまで考えるのは早いのでは」という意見もあるかもしれない。しかし、リオ氏は国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の取材に対し、「貧困は幼児期から始まり、小学校に上がってもずっとついて回る」と話し、早い段階から子どもを支援する重要性を指摘する。同氏は、ゆくゆくは小学生にも同様の支援を広げたい考えだ。
リオ氏によると、グリニーの人口の50%は30歳未満の若者で、他の多くのフランス郊外でも同じような割合だという。将来を担う世代が多くいる地域だが、同氏は郊外、農村部、フランス海外県・海外領土に暮らす若者が取り残されがちであることを懸念している。同国に限らず、都市部と地方の格差是正に向けて何ができるのか、考えさせられる。
グリニーではこういった子どもの支援の他にも、女性に生理用品を無料で配布したり、若者の就労支援をしたり、公共施設を改善するための資金を調達したりと、貧困問題を解決するための包括的な支援に力を入れている。
貧困がもたらす影響は、健康格差や学力低下など様々だ。貧困の連鎖を断ち切るにはどのような支援が必要なのか、長期的かつ多角的な視点で考えることが求められるだろう。
※1 OHCHR | World’s Best Mayor: “Poverty makes the realization of human rights impossible”
2022/1/17
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