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大切にしたい「気候正義」 企業・個人ができることは?

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私は2021年10月に、気候変動の知識を深めアクションの起こし方を学ぶ「クライメート・リアリティ・リーダーシップ・コミュニティ・トレーニング」に参加しました。

アル・ゴア元米国副大統領が開催しているこのトレーニングで、繰り返し出てきたのが「Climate Justice(気候正義)」という言葉。2021年11月に開催されたCOP26でも、キーワードの1つになっていました。

「気候変動の被害を受ける人≠原因を作った人」という不平等

気候正義とは、気候変動でもたらされる負担、利益を公平・公正に共有し、弱者の権利を保護しようという考え方です。

世界を見てみると、気候変動の原因となる温室効果ガスを大量に出しているのは先進国なのに、結果として被害を受けるのは多くの場合、排出量が少ない開発途上国。これは世界全体の「気候正義」がおかしい状態です。COP26などの国際会議の場では、「この不均衡をなんとかしなければ」という機運が高まっています。

「誰が被害を受けているか」に目を向けても、温室効果ガスの排出量が少ない人々のほうが受ける影響が大きいという、同じ構図が浮かび上がります。

  • 2005年に米国南部で起こったハリケーンカトリーナ。気候変動によって大型化したと言われるこのハリケーンの被害者は、お金がないために災害の危険性が高いところに住まざるをえなかった低所得者層が多かった。
  • 世界銀行の報告書によると、世界の人口の5%以下の先住民族が、世界の生物多様性の80%を守ってきた。しかし多くの先住民族が、熱帯雨林の火災や雪どけが原因の洪水など、気候変動による災害により、住む場所を追われている。

こうした状況を受け、国際環境NGOのFoEや米国のClimate Justice Alliance (CJA)など、多くの団体や当事者が、気候正義を訴えています。

「気候正義」に取り組む企業も

政府、市民だけでなく、企業も「気候正義」に取り組んでいます。アイスクリームブランドの「ベン&ジェリーズ」は、ウェブサイト内に「気候正義」のページを作り「Climate Change is About Justice(仮訳:気候変動は正義の問題だ)」と訴え、同社ウェブサイトを通じた署名を呼びかけています。マイクロソフト社は、マイノリティ層向けの再生可能エネルギーを通じた支援を通じ、気候変動による不均衡に取り組むことを2020年に表明しました。


2019年にベン&ジェリーズが作成した、気候変動へのアクションを促す1分程度の動画。気候正義の問題も訴えています。

社会や環境に配慮した公益性の高い企業の認証制度を運営する「B Corp(Bコープ)」の関連団体B-Labは、2021年2月に“The Climate Justice Playbook for Business”を発表。気候正義の定義から、取り組みを考えるための問い、企業の事例、マインドフルネスなどの個人の心のあり方にまで言及しています。特に、事例紹介は4つの企業の取り組みの方針、実際のアプローチ、今後の施策まで具体的に書かれているので参考になりそうです。会社名やメールアドレスを入れれば誰でもダウンロードできます。

「気候正義」は、今後の世界のキーワード

私が「クライメート・リアリティ・リーダーシップ・コミュニティ・トレーニング」を通じて感銘を受けたのは、スピーカーの多くが、先住民族やマイノリティの人たちだったことです。彼ら彼女らは、気候変動の被害の最先端にいることが圧倒的に多いからです。

気候変動は世界中で起こっています。だからこそ、影響や対策を考える際は、誰が原因を作り、誰が被害を受けているかを考慮し、当事者の声に耳を傾けて取り組んでいくことが重要です。人権の視点からも「気候正義」は、ますます大切な視点になっていくでしょう。

(曽我 美穂/ライター)

EcoNetworks
Sustainability Frontline [原文はこちら]


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