アラベスク:ゴーストフライト
※本記事は、ESG評価機関アラベスクによる寄稿を、和訳しご提供しています。
1万8千便!これは、ルフトハンザ航空が今冬に飛ばさなければならないと主張しているフライト便数です。このように便数が非常に多い理由は、EU規制により航空会社に割り当てられた空港の着陸枠の80%を使用することが要求されているためです。航空会社がこの規制に従わない場合、高収益の路線の枠が取り上げられ、競合他社に割り当てられる可能性があります。 EU委員会は、新型コロナウィルス感染拡大の初期の段階では、この規制の適用を中止していましたが、2021年の冬期計画から、50%程度の水準で規制を再導入しました。 2022年3月にはその水準を64%に引き上げます。一方、英国政府は、航空会社に割り当て枠の70%を使用するよう同水準を引き上げることを発表しました。
他方、ルフトハンザの競合他社は、ゴーストフライト(規制を満たすために飛ばしている乗客無しの飛行機)を飛ばすのではなく、その座席を低価格で旅客に開放するべきと訴えているライアンエアーを批判しました。これらの航空会社はゴーストフライトに関する情報を開示していません。とはいえ、航空部門による温室効果ガス排出量の全体的なシェアを考えると、航空会社への制裁や、新しいクリーンテクノロジーへの投資を強制せずに出来るだけ多くの不要なフライトを回避することは理にかなっているのではないでしょうか?
ガソリン車140万台分の排出量
2019年には、1千110万を超えるフライトがヨーロッパの空港を離着陸しました。新型コロナウィルスの感染拡大2年目の2021年は、このフライト数は2020年に比べて45%以上減少し、620万便を下回りました。世界中で海外渡航が規制されたことで、過去2年間に亘り、多くの飛行機が停留を余儀なくされ、その結果、国内線と国際線ともにフライト数が大幅に減少しました。
フライト数が少ないということは、排出量も少ないということです。実際、2021年には2019年と比較して排出量が50%以上減少しました。新型コロナウィルス感染拡大前のCO2の総排出量の4%近くを航空業界が占めていたことを考えると、50%以上の減少は大きなインパクトがあります。純粋に環境の観点から考えると、この状況は非常に良いことですよね?
それでは、ゴーストフライトについて考えてみましょう。グリーンピースは、これらのフライトは約36万トンのCO2を排出すると推計しています。ルフトハンザの市場シェアが約17%であることを考慮すると、ヨーロッパの航空業界全体のゴーストフライト数は10万回に相当し、CO2の排出量は210万トンと見込まれます。言い換えれば、この排出量は平均的なディーゼル車やガソリン車の140万台分の排出量にあたります。
移動手段が生み出すCO2を顧みる
航空業界のおけるフライト数の枠を使用するか放棄するかの規制に対して有効な議論がありますが、多くの国々が今もなお新型コロナウィルスのオミクロン株による渡航制限に直面している中、これらの規制を施行すべきか疑問です。 航空会社は乗客の実際の需要に基づく最適な飛行計画を実行する方が理にかなっているかもしれません。 そうすれば、多くのフライトと不要な温室効果ガスの排出を削減できます。 また、今後、新型コロナ感染拡大が収束する頃には、私たちやCOP26参加者は、短距離の出張に飛行機を使う必要があるのか、それとも電車や仮想会議などの代替手段を利用してCO2排出量を節約した方が良いのか自問することになるでしょう。
2022/3/7
Arabesque S-Ray
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アラベスクは2013年に創業し、資産運用事業を中核にサステナビリティ金融事業を推進してきました。2018年にESGリサーチの社内ツールであったS-Ray(R)を独立したESG評価事業としてアラベスクS-Rayをスタート。2019年には資産運用事業にAIを取り入れたAIエンジンを開発し、アラベスクAIを設立。金融、サステナビリティ、AIの融合を目指すことで、サステナブルな社会の実現に貢献していきます。
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