気候変動がもたらす“健康危機”
4月7日は、世界保健デー。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は「気候危機は健康危機です」と話したそうです。
これから迎える夏の暑さと熱中症の心配を思えば、「健康危機」という言葉にうなずくばかり。しかし、健康危機の意味するところは、熱中症だけではありません。気候変動は健康にどのような影響を与えるのでしょうか。また企業や団体はどのような取り組みを行っているのでしょうか。
気候変動で、健康にどんな影響が?
国際的なNGO、国境なき医師団が「気候変動は健康にどう影響する? 知っておきたい5つのポイントを解説」と題した動画を公開しています。
一部を抜粋してまとめると
- 蚊の生息域が広がりマラリアなどの感染症が増える
- 食糧不足からくる栄養失調が増える
- ハリケーンや洪水による衛生環境の悪化で感染症が増える
- 気温上昇で下痢を引き起こす病原菌が増える
- 熱中症や暑さからくる心臓病が増える
- 大気汚染で呼吸器疾患が増える
などが挙げられています。これらは遠くのどこかで起きる話ではありません。
今年2月に発表されたIPCC第6次報告書の第二作業部会報告書では、上記のような内容の他に、メンタルヘルスにも言及されています。極端な気候がもたらす災害はトラウマを引き起こす可能性があり、また生計手段や文化を失うことも精神的な健康に影響します。
メディアでは、気候変動がもたらす影響に絶望感を覚える「エコ不安症(Climate anxiety)」という言葉も伝えられるようになりました。
なおWHOの推計では、2030年から2050年にかけて年間25万人が、気候変動が引き起こす栄養失調、マラリア、下痢、暑熱の影響で亡くなると考えられるそうです。
気候変動に適応し、健康を守る地域づくり
このように聞くと不安が増すばかりですが、気候変動と健康の視点から行われる取り組みにも目を向けてみましょう。
株式会社LIXILが展開するクールdeピースPROJECTは、自社製品である外付け日よけを通じて、室内熱中症の予防と日よけ習慣の啓発を目指すもの。自治体や学校と連携して行うこの取り組みは、気候変動への適応を地域に広めるアクションと言えそうです。
米国の助成財団、Kresge Foundationは助成プログラムの一つとして、Climate Change, Health & Equity(気候変動、健康と公平)を展開。特にリスクに晒されやすい“脆弱なコミュニティ”への支援に力を入れ、健康格差を減らすことを目指しています。
Kresge Foundationの助成先でもあるのが、デトロイトのEastside Community Networkです。この団体はClimate Equityの取り組みの一つとして、団体本部をウェルネスハブとして作り変えました。
健康とレジリエンスのための施設であるウェルネスハブ。ハリケーンなどの災害時には人々の避難所となり、様々な資源が集まる拠点となります。太陽光パネルと蓄電池を備える上に、浄水システムがあり給水も可能だそうです。
一方で普段は、地域の健康をサポートするコミュニティセンターとして活用されます。医師による診察や、衛生用品と食料の配布が行われ、フィットネスルームやダンススタジオではヨガや瞑想のクラスも。キッチンでの料理教室では栄養の大切さを伝え、通信環境やデバイス、ソフトウェアが整えられたテックハブや録音スタジオまであるのだとか。
普段の取り組みを見るだけでは、ウェルネスハブが気候変動対策だとは気づかないかもしれません。しかし、平時から健康格差を減らすこと、ハブを通じて人と人とがつながっていることは、気候変動がもたらす災害時に大きな意味を持つのではないでしょうか。
期待される柔軟な発想
気候変動の緩和のため脱炭素化に向けた取り組みが加速しています。一方で私たちの健康を守るためには適応することも欠かせません。分野を超えて、地域ぐるみでいかに取り組むか。柔軟な発想が求められそうです。
(近藤圭子/ライター)
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Sustainability Frontline [原文はこちら]
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