サステナビリティ社内浸透 カギを握る「キーパーソン」
エコネットワークスでは、クライアント企業のCSR担当者の皆さんとともに、サステナビリティに関して意見交換をする交流会を定期的に開催しています。その中でも、各社共通して関心が高いのが「社内浸透」です。多くの企業で、SDGsや環境、人権などに関するe-ラーニングや研修、社内ポータルやSNSでの情報発信など、さまざまな取り組みをしています。しかし「サステナビリティやSDGsに全く興味のない従業員に、どうやったら振り向いてもらえるか」という悩みの声がよく聞こえてきます。
平和活動家が語った「波を広げるのに効果的なこと」
少し領域は違いますが、私は個人的に、フェアトレード(公正な貿易)に関する一般向けの啓発活動に10年近く携わっています。学校や自治体、地域のイベントなどでワークショップを開催してきましたが、まずは「ちょっと興味がある人」が参加してくれるもので、全く興味のない人に参加してもらうには、なかなか高いハードルがあります。そんな時、広島で平和活動に長年取り組んできた方の一言に納得したことがあります。
「全く興味がない人に、むりやり興味を持ってもらうことは難しい。でも、少しだけでも興味のある人が、もう少し深く知って行動していってくれれば、その人の周りやコミュニティが変わっていきます。そういう人を一人でも増やしていくことが、波を広げていく上で効果的だと思うんです」
当たり前のことではありますが、同僚や友人、家族などそばにいる人の話や行動は、身近に感じるとともに共感を生みやすく、インパクトがあるのです。
CO2ゼロ工場の陰に、熱いキーパーソン
ある大手企業で、グローバルの工場や事業所におけるCO2実質ゼロ化を推進してきたご担当者からも、こんな話を聞きました。ネットゼロを実現した拠点には、必ず「キーパーソン」がいたと。サステナビリティに取り組むことの価値を理解し、自分の仕事や事業とイコールだと捉えて、周りに熱く働きかけてくれたそうです。会社としても、こうした取り組みや成果の主役が「一人ひとりの従業員」であることを社内外にアピールしたことで、自然と各拠点に動きが広がっていったということでした。
キーパーソンに注目した仕組みづくり:SDGs浸透の事例
こうしたキーパーソンに注目した制度を設ける企業も出てきています。リコージャパンでは、従業員一人ひとりがSDGsを自分ごと化し、積極的に取り組んでもらうことを目的に、2018年から「SDGsキーパーソン制度」を立ち上げました。約400名程度がキーパーソンに登録しており、毎月のオンライン会議で、社会課題や社内でのサステナビリティ関連の取り組みを共有し、各部署・拠点に持ち帰り、社内外での企画や取り組みに展開しています。
また、KDDIが開設した社内向けポータルサイト「みんなのSDGs」では、サステナビリティ推進室の担当者だけでなく、公募によって集まった社内副業メンバーが「アンバサダー」として関わっています。アンバサダーは、「わたしのSDGs」ブログを毎日更新し、社員が日常的にSDGsに触れ、理解を深めるための取り組みを担っているそうです。
今、社会全体で、サステナビリティへの取り組みを加速することが求められています。特に2030年は、SDGsの目標達成年であり、COP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)でも2030年までが「決定的な10年(decisive decade)」とされるなど、一つの重要なタイムラインです。遠い先のようだった2030年も、残すところ9年を切りました。
気候変動をはじめとする大きな危機を乗り越えられるかは、一人ひとりの行動にかかっています。組織やコミュニティ、友人や家族といったグループの中で、波を広げていけるようなキーパーソンが、活動しやすい・したくなるような仕組みを作っていくことがカギとなりそうです。
(宮原桃子/ライター)
EcoNetworks
Sustainability Frontline [原文はこちら]
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