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人種差別するつもりはない。そういう人がしている無意識の「差別」とは

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先日、大手牛丼チェーン「吉野家」が、新卒向け説明会に申し込んだ学生が「外国籍」であることを理由に参加を拒否していたことが発覚し、物議を醸した。同社は、「外国籍の方は就労ビザの取得が難しく、内定となった場合でも入社できない可能性がある」として、学生の説明会への参加をキャンセル。だが、実際のところ、学生は外国籍ではなく日本国籍のミックス(ハーフ)であったのだ。

学生は、海外出身の父親の苗字を名乗っており、名前もカタカナ表記だった。説明会の予約のために入力した名前から、吉野家に外国籍だと判断されてしまったのである。

あなたはこの件をどう捉えただろうか。「名前だけで判断するなんて、ひどい」──そう思った人もいるだろう。だが、中には「自分も同じようなことをしていたかもしれない」とヒヤリとしていた人もいるのではないだろうか。

誰が日本人で誰がそうでないかは、個々の判断によるものだ。多くの場合、私たちは外見や氏名などを見て、「日本人っぽいか」「外国人っぽいか」を見分けている。先述の吉野家は応募者が外国籍であるかどうかを「氏名 住所 学校などの情報から総合的に判断しています」としている(※1)。

見た目などの分かりやすい特徴を見た目に国籍を判断しているのは、いち企業だけではない。2021年1月、バハマと日本にルーツを持つ男性が、警察官から職務質問を受けた時の様子を撮影した動画がSNSに投稿され、物議をかもした。警察官が男性に職務質問をしたのは、「ドレッドヘアー」であることが理由であったためだ。

動画内では、警察官が男性の国籍をどう判断したかは明かされていない。だが、黒人のカルチャーであるドレッドヘアーを理由に「職務質問をすべき対象である」と判断していることから「人種差別ではないか」との指摘もあった。

誰を自国の人と判断するかについては、隣国の韓国でも同じような問題が起こっているようである。2011年、韓国に帰化したウズベキスタン出身の女性が、韓国のサウナを訪ねた際、「外国人である」ことを理由に利用を拒否される出来事があった。女性は、ウズベキスタン出身であるが、すでに韓国籍を取得した「韓国人」であるとして店主に抗議。しかし、店主は「国籍を取得したとしても、顔立ちが外国人だから」と譲らなかったという。

韓国人が定義する「韓国人」に含まれる人と、そこから排除される人がいる──こうした状況に対し、マイノリティや人権、差別論について研究する韓国のキム・ジヘ教授は、以下のように語る。

「重要なのは、この境界線を引く権力を、だれかが持っているというところにある。この領土において、一部の人々が主人になりすまし、他の人々を客として扱い、拒絶する権力を行使している(※2)」

カタカナの名前を見たとき、ドレッドヘアーの人を見たとき、どことなく外国人風の人が近づいてきたとき──私たちは知らず知らずのうちに、日本人とそうでない人の「境界線」を引いている。判断する側の私たちは、知らず知らずのうちに「特権」を握っているのである。

また、キム・ジヘ教授は、こうした状況のなかで韓国におきている歪んだ現象についても言及する。本来、多様な文化の相互尊重と共存を意味するはずの「多文化」という言葉そのものが、韓国人と「本物」の韓国人ではない人を区別するための言葉になってしまったというのだ。「多文化」というとき、自国人は「多文化」に属さない、中心的な存在であることが前提となっている。例えば、海外にルーツのある学生に向けて、先生が「多文化の人は教室に残って」と呼びかけるような形だ。

それにも関わらず、「多文化」という言葉を使うことで、人々は自らが多様な文化を等しく尊重していると勘違いしてしまっているのだと、キム教授は言う。

私たちが「多文化」と言うとき、本当に多様な文化を尊重できているだろうか?無意識のうちに「誰を『こちら側』に引き入れて、誰を『あちら側』とみなすか」の判断をしてしまっていないだろうか?

私たちが無意識に判断を下すとき、見えなくても、そこには確かに「力」が働いている。ならば、私は差別なんてしない──とは言い切れないのではないだろうか。

だからこそ、炎上する案件を横目に眺めるのではなく、「自分ならどう判断しただろう」「本当に同じようなことをせずにいられたかな」と自己点検をしてみることが重要になるのではないだろうか。

※1 「様々な人がいるんだと意識して欲しい」氏名で“外国人”と判断の吉野家がようやく謝罪 女子学生が取材に語った本音「結構ショックを受けてしまって…」(TBS)
※2 キム・ジヘ『差別はたいてい悪意のない人がする:見えない排除に気づくための10章』(大月書店)

【参照サイト】

2022/6/1
IDEAS FOR GOOD
[原文はこちら]

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