日本国内で大規模な計画が進行。注目の「CCS」「CCUS」とは?
2022年5月10日、石油大手のENEOSホールディングスと電力大手の電源開発株式会社(J-POWER)は、CO2を回収して地中深くに閉じ込める技術「CCS」の事業化に共同で取り組むと発表した。事業開始予定は2030年、完成すれば国内初の本格的なCCS事業となる。
CCSとは、「Carbon dioxide Capture and Storage」の略で、CO2の回収・貯留技術のこと。具体的には、CO2を他の気体と分離させた上で回収し、地中深くに圧入・貯留するという技術だ。
IEA(国際エネルギー機関)が2015年に発表した報告書によると、2050年までに求められる温室効果ガス削減量のうち、13%をCCSが担うことが期待されているという。また、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、CCSの導入なしでは2100年に温度上昇を2℃以内に抑えることは困難だとしている。
ENEOSは石油の精製過程において、J-POWERは石炭火力発電において排出されるCO2を回収・貯留し、CO2削減への貢献を目指す。現在は貯留エリアの調査と検討を行っている段階で、調査の対象エリアは両社のCO2排出源が位置する西日本エリアとなるそうだ。
また、世界では「CCS」を発展させた「CCUS」にも期待と注目が集まっている。「CCUS」は「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略で、CCSで回収したCO2を貯留するだけでなく、他のものに利活用する技術だ。
例えば米国では、「CO2を古い油田に注入し、油田に残った原油を圧力で押し出しつつ、CO2を地中に貯留する」というCCUS事業がすでに行われており、CO2削減と石油の増産が同時に実現できるとして、ビジネスとして成立しているのだという。
回収したCO2の活用方法としては、石油の増産に限らず、化学原料の生産や、CO2を燃料に変換する藻と併用したバイオ燃料としての利用などに向けた研究も行われているそうだ。
ENEOSとJ-POWERも、CCSに加え、CCUSに関しても実施に向けた取り組みを共同で進めていく姿勢を示している。
一方で、CCSとCCUSを事業化するにあたっては、課題も多く存在する。その最たるものが、CO2の分離・回収の際にかかるコストだ。そのため経産省では、技術の低コスト化に向けて、技術開発への支援を積極的に行っていくという。
また、十分な量のCO2を貯留するための地層を探し出すのも、容易なことではない。そこで経産省と環境省は、貯留可能地点を3ヶ所程度選定することを目指し、CO2の貯留に適した地層の調査を共同事業として実施しているそうだ。
CO2削減の切り札として注目が集まるCCSとCCUS。国内外を問わず、今後どのように事業化が進んでいくのか、動向に注目だ。
【参照サイト】
- エネルギー供給のカーボンニュートラルに向けた共同取り組みについて │ ニュースリリース │ J-POWER 電源開発株式会社
- エネルギーの基礎用語~CO2を集めて埋めて役立てる「CCUS」
- 我が国のCCS政策について – 経済産業省
2022/6/14
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[原文はこちら]
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