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子どもの貧困問題、企業ができることは?

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最近、「親ガチャ」という言葉とセットで、「子どもの貧困」問題が日本でもよく取り上げられるようになりました。国別SDGs達成度ランキング(Sustainable Development Report 2021)でも、相対的貧困率(所得の中央値の半分を下回っている人の割合、その国の所得格差を表す)について日本は取り組みが遅れていると報告されています。一般的に、国や自治体、NGOなどによる支援という面から語られがちな問題ですが、企業はこの課題にどう取り組むべきなのでしょうか。

7人に1人の子どもが貧困、母子世帯の貧困率は5割超え

日本の相対的貧困率は15.7%(2018年)であり、主要先進7カ国(G7)中では米国に次いでワースト2位と報告されています。なかでも、子どもの貧困率(17歳以下)は13.5%と、7人に1人の子どもが貧困状態にあるといわれています。昨年末、内閣府が発表した「令和3年 子供の生活状況調査の分析 報告書」を基に東洋経済新報社が行った分析では、ひとり親世帯の貧困率は50.2%、さらに母子世帯では54.4%であることがわかりました。

母子世帯数は、2019年までの30年間で1.5倍に増加。日本の貧困率の上昇に影響を及ぼしています。厚生労働省の調査(平成28年全国ひとり親世帯等調査)によると、母子家庭の母親の80%以上が就業しているとされますが、その約半数は非正規雇用であり、平均年間就労収入は約200万円。長時間労働が習慣化している日本では、フルタイム就労と子育てとの両立が難しい社会環境にあり、ひとりで子どもを育てながら就けるのは、パートや臨時雇用であるケースが多いそうです。正規・非正規および男女間の賃金格差が、母子家庭の貧困率を引き上げる要因となっています。

また、新型コロナウイルス感染症の拡大は、ひとり親世帯に大きな打撃を与えました。休校措置などによる家庭での育児負担や不景気による収入減少によって、日本だけでなく、世界でも、その経済状況はさらに悪化しています。

ひとり親でも働きやすい環境整備に向けた動き

こうした状況を受け、ひとり親でも働きやすい環境整備に向けた動きが各国で少しずつ進んでいます。

米国の保険・金融サービス会社、The Guardian Life Insurance Company of Americaでは、ひとり親世帯の経済状況やウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること)を見える化し、企業が取るべき施策を示しています。同社によると、米国のひとり親世帯の60%以上が、在宅勤務をはじめ労働時間と勤務場所の自由度が高い働き方を求めているといいます。また、社内託児所や法定の年次有給休暇日数を上乗せする制度、保育施設利用料補助の整備などに、企業は取り組むべきだとも提言しています。ひとり親の子育てによる時間的な制約や、それに伴う精神的な負担および経済的負担を軽減することが重要だとしています。

日本でも政府が、「はたらく母子家庭・父子家庭応援企業表彰」などを通じて、ひとり親世帯の親が仕事と家庭を両立し、働きやすい環境を整備するよう呼び掛けています。令和3年度に同賞を受賞した介護サービス事業者「株式会社YKA(岐阜市)」では、家事・育児による時間的制約を理解した上で、ひとり親の積極的な雇用に努めています。制度の充実はもちろんのこと、ひとり親世帯の従業員が働く様子を紹介する資料を制作するなど、「相手を理解する気持ち」や「支え合いの精神」を醸成する取り組みも推進。従業員間でフォローし合える体制を構築しています。

働きやすい制度や環境を整えるだけでなく、ひとり親世帯に多いとされる非正規雇用と正規雇用の賃金格差に対しても、取り組みが必要です。日本では2021年4月から、中小企業も含めすべての企業に「同一労働同一賃金」が適用され、今後改善が望まれます。

本質的な問題解決には、働き方改革や賃金格差の解消が不可欠

本当の意味でひとり親世帯・子どもの貧困をなくすためには、経済的援助のみでは不十分です。「支援する側・される側」という二極化された社会構造を変えていくためにも、企業を中心とした働き方改革や賃金格差解消への取り組みが求められています。

ひとり親をはじめ、さまざまな事情を抱えている人がいることを前提に、多様な事情に沿える柔軟な制度設計、そうした働き方に応じた新しい評価・報酬制度が必要です。支援を必要とする人びとに向けて環境を整備することは、貧困課題の解決だけでなく、企業としての価値向上にもつながるはずです。

(岩村 千明/ライター)

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Sustainability Frontline [原文はこちら]


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