服装ルールの緩和 働きやすい職場につなげていくために
服装ルール緩和の動き
2022年12月に文部科学省により「生徒指導提要」が12年ぶりに改訂され、指導提要で校則制定において少数派への配慮をすることが明記され、社会的な議論になっています。
同様に、企業でも服装に関する社内規則等を見直す動きが起きています。
例えば、ドン・キホーテなどを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)では社内の「服装ルール」を緩和し髪色自由化が導入されました。
また、オリエンタルランドは2023年3月にパークで働くキャストの身だしなみを規定したディズニールックの一部の男女別表記を撤廃し、髪色などの規定内容の緩和を行いました。また、一部のコスチュームの性別による指定をなくし、キャスト自身の希望に沿って着用できるユニセックス運用を段階的に導入しています。
制度に加え、価値観を変えていくことが重要
変更前のルールがこれまで維持されてきたことの背景には、人々の価値観や受け止め方が関係しています。例えば髪色であれば、日本では学校や就職活動、会社など様々な場において身だしなみの一つとして捉えられ、黒髪=真面目・誠実そう、金髪=派手・素行が悪いのではないか等、髪色と人格を結び付けて考える風潮が根強くあります。そうした考え方の裏側にあるのが、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)です。
過去の記事で、女性自身に潜むアンコンシャス・バイアスについて取り上げたことがありますが、様々なシーンで働いてしまうバイアスに対して、無意識の思い込みを変えていく取り組みが行われています。例えばユニリーバ・ジャパンでは、企業の採用時にアンコンシャス・バイアスを防ぐため、全ての選考過程で、履歴書から性別欄、顔写真、ファーストネームなど、応募者の性別を知ることにつながる項目を排除し、個人の適性や能力のみに焦点を当てた採用を実施しています。
福岡県では、職場や家庭、地域の中でのバイアスをなくそうと特設ページを設置しており、地域・活動団体へのワークショッププログラムの提供を行っています。
区別はしない、多様性/あらゆる人にとってという視点を前提に置く
様々な取り組みを実施していく中で、「制度改定が一部の人たちのための特別なもの」と受け止められないようにすることが重要です。
例えば、Soup Stock Tokyoでは「Soup for all!」という食のバリアフリーの取り組みの一環として、全店舗で離乳食の無料提供を実施していますが、この取り組みを巡って、子供連れの利用者が増えることへの批判的な声も寄せられました。
しかし、同社はお客さまを年齢や性別、お子さま連れかどうかで区別をし、特定のお客さまだけを優遇するような考え方はないと毅然と伝えている他、「世の中の体温をあげる」という企業理念と紐づけ取り組みを推進している理由を明確に示しています。そして、これまでの取り組み事例(コロナ禍での医療従事者への食事の無償提供など)や今後検討している事例(病院食や介護食などの研究開発など)から、あらゆる人々に対して取り組みを行っている姿勢を伝えています。
私自身外資系のラグジュアリーブランドで接客業をしていた際、社内規定で身だしなみが厳しく規定されており、「お客さまからはブランドの顔として見られることを常に忘れずそれ相応の立ち振る舞いをするように」という上司の言葉を今でも覚えています。
特にサービス業を行う企業にとって、服装に関する規定を変えることは中々容易なことではなく、顧客のアンコンシャス・バイアスにも働きかけていくことが必要となります。単純な解決策は中々ありませんが、服装ルールの改定を含む、企業としての方針や取り組む理由、今後の方針など一貫したメッセージを発信していくこと自体が、従業員や顧客の意識変化につながっていくのではないでしょうか。あらゆる人がより自分らしく働くことができる職場を実現していくために、今後これらの動きがもっと広がっていくことを期待しています。
(船原志保/アナリスト)
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Sustainability Frontline [原文はこちら]
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