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ウォルマートは14日、同社への労働環境の批判を一掃するため、メディア広告を大々的に行いました(原文では「猛攻撃=blitz」)。 アメリカ主要都市の100社以上の新聞に全面広告を掲載。一斉に大キャンペーンを繰り広げました。しかし、専門家や運動家からの視線は冷ややかです。批判の内容は同社の主張に変化が見られないことや、それを支持する従業員のコメントも虚偽だというものでした。

ウォルマートの主張
全面広告のタイトルは「ウォルマートはすべての人々のために働いています」というもので、この他にも、この日は全国主要店舗に取締役員を配置。また、専門ウェブサイト( www.walmartfacts.com )も創設しています。

ウォルマートは、同社の社会的利益は賃金や利益の高さ(同業他社で最も高い賃金と利益を享受している)や、利益配分の正当性(従業員と各店舗の拠点地域へ十分に配分している)に反映されていることを強調しています。
また、その他にも賃金の高さ(南フロリダでは平均賃金はアメリカ全体の最低賃金($5.15)の約2倍($9.39)であること)や、女性の雇用均等(1200億人いる従業員の60%が女性で、40%が各店舗の責任者である)などを強調しました。


ウォルマート主張の背景
なぜこのような主張をしなければならなかったのでしょうか。マイアミ・ヘラルドによると、労働組合や人権運動家は同社が地元地域に全く貢献しない低賃金雇用を生みだすことで、零細企業を閉め出してきたと批判しています。また、女性への賃金差別があったとして訴訟問題に発展し、賠償金を払う事態が増えています。


批判、そしてまた批判
こうした大がかりなキャンペーン活動を行ったにもかかわらず、人々の反応はいまいちのようです。ある教授はキャンペーンが市民に与える影響をブーメランにたとえ、「同社に問題があることを露呈したばかりでなく、その問題が注目を浴びてしまった。今まで批判を気にせずにウォルマートで買い物をしてきた人々も、そこで買い物をすることに違和感を感じるようになってしまっている」としています。

また、労働組合は従業員の「批判は本当ではない」「会社は平等に扱ってくれる」などのコメントに対し、「虚偽広告だ」としています。現状では過半数の従業員が、同社が指定している健康保険を払えず、貧困すれすれの生活を送っていると主張しています。

広報専門家やエコノミストは、同社が本当に経済に影響を与えるキャンペーンを打つためには、もっと思い切った変化を提示するべきだった、ともコメントしています。


積極的な情報開示の促進、キャンペーンの難しさ
私ども企画調査室が昨年9月にウォルマートに問い合わせたところ、同社はアニュアルレポート以外、企業の責任に関する活動を公開する報告書等は制作していないとコメントしました(ウェブ上では活動報告にとどまる程度)。今回の同社の挑戦から、今後は財務情報以外の情報公開も積極的に進められる方向に動くことが考えられます。

また、確実に社会に受け入れられるキャンペーンを行う難しさも呈しました。今回は、従業員が十分な利益を享受していることを印象づけようとしたウォルマートですが、現実とのギャップがあまりにも大きかったといえます。ナイキの例にもあるように、批判を払拭するつもりがさらなる批判を招く、この「ブーメラン」現象をどう回避するのかが、海外で事業展開をする日本企業にとっても大きな課題となってくるでしょう。

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