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[ミレニアムゴール達成の障害に]

地球の生態系機能の現状について、これまでで最も包括的な調査結果が発表されました。20億円が費やされたこの大掛かりな調査によって、人間の活動が、地球が将来の世代を維持するための能力を脅かしていることが証明されました。同調査は世界94カ国から集められた1,300人の科学者によって4年がかりで行なわれ、結果報告書は2,500ページに及んでいます。

同報告書は、人間によって短期間で劇的に、そして無意識に行なわれた活動が生態系機能の変化を生んだとしています。過去50年間における、食料源、飲用水、木材、繊維、燃料などへのアプローチが、地球の自然環境を深刻なまでに劣化させたと結論づけました。この、人間が地球に与えた、地球が生物を支えるための自然プロセスの劣化は、もはや取り返しのつかない変化を生じさせました。そして世界の飢餓や貧困の緩和、保健医療の向上への努力も、この現象によって損なわれてしまう可能性があるとしています。さらにこれらの要因が、2000年に国連で世界の指導者が合意したミレニアム開発目標(MDG)達成の障害にもなり得るとされています。

[生態系機能の劣化]

この調査報告は「ミレニアム生態系評価プロジェクト総合報告書」と呼ばれ、ミレニアム生態系評価(MA)事務局によって作成されました。MAは、既存の環境調査で定義されてきた生態系機能を、やや異なった視点で捉えています。建物建築のための木材や呼吸をするためのきれいな空気、食料のための魚、衣服を作るための繊維など、人間が生態系機能から得られる「サービス」や利益を生態系機能と定義しているのです。

同報告書はまた、淡水、大気と水の制御、地域の気候など、世界の生態系機能の約60%が劣化、あるいは非持続的に利用されていると指摘しています。同調査は24の生態系機能を対象に行なわれ、15の生態系における機能の劣化の進行は、地球気候を突然変化させる可能性を高めていると警告を発しました。

第2次世界大戦後、人口が急増したことで、自然資源の非持続的利用が行なわれ始めました。そして、人間は増え続ける経済や食糧生産を支えるために多大な利益を享受してきました。しかし、このような成功と引き換えに、地球の繁栄を危機にさらしてしまったのです。

生態系機能の劣化の例として、MAは1913年に作られた合成窒素肥料をあげています。合成窒素肥料が1985年以降、頻繁に活用されるようになったことで自然への圧力が高まり、10-30%の哺乳動物や鳥類、両生類が絶滅に追いやられて、そのほとんが再生不能だとしています。


[前向きな変化と対策]

今回の報告書では後ろ向きな結果がほとんどですが、4つの生態系機能においてのみ前向きな兆候が見られるといいます。過去50年間のうち穀物、家畜、農産物の分野の生態系、地球気候を制御する炭素固定が高まってきているのだそうです。

報告書には解決策も提示されています。いくつかの解決策のなかでも、昔から言われながらも今だに未達成なのが、農業補助金の廃止です。農民が生産量を上げるために使用する肥料や殺虫剤の多さが、土壌に負担をかけてしまいます。その使用を助長し、世界の貿易や農業を不均衡にさせてしまうのが農業補助金なのです。

新しい解決策の一つは、今は無料とみなされている「外部性」に価値を持たせることです。例えば飛行機は、放出する二酸化炭素にお金を払っていませんし、食料の価格には、生産した土地から出る農薬で汚れた水路を掃除するための費用は反映されていません。ヨーロッパでは新たに、二酸化炭素取引市場が生まれましたが、将来的には先に挙げたような分野でも市場取引が誕生し、規制されていくのかもしれません。


今回提出されたデータをもとに、社会が生活水準を高めるために自然を活用しつつも、自然に与える脅威を和らげるようなシナリオ作成を行うことが期待されます。そのためには、消費パターンや自然環境へのより高度な教育、新しい技術開発、生態系を搾取することで生まれる代償を高く設定することなどが求められるのです。

■BBCニュース
Study highlights global decline


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