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先月25日に、JPモルガン・チェースが10ページの環境方針を発表しました。この方針が発表された理由として、SRIファンドからの議決権行使を受けたことや環境NGO団体からの圧力が高まっているといった外圧的な要因が上げられます[*1]。しかし、外圧に屈したというよりも、銀行自体が投資や融資といった本業活動を通じて、環境に対しより積極的な関りを持ち始めているからともいえます。単に環境に配慮した取り組みを行うだけでなく、持続可能な森林づくりや新しいエネルギー開発といった分野で革新的な投融資商品や投資システムを作り出し、ビジネスチャンスを広げるための環境への取り組みを模索し始めています。

[国際的な背景――各種原則の誕生]

現在、金融機関の環境に対する国際的な動きとして、さまざまな原則が採択されています。2003年に東京で開催された国連環境計画(UNEP)金融イニシアティブ会議では「持続可能な社会の実現に向けての東京原則」が採択されました。また、同年、The Equator Principle(赤道原則)が施行され、5000万ドル(約50億円)以上のプロジェクト案件についてその融資先をA~Cの3ランクに分け、問題がある融資先に対し金融機関が対応を迫るようになっています。現在では、この赤道原則に31の金融機関が署名しています(日本ではみずほ銀行のみが署名)。


[国際的な背景――メガバンクの動きと提言] 2004年にはシティバンクやバンクオブアメリカ[*2]などアメリカの代表的な銀行が独自の環境方針を打ち出し、話題となりました。またアカウンタビリティ社とBSR(Business for Social Responsibility) 社が、金融サービス、医薬品、農業、その他の4つの特定分野それぞれについて詳細な政策提言をしています[*3]。この金融業界への提言では、投融資活動の環境や地域への影響を調査しながら、ネガティブな結果を緩和する必要があること、加えて、投資しにくい対象を排除することなく、商業ベースにのせることを目指していくことが重要など、今後の投融資の方向性に対する提案が述べられています。


[JPモルガン・チェースの環境方針]

このような状況のなかJPモルガン・チェースの環境方針は、上記の環境への取り組みに先行的な銀行をいくつかの点で上回ることを目指しています。

1) 地球温暖化に対しては、CO2の排出量を抑えるような製品や、グリーンハウスガスの減少緩和事業を行う顧客企業への投資を積極的に行うことを盛り込んでいます。

2) The Equator Principles(赤道原則)に加入し、貸付金、債務や株式、デリバティブ取引など全ての分野で原則を適応しようとしています。適応するプロジェクトの予算枠を、赤道原則で規定している57億円以上より遥かに少ない1,000万ドル(約10億円)以上とし、赤道原則と同様に投融資の際の調査を行おうとしています。

3) 株式分野においては、金融機関としては初めて、融資の際の適正評価(デュー・デリジェンス)の調査項目に、環境へのリスクマネジメントを設定しました。

4) 傷つきやすい森林を守るため融資を制限する“No Go Zones”を設定するだけでなく、森林プロジェクトに投融資をする際は、現在最も信頼されているFSC認証を受けた森林を優先する、また違法伐採を行っている企業やプロジェクトに対しては融資を行わない、としています。

5) 先住民コミュニティに潜在的に悪影響を与えるようなプロジェクトへの融資を避け、仮にそれが避けられないとしても最小限にとどめ、影響を緩和するための査定を行うとしています。


この方針の発表を受けて、「メガバンクがヒステリックな環境保護ロビイストに屈服した」とか、「環境NGO団体がメガバンクに近づきすぎて本来の価値を見失ってしまう」、といった様々な反応[*4]が出ています。設定されて1年が過ぎた赤道原則の効果が余り上がっていない今、他の金融機関にも影響力をもつメガバンクのJPモルガン・チェースがこういった方針を出したことは、賛成派、反対派の両方にとって大きな問題提議となっています。

■ ソーシャル・ファンド
JPMorgan Chase Environmental Policy Triggers Tipping Point for US Bank Sustainability April 29, 2005


[*1] 関連ニュース
インドネシアの違法伐採活動をしている企業への融資を巡り、シティバンクグループとJPモルガン・チェースの環境への方針が比較・批判された
Comparing Citigroup and JP Morgan Chase Policies: Which Stems Illegal Logging in Indonesia? March 08, 2005

[*2] 関連ニュース
バンクオブアメリカが制定した環境方針が、気候変動に対してよい実践となることについての記載
New Bank of America Policy Sets Best Practice on Climate Change in US Bank Sector May 26, 2004

[*3] 4つのビジネスと経済発展分野の一つとして、金融業界が取り上げられている。
Business & Economic Development:Financial Sector Reportより By AccountAbility + BSR (Business for Social Responsibility) assisted by Brody・Weiser・Burns
(PDF)

[*4] 関連ニュース
JPモルガン・チェースが環境方針を発表してから繰り広げられている議論--金融機関には何の利益もない?--について
JP Morgan's green lending promise: a point of no return for financial institutions?

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