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[わかりにくい日本の報告書]
世界の企業が発行するCSR報告書をランク付けした「グローバル・リポーターズ2004」に、松下電器グループ(34位)、大和証券(39位)、ソニー(45位)、イトーヨーカドー(47位)がランクインしました。環境新聞では、調査を行った英国のシンクタンク、サステナビリティー社[*1]のジョン・エルキントン会長のインタビューを掲載しています。エルキントン氏は経済、環境、社会のTBL(トリプル・ボトム・ライン)の提唱者でもあります。

同氏によると、日本企業は社会性よりも環境においての取り組みが進んでいることは評価できるものの、企業の経済活動の国内外での影響力の大きさを考えると、社会面での取り組みが遅れていると指摘しています。

もちろん、日本企業が完全に出遅れているわけではなく、今回ランクインした企業のCSR報告書の内容や、その他国際的な業種、業態の企業は、市場において積極的な取り組みを行っているところも多いそうです。しかし、サステナビリティの分野についてのみ言えば、世界の中で日本企業の名前を聞くことは少ないようです。

CSR報告書に関しても、内容は改善する一方で、記載された事業活動における取り組みの分析には理解がしづらいものもあると言います。特に、環境分野と金融分野の取り組みの関係性への理解が難しいとしています。また、環境会計を使って解説する報告書のなかには方向性が間違っている事例も見られるとも述べています。


[TBL(トリプル・ボトム・ライン)の発展のために]
同氏はまた、TBLを発展させるためのポイントも解説しています。TBLの発展には、国際展開や企業統治のうえでも必要とされる、サプライチェーンマネジメント(SCM)の観点から考える必要があり、経済、環境、社会の各課題も、それぞれ経営方針や企業統治などど結びつけて考える必要があるそうです。

同氏は、ISOなどが進めている規格化については「私は規格というものが嫌いだ」と明言し、規格化が市場やビジネスの場での選択肢を狭め、柔軟性を失ってしまうと懸念しています。また、全体的な取り組みの指導者となるのは、政府でなく先進的な企業であるべきだと主張しています。

日本企業は今後は、特に遅れている社会面をSCMの観点から、経営方針や企業統治に結びつけていくことが重要であるといえます。


「取り組みの主導権は企業にあるべき」と主張するエルキントン氏が拠点を置く欧州では、日本や米国と違い、持続可能な社会の実現へ向けて政府主導で活動してきた背景があります。この企業と政府、そして積極的に両者と関わろうとするNGOの存在が、バランス良く機能することこそが持続可能な社会を実現させていくカギなのかもしれません。

■環境新聞 2005年5月25日付
「CSRの方向性 社会面でもっと積極的に」


[*1] サステナビリティー社
英国、ロンドンを拠点とするシンクタンク。企業戦略コンサルテーションも行っている。専門範囲は企業責任(corporate responsibility)や持続可能な発展(sustainability development)に関する分野。市場リスク管理の分野でもアドバイスを行っている。同社ホームページでは、関連企業名(クライアントやプロジェクト参加など)も一部見ることができる。コカ・コーラ、マイクロソフト、ナイキなど、世界的企業ばかりだが、日本企業ではキャノン、トヨタ・ヨーロッパなどがある。

グローバル・リポーターズ2004」(日本語版)

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