« 日本のCSR報告書を、TBL提唱者、ジョン・エルキントン氏が斬る | トップページ | 日本の持続可能性と個人の持続可能性/今あるモノに感謝すること »

エクソンモービル社が、環境NGOから厳しい批判を受けています。この動きと連動して、株主提案に賛成する株主が増えているという報告が、複数のニュースサイト[*1]で挙げられています。同社が、環境配慮をすることへの賛同者が着実に増えているという明るい展望もありますが、一方で、企業にとって都合の悪い株主からの提案が、いつの間にか葬り去られてしまうという非民主的な事態も起こっています。コーポレート・ガバナンスや株主提案の権威、R・G・モンクス[*2]氏が批判しているポイントを踏まえながら、エクソンモービル社のケースについて、まとめてみます。

[エクソンモービルと環境対策-多くの批判]
同業他社のシェルやBPの環境面での取り組みに較べると、充分とはいえないエクソンモービル社の取り組み活動に対して、環境NGO団体からは現在、多くの批判が寄せられています。FoE(Friends of Earth フレンズオブアース)の2つの調査[*3]では、1882から2002年の120年間にエクソンモービル社が温室効果ガスの総発生量の約5%分に関与していることや、気温上昇及び海面上昇の原因となっている要素総量に、同社が占める割合などについて指摘しています。また、2002年にグリーンピース・インターナショナルが発行した「エクソンモービル―不正工作の10年」[*4]では、世界中で同社が行った、気候変動への取り組み中断のための31の不正工作例を挙げ、批判しています。

[株主提案の議決]
このような外部からの圧力と呼応するように、環境面での課題に対して、エクソンモービル社の株主は着実に反応しているといえます。

昨年、同社は「気候変動への対処」という提案で、これまで環境に関る提案としては記録的な22.2%の賛成票を得ました。今年は「京都議定書の遵守」という項目で、28.4%まで賛同者が増えています。また、CBIS(SRIファンドのクリスチャンブラザー投資サービス)による気候変動への科学的報告の要求も、昨年の8.8%から10.3%に上昇しています。社会面では、フォーチューン50に入っている企業で唯一、労働機会均等方針を明文化していない同社に対し、7年越しで行われている「労働の機会均等方針の改正」要求が、昨年の28.9%から29.5%へと微増しています。


2005年度のエクソンモービル社株主総会における提案テーマは以下の通りです。

               賛成    反対

政治献金           7.2%   92.8%

取締役報酬          5.4%   94.6%

外部取締役に求める石油業界に関する知識・経験
                4.1%    95.9%

安全衛生報告         7.6%   92.4%
※特に人権面での雇用条件やコミュニティの改革など

労働の機会均等方針の改正   29.5%  70.5%
※特に性差別

生物多様性の保護報告      8.1%   91.9%

気候変動に対する科学的報告  10.3%   89.7%
※IPCCとの比較など

京都議定書の遵守に関する報告  28.4%  71.6%

(SUMMARY OF 2005 PROXY PROPOSAL VOTES[*5]より)


[株主提案はどのように反映されるのか]
環境面では明るい兆しも見えますが、モンクス氏は「株主民主主義の死」と題する追悼文を書き、昨年27%の支持を得ていた株主提案が今年の株主総会召集通知書から削り取られてしまったことについて問題提起しています。

その提案とは「取締役会議長はCEOが兼ねるのではなく独立取締役であるべき」というもので、コーポレート・ガバナンスに関連する提案として極めて妥当で、他企業でも提案されている議題でした。それにも関わらず、エクソンモービル社が通知書に株主提案として掲載しないことを、SEC(米証券取引委員会)は明確な理由もなしに認めてしまいました。

加えて、今年は7つの株主提案の原文が株主総会召集通知書に掲載されませんでした。本来、提案は原文を掲載し、株主が議決権行使をする際の判断材料とすべきなのですが、今年の通知書では提案した株主の名称を記載した後、その株主提案に対する支持論拠と反対根拠が記載されただけでした。

近年、株主提案が「株主民主主義」の実現方法として期待されていますが、現実的には巨大企業の情報操作に類する資料作成や、行政との密接な連動によって、株主提案を民主的に処理するシステムそのものに歪みや不完全さがあると指摘されています。

■ ソーシャル・ファンド
The Ghost of a Shareholder Resolution Haunts ExxonMobil Annual Meeting May 26, 2005


[*1] 複数のニュースサイト
主に、エクソンモービルの環境への配慮を求める、株主提案の支持率が高まっていることを取り上げている

●CSRwire
Press release from: CERES, ExxonMobil Investors Give Record High Support to Climate Change Resolution

●Environmental-finance
Investors push ExxonMobil on climate change

● WBCSD
ExxonMobil Latest Oil & Gas Firm to Face the Music on Climate Change

[*2] R.G.モンクス
R.G.モンクスの情報発信サイト:コーポレートガバナンスの権威として、株主提案の先駆者として、影響力のある情報発信を行っている。代表著書に「Corporate Governance 2nd edition」「The New Global Investors」など

[*3] FoEの調査論文:温室効果ガスの総発生量の約5%分をエクソンモービルが占めていることを調査したレポートと、気温上昇及び海面上昇の原因となっている要素の総量ごとに、同社の影響度合いを調査したレポート
温室効果ガスについて(PDF)
環境への影響について(PDF)

[*4] グリーンピースインターナショナルによるエクソンモービル糾弾報告書(日本語訳)(PDF)

[*5] 2005年度株主提案の結果(PDF)

コメントを投稿

※ブログの管理者が公開を承認するまでコメントが反映されない場合がありますので、ご了承ください。

このページのトップへ