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英国のチャールズ皇太子を総裁とするビジネス・イン・ザ・コミュニティのマーロン・べーカー氏はエシカル・コーポレーションのウェブサイトで公開されたコラムで、「CSR報告書(以下報告書)には革命が必要だ」と主張しました。べーカー氏によると、報告書制作担当者は、開示する情報の真価を問う間もなく制作に追われ、報告書に価値を生みだすことができずにいるといいます。

[万国共通? 報告書制作者の悩み]

報告書の原型を築いてきたのは、CSRリーディングカンパニーといわれる欧州の企業です。その企業の実務担当者の間で、ある変化が起こっています。それは飽和状態が生みだす感覚に似たものといえます。報告書担当者たちは、毎年絶え間なく報告書を作成する自身たちの姿を、ハムスターが車輪を走る姿にたとえています。そして、データ集めに追われ、革新策を練る間もない現状に「うんざりした」とささやいているのです。

この「うんざりした」状態の理由として、パフォーマンスの評価方法が企業間で統一されていないという公然の課題が挙げられます。さらに、報告書自体が目に見える価値を生んでいないことも大きな問題です。制作された報告書は、現状ではほんの少数の制作側の人々に知られるだけであり、本当に読んでほしい人々、つまりステークホルダーには、ほとんど読まれていないのです。

報告書が価値を生むためには、ニーズに合致した情報を早く、そして常に改善しながら提供できることが必要となりますが、「読まれていない」という現状ではそれすらも難しいことです。このような状況に対し、べーカー氏は、「企業はいつかコミュニケーションの基本的な原則を日常的に無視している報告プロセスに疑問を抱き始めるだろう」と述べています。どんな企業でも、10~20年経っても誰にも読まれない報告書のために50万ドル(約5千万円)も費やすわけがないからです。


[今まさに動き始めている革命]

このような状況の中、まさに革命が起ころうとしています。新たな潮流の原動力となっているのは報告書のライターです。彼らは、これまでの報告書と同じ素材を使って、複雑なステークホルダーのニーズに合った情報を提供できる方法を探っています。今最も注目されているのは「マガジンタイプ」の報告書です。例えば、セントリカはシンプルに作った本体の報告書に加え、副読本として従業員用に特別に編集したものを制作しています。今後、このような方法がどの程度の効果を生むのかが期待されています。

その他、世界統一規格を作ることで報告活動の負荷を軽減させ、読者も他社比較などをしやすいものにする動きがあります。GRIガイドラインの第3版となる改訂です。GRIは、報告情報の均一化を通して本当の価値を表現するための方法を模索しています。すでに南アフリカ・ストック・エクスチェンジ(JSE)でこのガイドラインに沿った報告書の発行が要求されていますが、ガイドラインが世界的な基準になるか否かはこの改訂にかかっています。そして、これが非財務報告書が世界基準になり得る最後のチャンスだともべーカー氏は述べています。


[CSR報告書に求められる挑戦とは]

今後のCSR報告書に最も大切なのは、報告書のターゲットを明確にすることです。そして、そのターゲットと関係のあるデータを選択することです。さらに、開示したデータを企業のパフォーマンス改善に直接役立たせる必要があります。そうすることで、報告書制作を合理的に行うことができるのです。加えて、報告書制作の裏側を把握し、第三者として批評できるグループの存在が必要です。このグループがステークホルダーに真実を語ることで初めて、CSR報告書の制作費が本当の意味で価値を持ち始めるのです。


日本の報告書制作の現場においても欧州の企業が抱える問題に近いものがあるのではないでしょうか。べーカー氏の主張から、欧州の報告書制作担当者が、CSR報告書に投資した金額以上の価値を生みだすための打開策を積極的に模索し始めている姿を垣間見ることができます。日本でも同様の変化が少しずつ生まれ初めていますが、そのスピードには差があると言えます。この差は、第三者としてステークホルダーに真実を語ることができるグループ、例えばNGO/NPOの存在の多寡に関連しているのかもしれません。

■エシカル・コーポレーション
New Study Examines Link CSR reporting faces its next challenge

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