モノづくりには、多くの人間が関わっています。 報告書の制作でも、企業の担当者の皆様をはじめ、さまざまな部署の方が関わっていることと思います。また、社外のスタッフや、プランナー、編集者、デザイナー、カメラマン、ライター、イラストレーターを含めると、制作に携わる人数はとても多いものになります。
白紙の状態から一つの報告書を作り上げていく過程で、デザイナーの役割は非常に大きいと私は考えています。デザイナーの考え方やセンスによって、全く同じ材料から全く異なるデザインが生まれます。そこが面白いところでもあります。
そんなデザイナーがCSR報告書をデザインする際に、どんなことを考えているのか、弊社のデザイナーK氏に聞いてみました。
Q:報告書は、他のツールとどう違うのでしょうか
A:CSR報告書は、企業が存在するために生じる、さまざまなことをステークホルダーにコミュニケートするための一つの接点です。しかし、広告とは違い、具体的な企業活動内容を中心とした企業の社会的責任を伝えることが本義の媒体です。すなわち、媒体内容は文章を中心としたものになっているのが、これまでの報告書であり、他の媒体との違いと言えるのではないでしょうか。イメージだけではなく、書かれている内容も重要になってくるのが、CSR報告書です。
Q:CSR報告書のデザインをどのように捉えているのでしょうか。
A:デザインの考え方そのものは、他ツールとさほど変わりません。上記の媒体特性を理解した上で、企業間のすみ分けや訴求力、浸透力を配慮していかなければいけません。コミュニケーションすることに変わりはない訳ですから。
私は日本人の国民性の一つに「流れ」があると思います。流れにあるものに、引きつけられたり流されやすい民族だと考えています。それが、海外と日本の報告書における土壌の根本的な違いに繋がっているのではないでしょうか? そう考えたとき、社会的責任を市民にコミュニケートする場合には、しっかりとした誘導が必要です。
日本人の国民性を配慮した場合、報告書の用途に合わせてこの部分の微妙なさじ加減が必要になるのだと思います。
CSR報告書は、本来の目的である活動報告と同時に、訴求・浸透しやすいようなデザインの工夫が必要だ、ということなのですね。CSR報告書も、広報やPR誌などの他ツールも、実は根本は同じ、コミュニケーション・ツールなのですね。