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1冊のサステナビリティ報告書に、NGOや機関投資家のさまざまな関心事を適切に掲載することは、もしかしたら不可能なのかもしれない、という懸念が、ロンドンのサステナビリティ報告書に関連する人々の間で広まっているようです。Environmental-Finance.comが格付け専門家、報告書制作コンサルタント、NGOなどの声を紹介しています。

先日、GRIがロンドンで開催したGRI改定のための会議において、世界的な格付け機関であるS&P(スタンダード&プアーズ)の専門家、ジョージ・ダラス氏は、ほとんどのサステナビリティ報告書は、投資家のためというより、むしろ、市民社会のために書かれていると述べています。彼はBPやハイネケンを例に出し、これらの報告書は、ある側面においては卓越しているかもしれませんが、経済アナリストの注目を得るには長すぎるし、逆に、投資家が最も関心を抱く点については十分に掲載されていません。経済界は明確なメッセージを持つ報告書を必要としているのです」と述べ、サステナビリティ報告書は、より広範囲のステークホルダーの情報ニーズを満たすものであるべきだと主張してます。

同様に、報告書制作コンサルタントであるコンテクスト社のロジャー・コー氏は、サステナビリティ報告書は「全ての人のための全ての情報」を含むべきなのだろうか、それとも「異なったステークホルダー・グループごとのニーズを満たした、より的を絞ったコミュニケーションツール」として必要なのだろうか、という疑問を投げかけました。

一方、NGOの企業責任連合(Corporate Responsibility Coalition)のデボラ・ドーン氏は、NGOの立場から、異なった見解を示しています。彼女は、「実は、多くのNGOは経済データだけでなく、企業の環境や社会的側面におけるパフォーマンスについて興味を持っています。そのため、ステークホルダーが異なった関心を持つということについては注意を払うべきです」と述べています。そして、そもそもGRIガイドラインは投資ツールのために作られたものではなく、「持続可能な発展を導くためのツール」であったはずであり、それを忘れてはいけない、とコメントしています。

サステナビリティ報告書で、ステークホルダーのニーズを満たした情報開示を行なうためにはどうすればよいのか、という議論の解決策のひとつとして、ウェブを活用した情報開示があります。しかし、これは紙媒体と異なり、半永久的な記録として扱うことができないという点で課題が残るとされています。

現在、GRIは、2002年版のGRIガイドラインの改定作業を進めていますが、今回のロンドンでの会議の目的も、この改訂版(G3)の草案について議論を交わすために行われました。会議の参加者のほとんどは、ガイドラインで開示が求められる指標数を最小限に留める試みや、報告書の比較可能性の向上への努力に賛成していますが、一方で、新しいガイドラインに一貫して登場する「マテリアリティ」の定義について、疑問の声が多いのも確かなようです。懸念の声の中には、マテリアリティという言葉を適用することで、より広義の持続可能性への視点が欠けてしまうのでは、という声や、あるステークホルダーにはマテリアリティが満たされていても、他のステークホルダーも同様かというと必ずしもそうではないといった声が挙がったようです。

日本国内でも先日G3の草案に関する説明会が行われました。G3草案へのパブリックコメントは3月まで受け付けられています。GRIガイドラインの活用者として、もしくは、サステナビリティ報告書の利用者として、更には、持続可能な地球社会を形成する一人として、こういった機会に参加することの意義は大きいといえます。

■Environmental Finance
“Fractured” approach suggested for sustainability reports, 09Feb2006

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