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イギリスのEthical Corporationが主催した国際会議、「How to manage CSR in Asia」が、2006年2月22-23日の2日間にわたって香港で開催されました。1日目は「アジアのコーポレート・ガバナンス」や「公共機関と民間のパートナーシップとアジアでのCSR」について、2日目は「ブランド、レピュテーション(名声)、CSR」や「組織的変革におけるCSR」といったテーマについて議論が交わされました。

香港のエクセルシオールホテルにおいて、ゲスト、ボランティアスタッフ、参加者、総勢約120人で、行われた同会議は、朝9時から17時にわたり、ガバナンス、NGO/政府との協働、レポーティングなど、アジアでの幅広いCSRマネジメントを主なテーマとして開催されました。

[プログラム構成]

同会議は、両日とも午前中の簡単な基調講演のあと、全体ディスカッションが2度、そして午後は3つのテーマに分かれた個別セッションが2度開催されるものでした。

午前中の全体ディスカッションでは、質問者からの的確な質問によってテーマとなる議論が整理されていくこともあるほど、活発な質疑応答が行われました。午後の個別セッションは、その日の基調講演や全体ディスカッションに関係するテーマについて、幅広くカバーできるテーマ設定がされており、参加者は自由に選択することが可能でした。どの会議もオフレコを原則としており、ゲスト、司会者、参加者が積極的に議論を深めることができました。

また、参加者やゲストとのネットワーキングの機会創出のため、さまざまな機会が用意されていました。例えば、全体ディスカッションと個別セッションの間にブレイクタイムが用意されていたり、バイキング形式のランチで参加者は自由に会話を楽しめることができたり、夜にはカクテルパーティなどの場が設けられていました。


[企業統治と外部機関との協働(1日目)]

1日目は、「アジアでのコーポレートガバナンスの現状」「企業がどのようにNGOや政府と協働でCSR活動を進めていけるか」といった、アジア企業やアジアでビジネス展開する企業がおかれている環境や周辺状況に関するテーマを中心に議論が進められました。

全体ディスカッションでのテーマの一つである、「アジアでのNGO活動」に関しては、多くの参加NGO代表者から、いかにキャパシティ・ビルディング(組織的能力の開発・向上)[*1]を向上させるかにいて質問が寄せられました。これに対し、パネラーとして参加していた、WWF CEOのエリック・ボム氏[*2]から下記のような的確な回答がされていました。


<キャパシティ・ビルディング向上に必要な要素>

1)ファンドレイジングに関しては、CostではなくInvestmentであることを企業に伝えること

2)人材確保には、民間のHRフレームワーク(戦略的人事制度)を導入し、報酬やトレーニングなどについても考慮する必要があること

3)民間での実務経験が豊富で、NGO活動との架け橋となれる代表者の存在が重要であること


午後は、「ステークホルダー・エンゲイジメント」と「CSR活動の評価」のセッションに参加。「ステークホルダー・エンゲイジメント」のセッションでは、参加者からの「ステークホルダーとは、顧客は含まれるのでしょうか?」という質問をうけて、外部ステークホルダーとNGOとの関係について議論が進みました。特に、「日本ではNGOの影響力が弱い」という議論に対し、「欧米では十分に理解されていない」というコメントもあり、日本の現状を伝えていく必要があることが露呈されました。

欧米では、企業よりもNGOが発信する情報を信用する、という考え方が中心のステークホルダー・エンゲイジメントですが、それをそのまま日本に当てはめることの難しさが改めて認識されました。


「企業の具体的なCSR活動と外部機関の果たす役割(2日目)」

二日目は、マイクロソフトがケーススタディ[*3]を発表した後、「ブランドとレピュテーション(名声)、CSR活動」や「企業変革におけるCSR活動」について、企業サイドからの具体的な議論が展開されました。

全体ディスカッションの際は、会場から寄せられた「企業、NGO、政府などにとって、CSRのゴールは一体何か?」という質問を巡り、意見交換がされました。

その答えとして、ChinaCSR.com[*4]のスティーブン・スワンカート氏から「それは、パブリック・リレーションシップを維持していくことであり、経済的な面はもちろん、サステナブルな活動を展開できることである」というコメントがあり、会場全体がみなうなずいているようでした。

午後は、「レポーティング・プロセス」や「リポーティングとコミュニケーション」といった、報告書制作に関連するセッションに参加。

GRI改訂にともなう背景や方向性や、アディダスシェルといったグローバル企業における具体的な報告書政策の課題について議論となりました。また、GRI改訂の今後の方向性として、妥当性(Relevance)や重要性(Materiality)を重視し、目的や読者に応じたレポート作りが奨励されることが、GRI[*5]Directorのリンダ・ミルナー氏から説明がありました。GRI改訂に関ってきた海野みずえ氏[*6]も積極的に議論に参加し、インドの複合企業Tata Group[*7]や香港大手の電力会社CLP[*8]など、欧米以外の企業からもGRI改訂の方針について、理解を得ていました。

今回の国際会議を通して、「アジアにおけるCSR」といった際に、日本からの情報発信が余りにも少ないこと、また、「英語」という共通言語を使っていても、欧米とアジアでは認識が異なる場合がることがわかりました。そのため、日本企業やNGOからの積極的な参加と発言が必要とされるといえます。しかし、一方で、「世界の持続可能な社会づくり」を目指すビジョンは、企業、NGO、行政、国・地域といった垣根を越えて共有されつつあります。持続可能な社会に近づくためには、完璧な解答を求めるのではなく、トライ・アンド・エラーを繰り返しながら、着実に活動を広げていくことが重要といえます。

■国際会議「How to manage CSR in Asia」の情報
How to manage corporate responsibility in Asia
February22-23, 2006


[*1] キャパシティ・ビルデング
資金調達、人材育成などを通じて、活動を実行していく為の組織的な能力を大きくしていくこと。

参考:日本でのサポート例(世界銀行東京事務局)

[*2] WWF
香港でのディズニーとのコラボレーションについても言及

[*3] マイクロソフト
Corporate Citizenship Matrixでの活動評価についても言及

[*4] ChinaCSR.com
約10年に渡って中国のCSR関係のニュースを配信しているメディア

[*5] GRI G3について
日本語サイトはこちら

[*6] 海野みずえ氏
日本でのGRI改訂版への経緯については、アイソス3月号に投稿された海野さんの原稿がある

[*7] Tata group
インドをベースとし、世界中に22万人の従業員を持つコングロマリット企業

[*8] CLP international
中国、インド、オーストラリアなどアジア地域を中心に発電と電力供給を行っているグローバル企業

・関連ニュース
CLPは、グリーンピースから抗議行動の対象になったことがある
NGOが香港大手企業CLPに抗議ーClimate Criminal
CSRニュース2005年12月05日

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