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CSR報告書は、何を伝えるためのものでしょうか。「企業の社会的責任に関する情報を開示するための」報告書は、何のために発行されているのでしょうか。

それは「企業の持続可能性を示すためのものである」と、ソーシャル・ファンドは語っています。自社の持続性について説得力をもって説くために「サステナビリティの文脈(sustainable context)」で語ることは不可欠であるようです。


2006年は、CSR報告書分野において大きな動きがあった年です。一つはグローバル・レポーターズ第三版の発行(以下G3)、そしてグローバル・レポーターズの発表です。70年代にトリプル・ボトム・ラインを提唱したジョン・エルキントン氏が率いるサステナビリティ社は、持続可能性の分野を長年リードしてきた組織です。そのサステナビリティ社が、世界平和の象徴である国連開発計画(UNEP)と世界経済界の代表選手であるスタンダード&プアーズと共同で行っているグローバル・レポーターズの存在は年々大きくなっています。日本企業もトップ50位に5社が入るなどしており、その国内での認知度は前回の2004年時と比べると非常に高くなっているといえます。

このような状況の中、ソーシャル・ファンドは下記のような警告ともいえるメッセージを発しています。


   『CSR報告書は前進したが必ずしも真の持続可能性に貢献しているとはいえない』

   『サステナビリティ社の持続可能なパフォーマンスに関する情報開示の
      評価は、企業の持続可能なパフォーマンスを評価しているものではない』


みなさんは、このメッセージをどのように受け止めるのでしょうか。



[グローバル・レポーターズ2006の結果と特徴]


まず、今回発表されたグローバル・レポーターズ2006についてご紹介します。グローバル・レポーターズ2006のトップ10社は、過去最高のスコアを得たBT、CFS(コーポラティブ・フィナンシャル・サービス)、BP、アングロ・プラチナ、ラボバンク、ユニリーバ、MTR、ボーダフォン、シェル、ナイキ、ノボノルディスクでした。今回の結果に見られる大きな傾向として、

1.BTがハイスコアを得たこと、
2.南アフリカと香港という新地域からの入賞企業があったこと、
があります。


評価は、ガバナンスと戦略、マネジメント、パフォーマンスに関する表現、アクセシビリティと第三者認証/保証(注:レビューや意見ではない)という4側面から行われています。今回の評価手法の変更点として

1.G3との相補関係があることを位置づけたこと、
2.持続可能性に関する影響とパフォーマンスに配慮した事業活動の重視、
が紹介されています。



[サステナビリティ社の努力と報告書評価の限界]



サステナビリティ社は近年、特に上記2.の「事業活動との関連」について、CSR報告書の制作活動と経済活動を結びつける活動に特に力を注いできました。この活動は、企業の役員から、主流の機関投資家、投資アナリストやスタンダード&プアーズのような格付け機関まで、幅広い経済界の主要アクターに対して持続可能性に関する認識を深め、ひいては持続可能性と経済活動との関連性を強めることに貢献してきました。


こうした大きな成果の一方で、サステナビリティ社はCSR報告書の評価に関する、ある種の限界についても正直に言及しています。


「どれだけ報告書のマトリックスが素晴らしく、報告内容が正確であっても、報告書で紹介される持続可能性に関する目標は、企業が持続可能な発展に関するトリプル・ボトム・ラインを包括した、真に前向きな貢献をしていることを保証するものではない」と、CSR報告書が本来持つ機能の限界についての認識について触ています。



[事故を起こしたPBはなぜ高評価なのか]



サステナビリティ社のCSR報告書評価に関する懸念を象徴するケースとして、BPがあります。BPは、環境や安全問題に関連する事故を起こしたにも関わらず、CSR報告書だけでなく持続可能に関するパフォーマンスにおいても高評価を得ているのです。PBが起こした事故とは、2005年3月、BPのテキサスにおける精製所での爆破事故で15人が死亡、170人が重軽傷を負ったというものです。その他にも、2006年3月にもアラスカでのパイプラインの破裂で20万ガロンの石油が流れ出した環境事故を起こしています。


PBのように、大事故を起こした企業も依然として高評価を受け続けることが可能である理由としてサステナビリティ社は、評価対象が企業が直面している課題(問題)について、透明性を持って報告されているか否かというものであるためと説明しています。実際、BPの報告書ではテキサスでの事故に関して大きく焦点が絞られており、開示情報は非常に率直で詳細や、活動結果の測定やその問題への対処や改善へのステップ関する記述がある点が評価されたと説明されています。



[CSR報告書には何が欠けているのか、あるべき姿とは何か]


サステナビリティ社は、CSR報告書が本来持つ機能の限界について触れていますが、打開策はあるのでしょうか。


この疑問に対して、UNEPのエグゼクティブ・ディレクターが述べている自戒がヒントになりそうです。同氏は、「我々はCSR報告書を制作するにあたり、価値の創造(value creation)を強調してきたが、一方で、報告書で紹介される活動を持続可能性への文脈に載せることの重要性も忘れてはならないのだ」と、、「木を見て森を見ず」という状況を打開することの重要性を指摘しています。

同様に、世界温暖化フットプリントを開発したサステナブル・イノベーション・センターのマーク・マクエロニー氏も、CSR報告書での持続可能性の文脈で語られる記述や、報告書の記述内容と事業活動が直接影響を与え合うことは、まさに関連するべきこと(relevance)であるにも関わらず、実際はほとんどの報告書で著しく見られない事柄であると指摘しています。


さらに同氏は「ほとんどのCSR報告書が読者にどれだけ自社の事業活動が持続可能かを説明することができないでいる」と、読者にとっては、持続可能性の文脈での説明をすることなしに企業の持続可能な活動について理解する術(すべ)はない、とCSR報告書を読む側の立場に立って言及しています。




日本企業の間でもCSR報告書をどうやって使っていくか、について積極的に検討され始めています。また、ダイアログなどを通した実際の活動も生まれています。しかし、今回のソーシャル・ファンドが発しているメッセージから学べる視点(日本企業に欠けている視点)、そして忘れてはならない視点は、「自社がどのくらい持続可能な企業であるかを読者に説明・説得すること」であるといえるのではないでしょうか。
※CSR報告書: ここではサステナビリティ/社会・環境など非財務情報開示のための報告書の総称


Sustainability Reporting Improving, But Not Necessarily Contributing to True Sustainability

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