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[BOP議論に大きく貢献:概算データから定量データへ]

C. K. プラハラード氏は、著書『The Fortune at the Bottom of the Pyramid(日本語版では「ネクスト・マーケット」』のなかで、「経済ピラミッドの底辺(BOP:Base of the Economic Pyramid【※1】)」に属する人々が、新たな市場機会を生む顧客であると位置づけ、世界に大きな衝撃を与えました。しかし、BOP市場にまつわる議論は、ビジネス事例研究と、市場規模に関する大まかな概算データをもとに行われているにすぎませんでした。今般、世界銀行グループの国際金融公社(IFC:International Finance Corporation )と世界資源研究所(WRI: World Resource Institute)が発行した調査報告書は、これらの議論の進化やより良い事例を生み出すことに大きく貢献するものといえます。

『The Next Four Billion: Market Size and Business Strategy at the Base of the Pyramid』と題された報告書は、中・低開発途上国における世帯単位の収入・消費を独自に調査・分析したもので、BOPの市場機会を具体性のあるデータではかることを可能にした、初めての報告書であるといわれています。

更に同報告書は、全世界110カ国から収集した収入データと、36カ国の支出データを標準化することで、低所得コミュニティの具体的な姿を映し出し、全世界の「低所得コミュニティ」に関する新しい見方を提供しています。このような定量データに基づいて行われた分析は、国、産業セクターごとのBOP市場の特徴を紹介しています。


[40億人の市場規模を誇るBOP市場]

報告書によると、現在、世界には40億人の低所得消費者が世界人口の過半数を占めています。これは、40億人の購買力や消費者行動に沿った市場を掘り起こすことで、生産力向上、収入向上、市場やグローバル経済への参加を促進させるという、莫大な機会を生むことを示しています。

「BOP」に該当する人口は、貧困層のなかの貧困層であり、主に年間3,000米ドル以下の収入の世帯が対象とされています。これらの層の人々は銀行口座を持たず、現代の金融サービスにアクセスできず、清潔な飲み水を入手できず、電気も基礎的な健康管理へのアクセスすできない人々を指します。

逆に、低開発国の人々でもBOPの対象とならないのは、裕福で中所得層のグループに位置づけられ人々です。これらの人々は、一人当たりの年収3,000~20,000米ドル、グローバル市場においては12.5兆米ドルを占める人々となります。主に都市に住み、経済活動への参加機会がより多い人々を指します。


[BOP市場を映し出すデータ]

下記がロイターのニュースで紹介されているデータの抜粋です。これによると、アジア・中東地域が、他地域と比べるとBOP人口、BOP市場規模ともにはるかに大きいことがわかります。また、ラテン・アメリカは、市場規模は2番目に大きいですが、地域内における購買力は28%と最も小さくなっています。アフリカは、市場規模は若干小さいですが、逆に購買力はアジア・東欧以外の3地域のなかで最も大きくなっています。


<地域別>

              ■BOP人口       ■BOP市場規模(購買力)

□アジア・中東 : 28.6億 (2.86 bil)      / 3.47兆米ドル($3.47 tril)

■東欧     : 2億5,400万人 (254 mil)  / 4,580億米ドル ($458 bil)
             →同地域の64%         →同地域の36%
        
■ラテン・アメリカ : 3,600万人(360 mil)    / 5,090億米ドル ($509 bil)
             →同地域の70%          →同地域の28%
        
■アフリカ    : (大多数の人口が該当) / 4,290億米ドル($429 bil)
                                 →同地域の71%

<産業別>

BOP市場において最大の規模を誇ると想定されるのが、食品産業です。

■水資源産業     : 200億米ドル ($ 20 bil)
■テクノロジー産業  : 510億米ドル ($ 51 bil)
■ヘルスケア産業    :1,580億米ドル ($158 bil)
■エネルギー産業    :4,330億米ドル ($433 bil)
□食品産業        :2.89兆米ドル ($2.89 tri)



[BOP世帯の支出の内訳]

報告書では、各世帯の支出の内訳についても紹介しています。これによると、BOP世帯の半数以上の支出が、健康管理を支える製薬産業に払われているとされています。更に、各世帯の収入が上がるほど、食品産業への支出は減少し、運輸産業や電話やインターネットなど通信産業への支出が急増します。

また、料理に使われる燃料については、東欧以外の全ての開発途上国地域において、「まき(薪)」が主要な調理燃料であり、プロパンやその他の現代燃料は、高収入セクターや都市の人々に占められていることもわかりました。

2007年5月23日、世界銀行東京事務所において、同報告書の出版記念セミナーがあり、筆者も参加しました。世界銀行研究所の企業・競争力・開発プログラム長である、ジョルジャ・ペトコスキー(Djordjija Petkoski)氏が、一連のBOP市場を新たなビジネスとして捉える動きには、「新たなコンペティターの出現」というメッセージも含まれていると指摘されていたのが印象的でした。つまり、BRICsなど新興国は、BOP層の人々の物理的状況や心理状況を日本よりも熟知しているということです。これらの新たなライバルの出現が、今後の市場動向、企業の命運を左右するのかもしれない。このような状況において日本企業は、どのような立ち位置を示すべきか。新たな機会の浮上とともに、新たな課題も浮上することは世の常であり、見逃せない事実であるといえます。(関 智恵)


【※1】BOPの概念はC. K. プラハラード氏が世界に始めて世界に提唱し、衝撃を生んだ。同氏は当初Bottomとされていたが、今回の『The Next4Billion』の発行を機にBaseと言い換えられている。


Reuters
WASHINGTON, Tue Mar 20, 2007
World's poor represent $5 trillion market: report

・世界資源研究所(WRI:World Resource Institute)のホームページで詳しく紹介されています。
Market Size and Business Strategy at the Base of the Pyramid

・レポートの紹介と無料ダウンロード(ハードコピーは30$で入手できます)
The Next 4 Billion: Market Size and Business Strategy at the Base of the Pyramid


●関連ニュース

・市場成長へ新顧客を巻き込む
 Inclusion, the way to market growth

・グローバルのBOP市場:フォーチュンは1.2兆米ドル
 Bottom of the pyramid market stands at $1.2 trillion

・インドのBOP市場:フォーチュンは54兆ルピー
 The fortune at the bottom of??the Indian pyramid: Rs54 trillion


●海外の大手企業の動き

・インテル新興市場に10億ドルの投資を決定
  ▼イニシアティブ名:「World Ahead program」
 Intel will provide equipment under the program as well as teacher training.

・IBM: アフリカ経済開発の改革を模索
  ▼イニシアティブ名:「ThinkPlace Challenge」/「Global Innovation Outlook (GIO)」/「World Development Initiative (WDI)」
 ※フィランソロピーではなく、新たなビジネス・モデルの模索と定義。
 IBM Launches Global Collaboration Efforts to Spur Economic Development in Africa

・IBMが年間1億米ドルを費やし環境情報センターを設立
  ▼イニシアティブ名:「 Project Big Green」
 ※全世界レベルでの環境情報の共有により、エネルギー効率、コスト削減などより閑居に配慮した事業活動を推進。
 http://www.greenbiz.com/news/news_third.cfm?NewsID=35045


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