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「グリーン・ウォッシュ」とは、消費者が企業の環境活動があたかもビジネス活動の一環であったり特定の商品サービスに利益をもたらすと誤解を生じさせるような企業活動を指します。近年英国では、このようなグリーン・ウォッシュに対する消費者からの苦情が従来の4倍に膨れ上がっていると報告されています。

正しくPRが行われなければ、消費者のエコ商品離れや環境負荷削減のための産業界全体の動きの妨げになりかねません。英コンサルタントのFuterraが開発した「グリーン・ウォッシュ・ガイド」から、どのような表現に配慮すべきかいくつかヒントをご紹介します。




[「責任ある企業」というコピーが生む不信感]


企業が打ち出す環境広告が逆に不信感を与えてしまうこともあります。

例えば、環境NGOのFriends of the Earth (FoE)は、シェルが打ち出している環境広告(煙突から出る煙を花に置き換えたイメージ図:こちら)に対し「石油を扱う企業が及ぼす環境への影響を誤って伝えている」と批判しています。

また、グリーンピースは、ユニリーバが扱うパーム油に対し、同社が原料調達する取引先はインドネシアの熱帯雨林破壊を招いている企業だが、一方で、「責任ある企業(responsible company)」として振舞うための活動にも投資することで、問題をうやむやにしていると、ユニリーバの活動が「グリーン・ウォッシュ」であるとグリーンピースは指摘しています。


[増える環境広告への苦情]

近年、このような「グリーン・ウォッシュ」への批判は特に大手企業に対して激増していることが最近の公共広告機構の調査で明らかになっています。

英広告基準審査協会 (Advertising Standards Authority (ASA))が2008年頭に発表した報告によると、2007年に同協会が受け付けた環境関連の苦情は2006年の117件から561件と4倍以上に急増しています。

苦情の主な対象となったキーワードは「カーボン・ニュートラル」「ゼロ・カーボン」「サステナブル」「オーガニック」「100%リサイクル」「greenest car in its class(産業内で最もクリーンな車)」であり、これらに対し、誇大広告である、もしくは、誤解を招きやすいという指摘が多くを占めています。


[グリーン・ウォッシュ・ガイド]

企業のコミュニケーションに関するコンサルテーションを手がける英Futerraは、このような状況に対し、消費者が懐疑的になりすぎるとエコ商品など、持続可能な商品離れに繋がり、さらには環境配慮に従事する産業全体の動向をも妨害しかねないとし、環境をPRする際、企業が注意すべき事柄をまとめたグリーン・ウォッシュ・ガイド (The Greenwash Guide) を発行しました。

同ガイドで提示されている「グリーン・ウォッシュ(であると言われる事例)の10原則」は、企業が商品・サービスの販売時に広告や梱包を通じて「環境」という言葉を使用する際に配慮すべき点が示されています。


<< 『グリーン・ウォッシュ企業』と言われないために避けるべき10つの原則>>


1.柔らかい印象の言葉は避ける
  明瞭な意味を持たない言葉や用語 例)エコ・フレンドリー。

2.環境汚染をしているとし、印象が悪い企業はグリーン商品を売るのを避ける
  例)河川汚染をもたらす工場で生産される持続性の高い電球。

3.暗示的な図は避ける
  証明されていないにもかかわらず環境に良いインパクトを
  暗示するようなイメージ図。
  例)煙突から煙の変わりに花が排出される図。

4.的外れの主張は避ける
  全体的には環境活動を進めていないのに、ごく小規模な環境活動のみを強調する。

5.ドングリの背比べは避ける
  環境活動が大幅に遅れている産業のなかで同業者と比較し、
  「同産業で最高レベル」と主張すること。
  また、その他企業よりも若干環境活動が進んでいることをアピールすること。

6.明らかに論理性に欠ける場合は避ける
  危険な商品をグリーン化したところで、安全にはならない。
  例)エコ・フレンドリーなタバコ。

7.分かりにくい表現は避ける
  科学者だけが確認でき、理解できるようなわけのわからない言葉や情報。

8.空想の友人を主張することは避ける
  例えば、「ラベル」はあたかも第三者からの承認を得られたように見えるが、
  企業が独自に作ったものである場合もある。

9.証拠ゼロは避ける
  もちろん正しいかもしれないが、証拠はどこにあるのか。

10.あからさまなウソは避ける
  完全に偽造された主張やデータ。



「PR」と「リスク」が表裏一体であるとは、まさにこのことですね。もちろん、英国と日本とでは消費者意識は異なりますが、日本でも環境に関する消費者の知識が増え、目が肥えるのは時間の問題でしょう。現状では、環境への意識が高い消費者にとっては、企業や商品評価の際に、また、企業にとっては、CSR報告書や関連ウェブサイトなどのコミュニケーション・ツールの製作段階で気をつけるべき表現として「グリーン・ウォッシュ・ガイド」は参考になるかもしれません。


Why ‘greenwash’ won’t wash with consumers
The Sunday Times (The Times Online)
May 11, 2008

●Ferrea Sustainable Communications
Greenwash Guide



[関 智恵]

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