« 投資家、「気候変動」を金融課題として認識し始める | トップページ | 北京、毎月・最終土曜日を「リサイクル・デー(RRRD)」に指定 »


米国証券取引委員会(Securities and Exchange Commission, 以下SEC)が、ESG情報の開示を義務化させることを検討しています。この背景には、今年上旬から進められてきた、社会的責任フォーラム(SIF)との積極的な協議があるようです。

6月、世界最大の証券取引所グループ NYSE Euronext が、ESG情報の投資家への供給を発表したばかりですが(「世界最大の証券取引所、ESG情報活用を決定」(CSRニュース 2009年06月05日)))、米国でも動きがありました。

その他、ESG情報に関する7月のニュースをまとめました。



今年1月にSIFがオバマ大統領に続き、SEC委員会に嘆願書を出したことがそもそもの発端です。嘆願書の趣旨は、SECが企業に対しESG情報の開示を義務付けることを求めたものでした(嘆願書の内容は こちら でご覧いただけます。最近のESG情報にまつわる動向がよくまとまっています)。


その後、ESC委員会はこの嘆願書に対しいくつか質問事項を提示し、これに対するSIFからの回答を踏まえて7月27日にSEC投資アドバイザー委員会が初めて開催され、ESG情報の扱いに関しSEC内で正式に協議されることになりました。


社会責任投資を推進する投資家団体の多くは、7月に開催されたこのSECの前向きな動きを歓迎し、委員会がその根本目的である、投資家利益の保護のために動き出した兆候だと評価しました。


SEC投資アドバイザー委員会が開催される一週間前の7月21日、社会的責任投資の促進を目指す団体SIFの活動に賛同する50以上のメンバー団体が、SEC委員会委員長を努めるSchapiro氏宛てに企業の環境、社会、ガバナンスに関する情報を報告書として公開の義務付けを求めて提出したものが嘆願書でした。


嘆願書には、「企業のサステナビリティ報告書を求める国際投資家や会計機関からの声が増えている」とし、国連のPRI(責任投資原則)への賛同団体の顕著な増加が紹介されています。PRIが定める原則は、賛同団体に投資分析や意思決定、株主方針にESG情報の組込みこむことや、投資先企業に対するESG情報公開の支援などを求めているためです。


さらに、「現在、我々が直面している世界金融危機は、現存の企業の報告システムが株主を失望させたことを浮き彫りにした。我々は、確固としたなサステナビリティ報告書が金融危機の影響を最小限にとどめることができると信じている」と、ESG情報の公開と経済安定との関係を指摘しています。


ここでSIFが求めている「確固としたサステナビリティ報告」とは、毎年開示される、世界統一基準で、さらに産業別で構成されているサステナビリティ指標をもとに開示された報告書を指しています。


その指標とすべきと説いているのが、GRI(Global Reporting Initiative)が定めるGRIサステナビリティ・ガイドラインです。GRIガイドラインを基礎に報告書を発行する企業は現在も増え続けていますが、S&P500では全体の13%に留まっています。現存する国際基準にあわせるのが最も効率的だという考えの下、GRIガイドラインの活用を推進しているということです。


この嘆願書に対するSECからの質問は主に「ESG情報公開の義務化について、具体的に方法が望ましいとSIFは考えているのか」というものでした。SIFとSECとの協議は、今年1月にSIFがオバマ大統領に対し、投資家の利益を守るためには、ESG情報を掲載した報告書の発行の義務化を最優先事項として実施すべきだという内容を含んだ文書を送付した頃から活発に進められてきました。


今回初めて開催されたSECアドバイザー委員会は、会議終了後にプレスリリース(こちら)を発表しました。そこでは、ESG情報の開示について、以下のように書き表されています――


「投資家は現在、投資決定の前・後にESGに該当するような類似情報を入手しているのか?
 入手しているのだとすれば、ニーズにあった内容なのか?
 そうでなければ、投資家が必要な情報を得るためにはどのような改革が必要なのか?」





「サステナビリティ情報」を投資家の企業評価に活用する動きがこのところ進んでいますが、CDSB等が推進する気候変動情報として温暖化ガスの排出量を主要な指標にする動き(「アニュアル・レポート」 での気候変動データ掲載、CDSBがドラフトを提案(CSRニュース 2009年07月04日))の一方で、今回ご紹介したような、環境・社会・ガバナンス(ESG)情報といった、より広義でバランスの取れた企業評価指標を活用する2つの動きが世界的な動きとして見受けられます。




(※) ESG情報に関する7月の主なニュースは以下をご覧ください。




Socially Responsible Investors Welcome Signs that the SEC is Considering Mandatory ESG Reporting
July 31, 2009
SocialFunds.com






●関連情報

 ・ SEC turnaround sparks sudden look at climate disclosure

 ・  米、「気候変動法案」の下院通過に産業界が警告







<< 7月の ESG/気候変動 に関する情報開示 関連ニュース >>


●積極的に新興市場での投資機会を狙う投資家にとっては、新興国市場でのESH情報の把握は非常に有用となっていますが、EIRISが発表したレポートでは、調査に協力した70%の投資家が情報が不足していると回答しており、そのニーズの高さが伺えます。
Investors Call for Improved ESG Disclosure by Companies in Emerging Markets


●ESG情報の提供を投資家と投資アドバイザー間の受託者責任として組み込むことについても報告されています。
ESG Issues Should be Embedded in Legal Agreements Between Investors and Advisors, Report Finds


●PRI(国連責任投資原則)が、未公開株式向けのガイドラインを発効しました。
PRI Issues Guidance for Responsible Investment in Private Equity


●投資サービスのマーサー・コンサルティングからのデータを元に、PRIが年金基金やファンド・マネージャーの取組み成果をまとめた年次報告書『PRI Report on Progress 2009』を発表。金融危機を向かえ、一層、責任投資へのコミットメントを強めてることが明確になりました。
Responsible Investors Show no Sign of Retreat from Principles in Troubled Times


●投資家、「気候変動」を金融課題として認識し始める
http://www.socialfunds.com/news/article.cgi/2737.html
CSRニュース 8月06日










[関 智恵]

コメントを投稿

※ブログの管理者が公開を承認するまでコメントが反映されない場合がありますので、ご了承ください。

このページのトップへ