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環境NGOのFoE(フレンド・オブ・ジ・アース: Friends of the Earth)は、現在国際的に採用されている、途上国から温暖化ガス排出削減量を購入することで、自社の排出量を相殺する「カーボン・オフセット」について、先進国の大気汚染を促進し、低炭素経済の実現を遅らせる策であると、非難しました。

さらに、現在協議が進んでいる米国の気候変動関連法案(こちら)や、今年12月のコペンハーゲンで開催されるCOP15会議においても「カーボン・オフセット」を組込むべきではないと警告しています。



【空洞化現象を生むカーボン・オフセット】


京都議定書では、温暖化を促進する温暖化ガスの排出量について、先進国が途上国で実施される温暖化ガス排出削減プロジェクトに投資することで、オフセット(相殺)できる仕組みが示されていますが、これを実現するために考案されたのが、CDM(クリーン開発メカニズム)で、2009年3月では既に、4,200件のカーボン・オフセット・プロジェクトが国連のCDM取締役会で承認されています。


国連気候変動枠組み条約(UNFCC)は、CDMは「途上国への環境投資を促進し、参加政府・企業が低コストで排出量削減目標を達成する手助けになる」と定義しています。

つまり、カーボン・オフセットは、途上国の関連プロジェクト(再生可能エネルギー・プロジェクト等)に投資することで、政府や企業が、自ら掲げた温暖化ガス削減目標を実現させるための、資金的手段に過ぎないのです(逆に、先進国内における温暖化ガス削減の取組みは進まず空洞化現象が起こっている)。




【カーボン・オフセットは温暖化ガス削減に寄与したのか? (FoE 調査報告書より)】


では、「カーボンオフセット」を活用することで、世界の温暖化ガス排出量は軽減されたのでしょうか。


今回、FoEが発表した調査報告が出した答えは、「No」でした。むしろ、悲劇的な気候変動から目を背けるという点では、「破滅的な影響」をもたらしていると指摘しています。


『A Dangerous Distraction: Why Offsets Are a Mistake that the US Cannot Afford to Make(危険な混乱――なぜオフセットが米国が犯してはならない間違いなのか) 』 と題された報告書では、「全ての新たなカーボン・オフセットにまつわるプロジェクトは交渉から外されるべきであり、現存するプロジェクトもまた、廃止するべきである」さらに、「米国の気候変動法案やコペンハーゲンの議論においてカーボン・オフセットは削除されるできである」と指摘しています。


カーボン・オフセットが抱える課題について、FoEは上記以外にも下記の点を指摘しています。


・ 温暖化ガスの増加――先進国はオフセットを購入することで、先進国での大気汚染の続行を許されているため、温暖化ガスの排出量はむしろ増加する。


・ インセンティブの低下――緊急な対応が問われている気候変動について、米国を含め先進国が低炭素経済への移行実現のためのインセンティブを下げている。


・ カーボン格差の拡大――カーボン・オフセットは途上国の低炭素開発にはつながらない。むしろそれは、先進国と途上国の1人あたりのカーボン消費格差を広めている。




【では、どうすれば?】


最後に、「では、どうすればよいか」という改善点について、以下のように紹介されています。


・ 米国政府は、2020年までに1990年比で40%の国内での排出量削減を約束すること

・ カーボン・オフセットに関するプロジェクトに関わることは全て避けること(例: 森林オフセット、途上国の低炭素関連プロジェクトへの投資などを避ける。オフセットに頼らない)




今回のFoEの指摘は主に、気候変動法案を協議している米国に主眼が置かれているようですので、
環境取組の歴史が長い日本企業は、FoEが指摘している懸念の対象にはなりにくいとは思います。

しかし、今後、世界中で増えるであろう温暖化ガス削減のための取組が空洞化しないためにも、環境先進国・企業として、日本が国内外に積極的に働きかけることが求めらているのではないでしょうか。

Report Calls Carbon Offsets a Disaster for Averting Climate Change
September 15, 2009
SocialFunds.com



● FoEの報告書

 ・ FoE(米国)ホームページ  ※動画のビデオ・レターがご覧いただけます。

 ・ 報告書は以下から直接ダウンロードできます(PDF) 『A Dangerous Distraction: Why Offsets Are a Mistake that the US Cannot Afford to Make(危険な混乱――なぜオフセットが米国が犯してはならない間違いなのか) 』

● 関連ニュース(1)
カーボン・オフセットや排出権取引市場が広まる一方で、温暖化ガス排出量は減っていない。先進国以外で削減削減量を捻出する「オフショア・カーボン」にまつわる問題は、以前にも何度かCSRニュースで取り上げました。

 ・ 「排出権取引(EU ETS)増加、排出量削減は進まず」(ゼネラル・プレス CSRニュース 2009年06月04日)

 ・ 「CO2 削減責任は輸出国?輸入国?――中国、先進国に責任求める」(ゼネラル・プレス CSRニュース 2009年04月02日)


● 関連ニュース(2)
米国で協議中の気候変動法案、排出権取引所関連、CDM関連のニュースは以下です。


 ・ 「【ESG情報】米証取委、SIFとの協議で義務化を検討――他、7月のESGアップデート」(ゼネラル・プレス CSRニュース 2009年08月05日)

 ・ 「米、「気候変動法案」の下院通過に産業界が警告」(ゼネラル・プレス CSRニュース 2009年08月03日)

 ・ 「世界最大の証券取引所、ESG情報活用を決定」(ゼネラル・プレス CSRニュース 2009年06月05日)

 ・ 「低炭素と貧困削減に商機を見出すアジア企業」(ゼネラル・プレス CSRニュース 2008年07月02日)

 ・ 「消費者もレジで排出権を購入できる!(ノルウェー)」(ゼネラル・プレス CSRニュース 2008年03月27日)





[関 智恵]

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