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【大きな損失をもたらした2つの事件】

先日、石油大手のBPは、大きな利益が見込まれていた、グリーンランド鉱区における掘削プロジェクトの権益獲得を目的とした入札から撤退することを決定しました。この背景には同社のメキシコ湾沖で起きた石油流出事故がもたらしたレピュテーションの低下が入札での競争力を蝕んでいる事実があります。一方、太平洋沖では、米テネシー・バレー当局は、原子力発電所の冷却目的で利用していた、テネシー・リバーの水の温度が、今夏に起こった熱波により高温になり過ぎ、結果として、損失約5000万USドルを出しました。


【これらの出来事に共通するもの】

これらの出来事に共通するものは何でしょうか?

これらに共通することは、環境劣化がどのように企業に打撃を与えるか、ということです。全世界で起こると懸念されている環境危機(気候変動、水不足、エコシステムの劣化を含む)は、ただの「環境」の問題ではないのです。これは、非常に重要な企業の財務面でのリスク、そして投資家へのリスクをもたらすのです。

【バランスシートを蝕む環境リスク】

もちろんこのような環境リスクは業界により異なりますが、いずれも、サプライチェーンにおける気候変動の物理的な影響や、世界の多くの地域で増えている水不足といった、環境問題への潜在的な責任を含んでいます。特にBPの石油流出事故は顕著な例で、同社の純利益は2010年第2四半期に推定56億USドルありましたが、同事件後には、これがなんと損失171億USドルになったのです。

しかし、石油産業に関わらず、資源が限られ、しかも危機的状況にある現在の世界では、企業のバランスシートを撃沈させるようなリスクというのがその他にも多くあります。例えば、消費財業界の企業では、サプライチェーンにおける気候変動が物理的に企業に与える影響や、政策など、環境に対する圧力に対応しなければ、収益減少に直面する可能性があります。WRI(World Resources Institute)の報告書(Rattling the Supply Chains)では、同業界では早ければ2013年に税引き前利益で13
~31%の減少がみられる可能性があると見積もられています。これは2018年比で19%~47%増にあたります。

【会計基準の溝(みぞ)】

現在全世界で活用されている会計基準はGAAPと呼ばれていますが、これは前述のような、非持続的な経営戦略に導くようなリスクには的確に対応できていません。さらにこのような課題がもたらすビジネス・チャンスを見失う可能性すらあります。企業の優れた取組みはエネルギー削減や資源効率性、そして革新とブランド認知を高め、高収益をもたらすでしょう。例えば、GEが取り組む商品ライン、エコマジネーション(Ecomagination™)が良い例です。

企業が発行するCSR(サステナビリティ)報告書がこのリスクに関する溝を埋める役割を担う可能性がありますが、GRIガイドラインのようなCSR報告書基準は、ほとんどが自主的なもので、結果的に報告書に対する理解が限られたものになっています。別のWRIの報告書(Undisclosed Risk)では、特に新興市場ではCSR報告書の発行が遅れていることが明確になっています。さらにはKPMGの調査(2008 KPMG International Survey)では、孤立したCSR報告書はほとんど、サステナビリティは企業の財務、および投資判断の主流というよりもむしろ、表面的なものに留まっていることが確認されました。

例えば、CSR活動の成果に関する情報が完全に企業のアニュアルレポートに統合されている報告書を作成する企業は、全体の3%しかありませんでした(注:2008年の時点です)。

サステナビリティを企業が戦略的な事業課題として財務報告書に組み込むことができていないという現状は、企業および投資家が、環境負荷の高いもの、そして社会や最終的には各社の事業の業績にマイナスの影響を与え続ける活動に投資をし続けることを意味するのです。

【統合版(アニュアルレポート・CSR報告書)への動き】

しかし、ついにこのような現状における解決策が登場しようとしています。
企業、規制当局、会計団体、証券取引所、そしてNGOで構成されたグループが最近立ち上げた、International Integrated Reporting Committee initiativeは、「全世界で受け入れられるサステナビリティのための会計システムの創出」を目的に活動しています((『【報告書】統合版、国際的なフレーム作りが進む:IIRC・A4S』  (シータス&ゼネラルプレス、2010年08月05日付CSRニュース))。これには、GRIとともに4大会計事務所のPWC、デロイト、アーンスト アンド ヤング、KPMGも参加しています。この活動の成果は2011年にフランスで開催予定の政府間サミットG20で発表される見込みです。

サステナビリティを表面的なもの、副次的なものから、投資活動の主流に移管させることは、企業が環境リスクに対応する準備をするために必要不可欠な次のステップなのです。この移管は簡単ではないでしょう。しかし、日々悪化する傾向にある環境や今日活用されている投資判断基準が地球環境を維持するものなのか、悪化させるものなのか、という視点が、統合版報告書が強く必要とされる、そして、長年の懸案だった理由なのです。






Limited transparency around corporate sustainability risks can lead to investments that are bad for the environment, and investors’ bottom lines.


WRI, By Janet Ranganathan and Linnea Laestadius
August 03, 2010





[関 智恵]




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