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パリ五輪の選手村、アスリートの親たちに託児所を提供へ

スポーツの祭典であるオリンピック・パラリンピックでは、アスリートたちによる数々の名場面が見る人の心を動かし、人々を元気づけてきた。しかし、スポーツ界に存在するジェンダー格差が、一部の人々がスポーツに集中することを妨げているとしたら──今回の記事でご紹介するのは、そうした課題の解決に向けて、2024年の夏に開催されるパリオリンピック・パラリンピックが、選手村に託児所を設置した事例だ。

パリ近郊のサン・ドニに接するセーヌ川の河岸に、パリ五輪の出場選手たちが滞在する選手村が完成した。2024年3月、フランスのエマニュエル・マクロン大統領出席のもと、広さ52ヘクタール(東京ドーム約12個分)の選手村で落成式が行われた。

オリンピックとパラリンピックの期間中、世界中から集まった14,000人以上の選手とその同伴者が生活する巨大コミューンには、82棟の建物、3,000室のアパート、そして7,200室の部屋があり、選手たちに最適な生活環境を提供する。そして、この選手村で注目されるべき点は、子どもを持つ選手たちが大会期間中でも親子で充実した時間を過ごせるよう、託児所が設置されることだ。

欧州ジェンダー平等研究所の統計によると、家事、育児などのケアは、ヨーロッパで最も不平等な分担業務となっており、子どものいる女性の約91%が毎日少なくとも1時間を家事に費やしているという。スポーツの世界でも、女性アスリートの目覚ましい活躍が称賛される一方で、長年にわたり存在してきたジェンダー不平等が十分に解消されているとは言えない状況だ。

だからこそ男女アスリート間で競技の場を公正にするには、子どもを持つ(特に女性の)アスリートが競技に集中できる環境づくりに取り組むことが重要となる。

選手村に設置される、乳幼児を対象とした託児所には、個室の授乳スペースや安全な遊び場、おむつ替え施設などがある。IOCのエマ・テルホアスリート委員会長は、この託児所の設置に関して、olympics.comで次のように語っている。

多くのアスリートが、スポーツキャリアと家庭を両立させています。私も幼い子どもを持つ母親として、2014年の冬季オリンピックに出場したので、気持ちがよくわかります。妊娠や出産は人生における自然な選択肢であり、女性アスリートにとってキャリアの終わりを意味するものではありません。

ちなみに2025年以降、パリ五輪で使われた選手村は、12,000人の住民が暮らす新しい居住区となる。そこには保育園や小学校、託児所、体育館、地元の商店などが入るという。

パリ五輪で競技を観戦するのを楽しみにしている人も多いだろう。しかしその背景にある、女性アスリートの葛藤も忘れてはいけない。託児所設置は、そうした課題を打開する一歩になるかもしれない。

【参照サイト】Nursery to give parent athletes quality time with their young children during Paris 2024
【参照サイト】Le Village des Athlètes est prêt!
【参照サイト】The Paris Olympic Village to offer a nursery for parent athletes
【参照サイト】Gender equality in European homes: Survey shows it’s a long way off

2024/4/17
IDEAS FOR GOOD
[原文はこちら]

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