TCFD提言
Ⅰ. 正式名称
気候関連財務情報開示タスクフォースによる最終報告書 (Final Report: Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures)
Ⅱ. 概要
発行者
金融安定理事会に設置された気候変動関連財務情報開示タスクフォース
目的
気候関連のリスクと機会について情報開示を行う企業を支援し、低炭素社会へのスムーズな移行によって金融市場の安定化を図ることを目的としている。
対象
気候関連のリスクと機会について情報開示を行う企業。金融機関も含む。
内容
・構成
A. イントロダクション
B. 気候関連のリスク、機会、及び財務的影響
C. 提言とガイダンス
D. シナリオ分析及び気候関連問題
E. 重要な検討事項とさらなる作業が必要な分野
・特に参考にしたい内容
■気候関連のリスクと機会が財務に及ぼす影響の把握
下図のように、気候関連のリスクと機会が財務に及ぼす影響を整理している。 例えば機会としては「効率的な輸送手段の利用」「より効率的な生産・流通プロセス」などの資源の効率をあげている。 一方リスクについては、移行リスクと、物理的リスクの区分において、「操業コストの削減」「生産力の増大による増収」といった「財務への潜在的な影響」の存在など、具体例が説明されている。
■開示が推奨される情報
TCFD提言では、気候関連の影響を踏まえた「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の開示が推奨されている。 各項目についてすべてのセクターを対象とした情報と、業界別の情報との2種類があり、業界別の情報は付属書に記載されている。 すべてのセクターを対象とした情報は、下記のとおり。
図4 タスクフォースによる提言と推奨される情報開示
気候関連のリスク及び機会に係る組織のガバナンスを開示する。 | 気候関連のリスク及び機会がもたらす組織のビジネス・戦略・財務計画への実際の及び潜在的な影響を、そのような情報が重要な場合は、開示する。 | 気候関連リスクについて、組織がどのように識別・評価・管理しているかについて開示する。 | 気候関連のリスク及び機会を評価・管理する際に使用する指標と目標を、そのような情報が重要な場合は、開示する。 |
推奨される開示内容 | 推奨される開示内容 | 推奨される開示内容 | 推奨される開示内容 |
a)気候関連のリスク及び機会についての、取締役会による監視体制を説明する。 | a)組織が識別した、短期・中期・長期の気候関連のリスク及び機会を説明する。 | a)組織が気候関連リスクを識別・評価するプロセスを説明する。 | a)組織が、自らの戦略とリスク管理プロセスに即して、気候関連のリスク及び機会を評価する際に用いる指標を開示する。 |
b)気候関連のリスク及び機会を評価・管理する上での経営者の役割を説明する。 | b)気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響を説明する。 | b)組織が気候関連リスクを管理するプロセスを説明する。 | b)Scope1、Scope2及び当てはまる場合はScope3の温室効果ガス(GHG)排出量と、その関連リスクについて開示する。 |
c)2℃以下シナリオを含む、さまざまな気候関連シナリオに基づく検討を踏まえて、組織の戦略のレジリエンスについて説明する。 | c)組織が気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセスが組織の総合的リスク管理にどのように統合されているかについて説明する。 | c)組織が気候関連リスク及び機会を管理するために用いる目標、及び目標に対する実績について説明する。 |
TCFDは2021年10月、付属書「気候関連財務情報開示タスクフォースの提言の実施」を改訂し、「指標、目標と移行計画に関するガイダンス」を公表した。
また日本国内のTCFD提言への対応に向けた機運の高まりを受け、2019年5月にTCFDコンソーシアムが設立された。同コンソーシアムは日本国内の事業会社による開示を後押しするため、2020年7月に「TCFDガイダンス2.0」、2022年10月に「TCFDガイダンス3.0」を公表している。
沿革・今後
- 2016年
- タスクフォース発足
- 2017年
- TCFDが最終報告書(TCFD提言)を公表
- 2018年
- 経済産業省が「TCFDガイダンス」を公表
- 2019年
- 日本で「TCFDコンソーシアム」設立
- 2020年
- TCFDコンソーシアムが、気候関連財務情報開示に関するガイダンス2.0(TCFDガイダンス2.0)を策定
- 2021年
- TCFDが指標、目標と移行計画に関するガイダンスを公表
- 2022年
- TCFDコンソーシアムが、気候関連財務情報開示に関するガイダンス3.0(TCFDガイダンス3.0)を策定
Ⅲ. 企業の対応
TCFDコンソーシアムによると、2023年1月25日時点で世界で4,187、日本でも1,199の企業・機関が賛同を表明している。ESG評価機関がTCFDへの対応状況を評価項目に含めているほか、2021年6月に策定された改訂コーポレートガバナンス・コードでは、プライム市場上場会社に対して「TCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである」とされており、賛同の表明に留まらない情報開示が求められている。
Ⅳ. 参考情報
- 2022 TCFD Status Report
- 経済産業省「気候変動に関連した情報開示の動向」
- TCFDコンソーシアム
- CSRコミュニケート内のTCFDに関連する記事
■色々な事例を見たい時に!国内外のTCFD関連事例集
■TCFDとその他フレームワークの関係性とは?
■環境省「民間企業の気候変動適応ガイド」とは何ですか?
■コーポレートガバナンス・コード改訂のポイント
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