CSRレポートの読み方
日本ではCSRレポートの発行は任意で行われており、掲載項目も企業によって異なり、個性があります。同時に、「誰が・何のために読むか?」という読者の立場によって当然読みとるべき情報は異なります。そこで、レポートの特徴を掴んでより深く理解するために、専門スタッフの視点をご紹介します。
メディア(ハード面)の使い分け
第一に、情報開示のメディアをどのように使い分けているか、という視点です。WebサイトであればHTML形式かPDF形式か、冊子であればダイジェスト版か一冊で完結するのか、アニュアルレポートや会社案内との統合、詳細データ編での補完などそれぞれをどのように組み合わせているのか、使い方はさまざまです。
企業は情報の量や質、想定する読者などに応じて、各種メディアを使い分けています。近年は、すべてのCSR関連情報をWebサイトに開示し、特に重要度が高い情報のみを冊子で報告するパターンが多く見られるようになりました。冊子の使い方を絞りこみ、子どもを含めた一般の生活者を対象とした平易な表現を用いている事例もあります。
構成(ソフト)の枠組み
内容は、例えば次のような枠組みに沿って構成されています。
- ESG(環境・社会・ガバナンス)
- ステークホルダー(お客様、取引先、従業員、地球環境、地域社会など)
- ISO26000の中核主題
- 企業が独自に定めるCSR憲章・CSR活動目標の枠組み
このほか、前半はマテリアリティに沿った特集、後半はISO26000の7つの中核主題に対応した報告、という2部構成にしている事例も多くみられます。
こういった章立ての背景には、マネジメントの枠組みに合わせてESGで構成したり、幅広い読者に対して読んで欲しいページを示したい場合はステークホルダーごとに区切ったり、従業員に対して自社のCSR活動への理解を深めるために企業独自の枠組みで構成したり、というようなさまざまな要因があります。
メディアと構成、ハードとソフトの両面がどうなっているか俯瞰することによって、発行元が何を意図しているかを想像することに役立ちます。
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【Point】これらを意識して、企業が「誰に・何を」伝えようとしているのかを想像しながら読むことで、より理解が深まる
ストーリーがみえるか
次に、「なぜその企業がCSRに取り組むのか」という取り組みの根拠、つまりストーリーが伝わるかという視点です。
単純に活動した結果を開示するだけではなく、中期経営計画や事業内容との関係など、戦略的にCSRに取り組んでいるかが重要視されるようになってきました。ストーリーの納得性や首尾が一貫しているかによって、読者の共感を得られるかどうかが左右されます。CSRを体現し持続可能な成長を遂げるには、社内外から「共感」を得ることが鍵になります。
特集で伝える取り組みは何か
特集は、レポートの中で最も注目される項目です。後述の「各年のトピック」で取り上げられるようなテーマや、その企業にとって影響が大きい出来事など、読者に「いま最も伝えたいこと」が掲載されています。 「らしさ」や上記のストーリーが表現される部分でもあり、企業側はテーマの選定や伝え方に特に配慮して作成しています。
トップメッセージの強さ
特集とならんで注目されるのがトップメッセージ、コミットメントです。企業の顔ともいえるトップがCSRの位置付けや今後の方向性について、自身の言葉で語っているか(肉声感)、何をコミットしているか、はCSRを推進する原動力になります。
短い定型文の更新や、レポートの要約のような形式的なメッセージには共感しにくいものです。有識者との対談やインタビュー形式にすることで、個性や想いが表現できるように配慮している事例も見られます。背景や表情などの細部にこだわっている場合もあります。
各年のトピックを捉えているか
CSRはステークホルダーの声に応えることが求められるため、「いま」社会から注目されているテーマについて掲載されているかも読むときのポイントです。
ISO26000やGRIガイドラインで示されたマテリアリティ特定プロセスの開示といった社会的責任の国際的な動向への対応状況、またバリューチェーンでの人権尊重や女性活躍といった世間で注目されているテーマへの取り組みが報告されていれば、社会情勢を捉えていると推察できます。
ステークホルダー・エンゲージメントと信頼性の担保
CSRとは企業が社会からの期待に対応することです。社会から何を期待されているのか聞く耳を持ち、必要に応じて対応し信頼関係を構築する、すなわちエンゲージメントが前提となります。
ステークホルダーの顔
従業員や取引先など人物のコメントを、本人の顔写真とともに掲載している事例が多くみられます。従業員数人でのダイアログを掲載する事例も多く見られます。「顔が見えるレポート」にすることで、信憑性が高まるだけでなく、親近感を得られるという効果もあります。
第三者意見
中立的な立場にある有識者から、報告書・活動について専門的なアドバイスを受け、ブラッシュアップに役立てている事例が見られます。読者に対して、外部の意見を踏まえたレポートであることをアピールする役割もあります。
外部保証
監査法人のような第三者機関によって、企業が開示するデータの収集方法や集計方法について確認し保証するもので、情報の信頼性向上のために受けている事例が増えてきています。GRIガイドラインでも、準拠するための要求事項ではありませんが外部保証の利用を推奨しています。
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【Point】エンゲージメントの取り組みから、CSR経営の実効力と企業の本気度を推し量ることができる
読みやすさ、その他
ソフト、ハードの構成や内容がどれだけ先進的で優れていても、それが情報の受け取り手に伝わらなければ、良いコミュニケーションとはいえません。単純な情報開示の枠を超え、ファンづくりにつながるコミュニケーションツールであることが望ましいです。
事業概要
CSR活動を理解する前提となる情報です。最終的な製品を並べるだけでなく、バリューチェーンでみた場合の製品の位置づけや分野別の売上構成比などを伝えることで、自社の強みやストーリーがわかりやすくなります。Webでは掲載箇所が拡散していることが多い情報であるため、メディアを使い分ける際に、掲載箇所へアクセスしやすいよう考慮されるべき情報です。
デザイン性(読みやすさ、読みたくなるか)
レポートはどうしても文字情報が多くなりがちです。しかし、コミュニケーションツールという役割を果たすためには、読みやすさにも配慮する必要があります。写真やイラストを活用したり、デザインによって「特に読んでもらいたいページ」を強調したり、といった工夫に注目してみましょう。
インデックス
欲しい情報にアクセスしやすくするため、GRIガイドラインやISO26000、国連グローバル・コンパクトの対照表などを添付する事例が多く見られます。また、環境や社会といった章ごとにテーマカラーを変えたり、レポートの各ページにインデックスを付けるなど、見やすく「読者に伝わる」ための工夫がなされています。
印刷方法
紙媒体を発行する場合には、FSCなどの認証紙、印刷における水使用量が少なくてすむ「水無し印刷」、植物性の「ベジタブルインク」など、環境・社会に配慮したさまざまな手法が導入されています。裏表紙にそれらのマークを掲載している場合が多く、どのような方法で印刷されているかもチェックしてみてはいかがでしょうか。
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【Point】一方的に「伝えた」情報開示ではなく、「伝わる」工夫がされたコミュニケーションか
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