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「屋外で過ごせる日数」気候変動の影響を測る新たな指標となるか

地球沸騰化とも呼ばれるこの時代、いまや「気候変動」という言葉を聞かない日がないほどになった。しかし、日常生活の中で私たちが気候変動から受けている影響をどのくらい理解しているかと問われると、はっきりとは答えられない人も多いのではないだろうか。

そんな中、マサチューセッツ工科大学(MIT)のエルファティ・エルタヒル教授が率いる研究チームは、Journal of Climateに掲載された論文で、気候変動の影響をより身近に把握するために、新しい指標「outdoor days(屋外日数)」が有用であると発表した。

この論文によると、「屋外日数」の指標は仕事やレジャーなどの屋外活動が快適な温度の範囲内で行える年間日数のことを指すという。MIT Newsの取材に対して、エルタヒル教授は次のように述べている。「気候変動について考えるとき、私たちはあらゆる場所で気温が上昇することを示す地図を見がちです。しかし、屋外の日数で考えれば世界は平らではないことがわかります」

たとえば、MITがあるアメリカ・ボストンのような緯度の高い都市では、もともと冬は外に出られないほど寒冷な気候だったのが、気候変動によって温暖になるため、屋外日数は一時的に増加する。一方、エルタヒル教授の母国であるスーダンのような緯度の低い地域では、従来温暖だったのが気候変動によって灼熱になるため、屋外日数が減少する傾向がある。

こうした気候変動の影響は、たとえば本来温暖で過ごしやすかった地中海周辺地域への渡航が減るなど、人々の旅行パターンにもすでに現れているようだ。このように「屋外日数」の指標を用いると、地域による影響の差を明らかに見ることができる。

エルタヒル教授は以前から、気候変動を人々に伝えることの難しさを認識していた。一般的に多くの人々が、「気候変動は現実のものであり一部の人々の生活に影響を与えるだろうが、必ずしも自分自身の生活には影響を与えない」と考えがちなのを知っていたからだ。また、Pew Research Centerの世論調査によると、「現在気候変動のリスクを説明するのに使われている言葉は大げさだ」と感じている人もいるという。

そこで、エルタヒル教授と研究チームは「ときに自分の利益は他人の損失となり、この先すべての人々が『屋外日数』を失う可能性があることを、知ってもらいたい」という想いを抱いた。そして、選択した国の屋外日数を自由に調べることができるWebサイト・Global Outdoor Daysを作成したのだ。

このウェブサイトは誰でも自由に利用できる。たとえば、サイト上の地図から日本をクリックすると日本の屋外日数を調べることができる。屋外での活動に快適だと思う最高・最低気温を自分で設定することも可能だ。毎月の屋外日数の変化を比較するグラフを見ると、2071年から2100年の間に8月の屋外日数が極端に減少する予測が立っていることがわかる。

海岸線が50年後に消滅するとか、2030年代には夏の北極の氷が消える可能性があるとか、遠くで起こる気候危機の影響を知ったところで、日常生活において緊急性は感じないかもしれない。しかし、「10年後には外で過ごせる日が月3日減る」と言われたら誰もが焦りを感じることだろう。「屋外日数」は、気候変動をより身近に感じるための指標になるのではないだろうか。

【参照サイト】A new way to quantify climate change impacts: “Outdoor days”
【参照サイト】North-South disparity in impact of climate change on “outdoor days”
【参照サイト】MIT researchers propose a new way to measure climate change: outdoor days
【参照サイト】Why Some Americans Do Not See Urgency on Climate Change

2024/4/28
IDEAS FOR GOOD
[原文はこちら]

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