グットプラクティス

第6回 アサヒビール

1本1円の環境保全活動『うまい!を明日へ!』プロジェクト

アサヒビールが2009年から春・秋の年2回実施している『うまい!を明日へ!』プロジェクト。スーパードライ1本につき1円を、日本全国47都道府県それぞれの自然や文化財などの保護・保全活動に寄付する活動だ。販売促進チームが主体となって行っているこのキャンペーンは、初めに社会貢献ありきではなく、「お客様に感謝の気持ちを表したい」との思いが原点であり、推進力となっている。

「もっとおいしく、楽しく飲んでいただく」お手伝い

プロジェクトの経緯や想いについて語る杉浦氏

プロジェクトの経緯や想いについて語る杉浦氏

「おかげさまで、CRM(※1)の事例としても注目していただき、最近はこうした取材を受ける機会も増えてきました。ただ、私たち自身は、CRMやCSRを特に意識してこのキャンペーンを行っているわけではないんです」
今回お話をうかがったのは、アサヒビール株式会社 酒類本部 マーケティング本部 ビールRTD部の杉浦克典氏。『スーパードライ』の販売促進が担当で、2009年から春と秋に展開を始めた、スーパードライ1本につき1円を地域の環境や文化財の保護・保全活動に寄付する『うまい!を明日へ!』プロジェクトを指揮している。
「このプロジェクトは、当社が12年連続でビール売上No.1(※2)を達成したことから、その感謝の気持ちをお客様にお伝えしたいと始めたものです。そしていろいろな方法を検討する中で、“ビールをもっとおいしく、楽しく飲んでいただく”お手伝いをするのも感謝を表すことになるのではないかと考え、スーパードライを飲むことが地域貢献にもつながる、今回のプロジェクトが生まれました」
『うまい!を明日へ!』プロジェクトに先立ち、アサヒビールは2008年3~6月、四国限定で「四国の森・水に、感謝」という今回同様のキャンペーンを展開している。これは、大手ビール会社の中で唯一四国に工場を置くアサヒビールが、四国工場操業10周年を迎えたことを記念し、現地の支社・工場が主体となって実施したもので、スーパードライ1本につき1円を、おいしいビール造りに欠かせない四国の水や水を守る森のために寄付するというキャンペーン。好評を博し、同じ年の11~12月にも実施されている。

※1:Cause Related Marketingの略。ここでいうコーズ(Cause)とは社会的課題やテーマのこと。CRMとは、そうした課題の解決と売上拡大の実利との両立(社会性と収益性の両立)を目指すマーケティング手法です。

※2:2009年アサヒビール課税移出数量に基く

「自分の飲んだ1本が、自分の地域のためになる」という実感を

「うまい!を明日へ!プロジェクト」リーフレット

支援する47都道府県の活動は、自然環境、文化財の保護などさまざま。

四国での成果は当然、杉浦氏をはじめ本社販促チームにも届いており、幾度も行った消費者のグループインタビューでも社会貢献や環境保護への意識が高まっているのは明らかだった。全国での拡大展開に若干の不安はあったが、「自分の飲んでいる1本が、自分の地域のためになる」と実感していただきたいと、全国47の都道府県単位で『うまい!を明日へ!』プロジェクトを実施することが決まった。
「理想を言えば、自宅近くの荒れていた森がきれいになった、というように実感していただければ良いのですが、さすがにそれは難しいので都道府県単位にしました。それでも、本当に全国で一斉にスタートできるのか、最後まで不安でした」
寄付先を決め調整を行うのは、普段は各都道府県の販促活動を担っている営業部隊。その営業マンたちが自治体を訪問し、協力を要請するとともに情報を集め、NPOや研究機関などから話を聞き、支援する自然・環境・文化財などの保全活動を絞り込んでいったのである。
「まさに手探りの作業で、現場は大いに戸惑ったと思います。ただ、営業担当者もそれぞれの地域の一員であり、仕事を通じて自分の地域に貢献できることは誇りや自信を高めることにもつながったようです」

ビジネスに立脚しているからこそ、発展的かつ持続的な活動になる

お客様にとってわかりやすく手軽であること。結果をきちんと報告すること。一定期間(当面は3年間)続けること。杉浦氏らは今回のプロジェクトを中・長期的なものとしてとらえ、この3点をスタート時から決めていたという。実際、ホームページなどを通じて寄付の金額や内容は詳細に報告され、活動も2009年の春と秋、そして2010年の春と継続されている。3回目はまだ終わったばかりだが、これまでの成果はどうだったのだろうか。
「2回目を終えたあとの調査結果では、プロジェクトの認知度と好感度・共感は確実にアップしていました。売上については、環境の変化もあって一概には言えませんが、効果はあったと判断しています。一方、認知度は向上しても、どこまで実感し参加意識を持っていただけたのかという課題も浮かび上がりました」
2回目以降、杉浦氏らは、お客様の参加意識を高めることを大きな目的にした。そして、プロジェクト内容の告知や現場の取り組みをよりシンプルにしていく。
「言いたいことはたくさんあるんです。でも、すべてを語ろうとすれば逆に伝わりにくくなることもあり、缶の表示や店頭POPなど、最も伝えたいことを端的に表すようにしました」
営業の現場でも「スーパードライをもっと飲んでください。1本につき1円、地元の環境保全のために寄付されます」と、はっきり話すことにしたという。ともすれば、社会貢献を商売に利用しているといった反感を持たれかねない。しかし、スーパードライの売上が伸びれば環境保全の資金が豊かになるのも事実。そして、お客様がほんの少しでも意識してスーパードライを選び、結果として身近な環境保全に活かされたことを知れば、社会貢献に参加する喜びを実感することにもなる。

あくまでもビジネスに立脚しているからこそ、発展的かつ持続可能なCSR活動になっている。その本質を飾ることなく語り始めたことで、『うまい!を明日へ!』プロジェクトはさらなるステップアップを果たしたようだ。

アサヒビールのCSR・環境保全の取り組み

アサヒビールのCSR・環境コミュニケーションは、幅広くユニーク。同社グループのCSRコミュニケーションレポートは、これまでにない構成が特徴的である。また、事業においてもとことん環境にこだわる姿勢がうかがえる。

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