グットプラクティス

第9回 NEC

仕事で培ったスキルを活かすNECの社員「プロボノ」

『NEC社会起業塾ビジネスサポーター』ミーティングの様子

『NEC社会起業塾ビジネスサポーター』ミーティングの様子

最近よく聞くようになった言葉のひとつに「プロボノ」がある。お金の寄付や単純な労働力の提供による貢献ではなく、仕事を通じて培った専門知識やスキルを活かして行うボランティアとされるプロボノ。日本ではまだ、ようやく認知され始めたばかりのこの社会貢献活動に、NECは企業としていち早く取り組み、今後の展開を模索している。

1990年代の米国で知った社会起業家の必要性

NECの社会貢献活動の分類

NECの社会貢献活動の分類

NECの企業ホームページから社会貢献活動のコンテンツに入ると、非常に多彩な活動を展開していることがわかる。内容が豊富なため、すぐに全容を理解するのは難しいかとも思うが、NECの社会貢献活動には「NECの社会貢献室が企画・実行するもの」「全世界のグループ社員による地域貢献活動」「財団(C&C財団およびNEC米国財団)を通じた助成」という3つの柱があり、NEC社会貢献室主導のプログラムはさらに5本の柱から成っている。この5つには、情報格差の解消のようなNECらしいものや、地球環境の保全など多くの企業に見られる取り組みなどが並んでいるが、やや異色なのが「起業家による社会変革」というテーマ。そして、このテーマに含まれるプログラムのひとつにNEC版のプロボノ『NEC社会起業塾ビジネスサポーター』がある。
なぜNECが社会貢献活動として「起業家育成」に取り組んでいるのか。同社CSR推進部 社会貢献室の池田俊一氏に、まずその経緯から伺った。 「2002年にスタートさせた社会起業家の育成プログラム『NEC社会起業塾』が始まりで、そのきっかけは現在のCSR推進部長が1990年代に米国に駐在した際、経済的・社会的に大きな構造変化が起きつつあるのを感じたことにありました。当時のアメリカでは、製造業がアジアや中南米などの国外へ次々に出て行き、そのために職を失う人たちが増えていました。そうした人たちの受け皿となり、支援の面でも大きな役割を果たし始めていたのがNPO、NGOや今で言う社会起業家で、その社会変化はいずれ日本にも押し寄せると考え、社会起業家の育成を始めたわけです」
『NEC社会起業塾』は当初、起業を目指す若者からビジネスプランを募って支援することからスタートしたが思うような成果が出ず、2年目からはすでに事業を始めている若手起業家の支援に内容を修正。その後は軌道に乗って9年目を迎えるまでになり、これまでの支援先からは「フローレンス」「かものはし」「カタリバ」など、現在大きな注目を集めるNPOが出ている。

社員の注目度も高まり、NEC版プロボノをスタート

CSR推進部 社会貢献室 池田俊一氏

CSR推進部 社会貢献室 
池田俊一氏

日本の社会でもやがて社会起業家が重要な役割を果たすようになる。その予見が正しかったことは「フローレンス」など『NEC社会起業塾』に参加したNPO法人の今の活躍ぶりでも明らかで、他の企業・団体の関心も高まり、2010年からは横浜市および花王が賛同し、「横浜社会起業塾」「花王社会起業塾」も動き始めた。その一方で、NEC自身も起業家支援の活動を拡大。それがNEC版のプロボノ『NEC社会起業塾ビジネスサポーター』である。 「世間で社会起業家への注目が高まるのに伴い、NECの社員が私たちのもとに“起業家に会いたい” “こんな支援をしてはどうか”といった要望や意見を寄せてくることが増えてきました。我々としても、NEC社会起業塾に参加した団体に対してその後のフォローを用意していないことに課題を感じていて、社内の関心の高まりと、起業塾の課題解決の両方を実現するものとして着目したのがプロボノです。そして2010年から、社員のスキルを活かして『NEC社会起業塾』の卒業生を支援する、『NEC社会起業塾ビジネスサポーター』を立ち上げました」
プロボノ自体がNPOの活動を通して日本でもようやく知られ始めた段階なのだから、NECのように自社で取り組むのはまだ珍しい。しかしその背景には、高まる社内意識への対応と、長く続けてきた起業家支援の次の一手を探った結果という、自然の流れがあったのである。 初年度の今年は、ワンコイン血液検査を展開する「ケアプロ株式会社」と、高収益農業の拡大を目指す「株式会社オリザ」の、ともに2008年のNEC社会起業塾に参加した2社をサポート先に選定。ボランティア参加社員の募集は社内のイントラで告知して10回の説明会を開き、51人が応募。そして最終的に8人のチームがケアプロで“顧客管理”、7人がオリザで“Webサイトの構築”に関する支援を行っている。ボランティア時間は週3週間まで。期間は6ヶ月程度で、7~8月に支援先企業の事業についてのマーケティング、9~10月に支援プランを策定してプレゼンテーションを行い、11~12月に実行して1月に成果報告、というスケジュールである。

プロボノを通じて自社にないものを取り込む

こうしてNECの社会起業家支援の足取りを辿ると、ただ流行に乗って始めたプロボノではないことがよくわかる。そして、これらの取り組みには実はいくつかの特色がある。
その1つが、社会貢献活動を行う上でのNPOとの積極的な連携。『NEC社会起業塾』は「NPO法人ETIC.(エティック)」と、『社会起業塾ビジネスサポーター』では「NPO法人サービスグラント」との協働で行っている。 「我々にはないノウハウや人脈を持っているNPOがあり、彼らと協働することで自分たちの社会貢献活動がより効果的なものになると考えてきました。ETIC.は起業に関心がある若者たちとのネットワークが非常に厚く、サービスグラントは個人向けのプロボノで多くの実績があることから、我々の取り組みのパートナーになってもらいました。ビジネスサポーターでの社員ボランティアの選定・チーム編成と支援先のマッチングについても、サービスグラントに一任しています」
そしてもうひとつ、社会起業家支援やNPOとの協働を通じて池田氏らが期待するのが、外からの風を吹き込みNECの社内を活性化していくことである。「パソコンや携帯電話をつくっていることからB to Cの会社だと思われがちですが、NECは実は官公庁や通信事業者、民間企業などへのビジネスが中心のB to Bの企業なんです。B to Bであっても生活者の感覚や社会の最前線をとらえるのは重要で、社会の最前線をよく知るNPOとのお付き合いや、起業家と一緒に仕事をすることにより社員に学びや気づきを与え、さらには新たなビジネスの創造にもつながればと考えています」

まだプログラムの半ばを終えたばかりで、実際の成果はプログラム終了後の検証を待たなければならないが、『社会起業塾ビジネスサポーター』に参加した社員からは「とにかく面白い」「勉強になる」との意見が寄せられているという。プロボノへの参加が、社員に活気をもたらすのは確かなようだ。 社会貢献活動の幅を広げたいと考えているCSR担当者は多いだろう。プロボノに関心を持っている方も少なくないかもしれない。そこで「どこから手をつけて良いのかわからない」が壁になっているのなら、「なぜプロボノを始めるのか」という目的を明確にした上で社会に広く目を向ければ、独自のノウハウや人脈を持ったNPOは多数存在し、彼らも企業との協働を望んでいて心強いパートナーになることを、NECのこれまでの経験が教えてくれる。

ステークホルダーとのエンゲージメントが重要

NECは、CSR経営方針の一つである「ステークホルダーコミュニケーションの推進」のもとに、社会の課題解決に貢献するためのエンゲージメント(お互いのためになる連携)を進めている。その内容は実に豊富で、「顔が見える」社会貢献活動がますます広がりを見せている。

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