レポート事例集

「シナリオ分析」まで進む、優良日本企業2事例。
TCFDに対応する情報開示

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2018年7月、環境省が金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォースTCFD(The Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言に賛同を表明しました。

企業側も、気候変動に関する財務情報開示へのニーズが高まってきています。

前回、海外の事例をご紹介したTCFDについて、今回は日本企業の開示事例をご紹介します。

※TCFDとその提言内容については、下記記事をご参照ください↓
「どこまで出来ていますか?気候変動を踏まえた、財務情報の開示」
【参考】TCFDに対応する企業の情報開示。海外の2事例

1、国際石油開発帝石株式会社 サステナビリティレポート2018

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INPEXサステナビリティレポート2018 p38

  • 原油を扱うINPEXでは、TCFDの最終提言が公表される前から「気候変動対応の基本方針」(2018年7月改訂)を公開するなど、気候変動に対応してきています。
  • サステナビリティレポートでは、主にCSR重点テーマである気候変動対応のパート内でTCFDについて開示しており、トップメッセージやリスクマネジメントパートでもTCFDに触れています。

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INPEXサステナビリティレポート2018 p40

  • リスク及び機会については、2022年までを中期、2040年までを長期とし、それぞれの移行リスク・物理リスク・機会を特定。それぞれの管理・取組状況を記載しています。

※移行リスク:規制の強化や石油関連市場の縮小など、低炭素社会への移行によって生じるリスク
※物理リスク:異常気象や海水面の上昇など、気候変動の結果として生じるリスク


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INPEXサステナビリティレポート2018 p41

今後は事業活動の低炭素化を推進するため、天然ガスの開発促進や再生可能エネルギーへの取り組み強化、排出されたCO2を回収・貯留するための技術開発を進める旨記載されています。

また、「当社の低炭素社会シナリオ」として、IEA(国際エネルギー機関)新政策シナリオ、技術進展シナリオ、ウェイクアップシナリオ、2℃シナリオなどから自社の低炭素社会への対応戦略をまとめ、中期経営計画2018-2022及びビジョン2040に反映させています。


2、キリングループ 環境報告書2018

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キリングループ環境報告書p74

  • 大麦やトウモロコシといった農作物を主原料とするキリングループは、気候変動による収穫量の変動などをリスクととらえており、2012年に策定した長期環境ビジョンにおいてもバリューチェーンでのCO2排出量半減などを掲げています。また、その実現のためのGHG削減計画はSBTに認証されています。

■長期環境ビジョン
■SBT認証

  • 環境報告書では「環境マネジメント」パート内で開示しており、「ごく初歩的な段階」としつつも内容と該当ページが整理されています。
  • シナリオ分析は主に3種類の結果を掲載していており、分析結果からは「重要な原料である農作物に大きな影響を与える可能性があることを改めて把握できた」としています。

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キリングループ環境報告書p75

  • 今後は社会全体の低炭素化について取り組むだけでなく、財務的なインパクトに関する影響についても把握するとともに、まだ十分に解析できていない移行シナリオについて検討を進め、事業計画に反映する旨記載されています。

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■CSR報告書調査データ
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