投資家との対話。成功のポイントは?ESG対話プラットフォームシンポジウム参加報告
2019年3月19日、「ESG対話シンポジウム」が開催されました。
環境省のポータルサイト「ESG対話プラットフォーム※」の成果報告を中心に、ESG投資に関する最新動向が紹介されました。
※ESG対話プラットフォーム:
投資家は何を求めているのか?環境省「ESG情報プラットフォーム」の活用(2018年2月)
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【その他関連記事】
環境情報開示基盤整備事業ポータルサイトの可能性(2017年3月)
ESG対話プラットフォームの成果、500社以上の登録
このプラットフォームには、企業がフォーマットに沿った環境情報を登録し、それを投資家等が閲覧・分析できる「環境情報登録支援プログラム」と、企業と投資家のESG対話を支援する「ESG対話プログラム」があります。
2019年3月時点で、CSRレポートなどの報告書を登録する企業は500社を超え、プラットフォームを通じた企業と投資家等の直接面談は80件実施されました。
プラットフォームに参加するメリット
- 差分分析やキーワード分析といった機能が追加されたことで、企業間の比較がしやすくなった
- 普段面談の機会を持てないような中小規模の企業との対話が実現した
- 企業サイドから投資家にアプローチしやすくなった
プラットフォームの課題点
- 情報が揃うタイミングが遅い
- 登録情報の定義が統一されていないので単純に比較できない
- プラットフォームに参加しているか否かで、情報格差が生じてしまう
これからのESG投資と、「TCFD」
ESG投資の拡大に向け、プラットフォームでは企業に情報開示と投資家との対話を促しています。 投資家側でも、「PRI(責任投資原則)」が運用資産の50%をESG投資にすることを求めるなど、ESG投資を拡大しようとしています。国内最大のアセットオーナーであるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)もPRIに署名し、50%運用を目指しています。
また株式や債券による「直接金融」だけでなく、銀行からの融資などの「間接金融」でもESGを重視するようになってきており、情報開示の重要性はより高まっています。
しかし投資家からみると日本企業の開示情報は海外企業に比べても不足しており、投資家との対話を通じて必要な情報を把握し開示していかなければ、スムーズな資金調達ができなくなる可能性もあります。
特に注目されるのはTCFD
日本のTCFD※賛同機関は2019年3月時点で60を超え、今後も増えると予想されています。 環境省では2018年7月から、TCFD提言の技術的補足文書に沿った、シナリオ分析のコンサルテーションを実施。プロジェクトの成果は、「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」としてまとめています。
シナリオ分析では、分析結果の数値化よりも「気候変動による社会変化に、対応できること。その情報を開示すること」が重要です。1.5℃目標に向かって社会が変化してゆく中、企業は事業の在り方を見なさなければならないでしょう。 この「TCFD提言」は投資家が企業側に求める情報を示しています。つまりこのタスクフォースができたのは、企業が投資家の情報ニーズに対応しきれていなかったという背景があるのです。
※TCFD:気候変動関連財務情報開示タスクフォース(The FSB Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の略称。詳細はこちら
3、投資家との対話を成功させるポイント
ESG投資はもはや、投資家の予想を超えるスピードで拡大しています。TCFD提言がタスクフォースの発足から約1年半という短期間で公表されたことからも、ESG関連の情報ニーズが高まっていることが分かります。 投資家は調査機関が公表するスコアや格付けを参考にはしています。しかし、あくまでも自社の調査に基づき投資判断するため今後も企業との対話機会は増やしたい意向です。 企業にとっても、投資家のニーズを把握できる、今の開示情報とギャップがないか確認できるなどのメリットがあります。
では、実際に対話を成功させた企業や投資家は、どんなポイントをおさえていたのでしょうか。
【ポイント1】「これができたら成功」という明確なゴールの共有
対話の目的には、以下のような様々な目的が考えられます。
- 投資家のニーズを知る
- 自社のレベルアップにつながる助言を得る
- 投資家の声をかりてESG対応の必要性を社内に浸透させる 等
どういった対話が成功かを明確にし、参加者で共有しておくこと有効です。また「対話」は手段であって目的ではないことを忘れてはいけません。 社内ではもちろんですが、投資家によっても投資方針が異なるので、対話のゴールを事前に共有することも大切です。事前に投資家に聞きたい質問を用意して送付しておくと、当日の進行がスムーズで良かったとの意見もありました。
【ポイント2】社内体制の整備
ESGにかかわる部門は複数にわたることがほとんどなので、連携が欠かせません。IRと総務で言うことが異なったりなどすると、投資家からの信頼を損ねてしまいます。 これまで株主総会は総務、投資家対応はIR、ESG評価機関対応はCSRや環境部門と、別々に対応していた企業では、投資家との対話をきかっけに、各部署が必要性を感じてスムーズに連携できるようになったそうです。
そのためには、対話のメリットとデメリットを各部門に丁寧に説明し、共有することが大切とのことでした
【ポイント3】対話相手の見極め
対話することが決まれば、投資家は企業の公開情報を一通り調査したうえで話し合いの場に臨みます。 個別に企業を評価する投資家は「個別企業への正しい投資判断に資する情報の入手」、インデックスファンドの運用者なら「市場全体のレベルアップ」など、投資家にも色々な立場があり、企業との対話目的は異なります。 そのため企業がなぜこの投資家と対話したいのかを明確にすることが必要です。場合によっては対話する相手を変更する必要も生じます
最後に
プラットフォームは2019年度にTCFD提言に沿った項目を追加するなど、グローバルな基準と統一を図っていく予定です。その動きに伴い、企業には実績だけでなくガバナンスや戦略といった情報も求められるようになりますが、それはまさに投資家等が求めている情報であり、企業が取り組むべき内容です。
自社には何が求められているのか、今開示している情報で十分なのか確認するためにも、まずは投資家との対話に踏み出してみてはいかがでしょうか。
【参考リンク】 シンポジウムの資料と動画は、下記よりご覧いただけます
- ガイドライン解説 [CSRレポートトレンド]
- アワード・ランキング紹介 [CSRレポートトレンド]
- The GRI Perspective:どのようにすればステークホルダーキャピタリズムを実現できるのか [こちらCSR革新室]
- 調査用サイト紹介 [CSRレポートベンチマーク]
- 気候変動がもたらす“健康危機” [Global CSR Topics]
- CO2
- CSR
- CSRレポート
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