新型コロナウイルスに対しての海外企業の情報開示状況【ヨーロッパ編】
新型コロナウイルス感染症の被害拡大は、2020年5月未だ落ち着くことなく、企業においても長期的な対策を視野に入れはじめています。そのような厳しい環境の中、グローバルな企業では新型コロナウイルスに対しての企業メッセージを発信しています。
これまで、北米編 、アジア編 と地域別での企業の情報開示の状況を紹介しました。 北米では、調査した企業ほぼすべてが、新型コロナウイルスに対してのさまざまな情報を発信。北米での新型コロナウイルス感染症の深刻な影響が見える企業の発信となっていました。一方アジアでは、北米と比較しても情報開示に対応する企業は割合が少ない状況でした。
第3回目の今回は、ヨーロッパの企業における情報開示の状況を紹介します。サステナビリティの評価軸として、RobecoSAMのSustainability Yearbookでブロンズ以上の企業の状況を確認していきます。
※なお、調査は2020年5月5日時点のもので、本テーマに関する情報開示は刻一刻と変化することが予想されるため、ひとつの参考としてご覧いただければと思います。
【オランダ】ユニリーバ(パーソナル用品)
- コーポレートサイトのトップで「私たちのCEOから:このパンデミックと一緒に戦います」として、CEOからのメッセージを紹介するページへリンク。
- このCEOメッセージの中で、Covid-19のワクチンが出るまでは石鹸が最善の防御手段であり、ユニリーバは1億ユーロの価値のある無料の石鹸、消毒剤、漂白剤、食品を提供することを紹介。 (この約半分はWEFのCOVIDアクションプラットフォームに提供される。)
- その他、以下の支援内容をCEOメッセージ内にて紹介。
―お客様とサプライヤーに対して、5億ユーロのキャッシュフロー救済を提供して、バリューチェーン全体の生活をサポートすること。
―業員含む労働者に対し最大3か月間、市場の混乱で仕事が困難な場合においても、突然の賃金低下は行わないこと。(この範囲には、フルタイムやパートタイムで作業する請負業者なども含め、政府の計画または直接雇用によってカバーされていない労働者も適用する。例えば、施設を安全に保つために働く労働者、施設清潔を担う者、または食堂経営者が含まれる。)「ユニリーバの給与に直接関与していなくても、私たちのチームの一員です」とCEOは説明。
- 上記のCEOメッセージの他、ユニリーバが取り組む様々な取り組みを紹介。目立つバナーから、紹介するページへリンク。
- 紹介する活動は、例えば「サンパウロの貧困街で住民を支援するために特別な消毒クリーナーを生産」といった活動や、「COVID-19と言うパンデミックが食品に対してどのように長期的に視点を変えたか」「ハンドソープによる手洗いの有効性の紹介」「スキンケアの専門知識を持つ科学者による、予防策の共有」「コロナ対策の手洗いキャンペーン」といった様々な情報を発信している。
【イタリア】CNH Industrial NV(機械および電気設備)
- コーポレートサイトのトップにて、COVID-19に連携したアクションとして、ニュースリリースのpdfをリンク。
- このニュースリリース上では、取締役等が報酬の受け取りを控える選択について記載。(例えば、最高経営責任者は3か月間50%の給与の削減、グローバルの執行委員会は3か月間20%の給与の削減)また、産業財団や慈善団体に対して200万ドルの寄付の実施についても紹介。
- メインビジュアルの右側になるリンクからは、CNH Industrial がこれまでCOVID-19に関して発信した情報のアーカイブを確認することができる。
- また、コーポレートサイトトップの別スライダーでは「真の違いをもたらすために」というメッセージで、COVID-19対応のニュースをリンク。そこでは、金銭的支援に加え、自動車業界ならではの支援活動の紹介として、医療機器やヘルスケア製品の運搬支援の活動を紹介。
【イギリス】British American Tobacco PLC(タバコ)
- コーポレートサイトのトップから、自社の対応のページに飛ぶように導線を複数設置。
- 対応ページでは、以下の4つの重点分野で対応すると整理。「1、従業員の健康をサポート」「2、危機的状況下で会社を運営し続ける」「3、COVID-19パンデミックと戦うための直接的サポート」「4、サプライヤーと地域社会の支援」
- 1のサポートでは、オンライン医療相談やカウンセリングサービス、在宅勤務中のメンタルサポートなどを紹介。
- 3の直接的サポートでは、急速に成長するタバコ植物テクノロジーを使用したCOVID-19のワクチンについて前臨床試験が進行中であることや、このタバコ植物由来のワクチンは、従来の方法と比較してより速く、より安全な開発の可能性があることを示唆。
- また、1週間あたり100万から300万回分のワクチンを製造する可能性があることも紹介。
- そのほか、British American Tobaccoが、このワクチン開発に関して、ニューヨークタイムズやウォールストリートジャーナルなどのメディアに紹介された様子や、ニュースリリースにてワクチンに関する詳しい内容を紹介。
【フランス】 Peugeot SA(自動車)
- コーポレートサイトのトップから、「Covid-19クライシス:PSAグループの動員」という活動をまとめたページにリンク。
- このページにて、「従業員の保護のためのテレワークの推奨や出張の停止」といった基本的な活動から、「医療従事者のモビリティの確保とマスクの寄付」といった自社の商品と絡めた支援活動を写真付きで紹介。
- また、「グループ内の医療サービスチームでは、病院に医療機器を提供」「ホームレスへのマスク等の支援」「財団による支援」「3Dプリンターを使用したフェイスシールド生産と寄付」など、多くの施策を展開していることを紹介。
今回ヨーロッパにおける企業の情報開示を調査しましたが、多くの企業が新型コロナウイルスに関しての情報開示をしている状況でした。また、その発信の形としても、コーポレートサイト上で一番目立つ形で表現する企業が複数社ありました。
このように北米、アジア、欧州と地域別での調査から、新型コロナウイルスによる人命被害の大きさによって、企業の情報開示に差異があることが見られました。しかし、企業活動がグローバルに拡大しているのであれば、北米や欧州のように多くのステークホルダーが求めている情報を発信すべきだと言えるでしょう。
では、具体的にどういった情報開示を行うか。
今回さまざまな業種における情報開示を紹介しています。お悩みの際は、本シリーズで紹介した事例を是非参考にしていただければと思います。
【関連リンク】
Covid Action Platform
外務省海外安全ホームページ「各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況」
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COVID COVID-19 RobecoSAM ウイルス グローバル企業 コロナ ヨーロッパ リスクマネジメント 情報開示 新型コロナ 欧州
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